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リターナル考察


『Returnal』最後までとりあえずですが通しでプレイしました。その上で本作は先進的なシステムや直感的でストレスレスなアクションの面白さ、そして物語においてはとても考察のしがいがある素晴らしい作品だと感じ、様々な考えが頭の中に生まれましたので自分なりの考察をここに記したいと思います。この内容が必ずしも正しいとはまったく思っておりませんので、一つの考えだと思ってご覧いただければ幸いです。また、本内容はリターナルを最後までプレイしないと知り得ないような重要な内容を含んでおりますので、そのことを了承いただいたうえでご覧いただくようお願いいたします。


1.セレーネの人となり

元宇宙飛行士で事故により現役から退いた厳格な母親、ティア。ティアの嫌いな音楽をピアノで弾いていたことからおそらくティアとの仲は険悪であったことが想像されるティアの夫ヒュペリオン。
ティアとヒュペリオンの娘であるセレーネは家族(主に母親)のしがらみから精神を病み精神疾患を抑える薬を常飲していた。
彼女は母親のような宇宙飛行士を目指し努力を続けていたが、この精神疾患が原因かは不明だが宇宙時飛行士にはなれなかったようだ。
だが、宇宙飛行士ではないだけでおそらくアストラという企業の一員であり、優秀で知的な人物であることが想像される。

2.自動車事故

ある日、セレーネは子供のヘリウスを乗せ車を運転する際、常飲している薬を飲まなかった所為で幻覚症状が起き、自動車事故を起こしてしまう。
自分はなんとか逃げ出したもののヘリウスのことを助けることができず、この出来事が最大のトラウマとなり完全に精神が崩壊してしまう。

3.異なる文明を持つ惑星

事故による後遺症、または精神疾患により、セレーネは生きてはいるものの自身の妄想の世界、知的好奇心が満たされるような、優れた美しい(なぜ美しくなくなったのかは後述)センティエント達の文明の世界に逃げ込み、閉じこもってしまう。
ただ、センティエント達の文明は崩壊している。センティエントにとってもまったくの異物である何者かが彼らに力を与え、結果彼らは分断し戦争の果てに滅亡したのだ。
深淵の底の、無数の触手の生えた異形の者達の主人がその原因だ。
そしてまた、センティエント達の文明の崩壊の謎は、自身の素晴らしい妄想が阻害されていることだからセレーネにとっても意識外のことであり、疑問点としてずっと残り続けるものである。

4.セレーネの精神に影響を与えるもの

上記のセンティエント達の文明に起きた異変、そしてセレーネの意識に起きた変化は、おそらく死んだヘリウスがセレーネの意識に影響しているからであると考えられる。
ヘリウスは生前、オクトに母親を助けるようにお願いしていた。
ヘリウスの意識が、オクトの触手をもった形を借りセレーネの妄想世界に現れたのではないだろうか。
ヘリウスとオクトはセレーネを助けようとした。
つまりセレーネが自身の妄想の世界を断ち切り現実の世界に復帰すること、その為のセレーネの精神的な成長とトラウマの打破に尽力したのではないだろうか。

5.セレーネの、そしてリターナルという物語の持つ目的

セレーネ自身も地球おそらくもとの世界、現実世界に戻ることを常に望んでいる。
ただ、彼女の妄想混じりの自己意識と現実の彼女自体にはおそらく相当な落差がある。
現実世界に戻るためには彼女が成長し自らのトラウマを超克、記憶の奥に押し込めた真の記憶を受け入れる必要がある。
したがって本編はセレーネがヘリウスやオクトの力を借り、精神的な成長によりトラウマや妄想を乗り越え真の、そして彼女にとって都合の悪い記憶を思い出し受け入れるまでの物語ではないかと思われる。

6.上記の目的の為の舞台装置としてのヘリウスとオクト

オクトは、深淵の底の触手の生えた者たちの主と同義である。セレーネの妄想の世界であるセンティエント達の世界を崩壊させ、セレーネに試練を貸し精神的な成長を促した。
これはセレーネが強さを手に入れ、意識の底に閉じ込めたトラウマの根源の記憶と対峙する下準備である。
全てにおいて精神世界における物語であり、オクトにはセレーネに実際の危害も加える意図はない。
そのためセレーネは死なずにループを繰り返し、オクトによる試練や自身のトラウマ(父親と音楽のイメージ等)から乗り越えることに挑戦し成長した。
そしてセレーネは深淵の底で、全てを思い出しその意味に気づいたのではないだろうか。
また、ヘリウスは常に母親を待つか寄り添い(無償の休憩施設)母親のサポートを徹底するような存在として現れた。
しかし、そのヘリウスを撃ち落としたのはセレーネ自身だということは、セレーネがヘリウスを助けられなかったことの罪悪感の象徴であると考えられる。

7.白い影、宇宙飛行士について

本編には計三つの視点が存在する。
セレーネの肩越しからの第三者視点。
セレーネ自身から見た一人称視点。
ヘリウスから見た一人称視点。
第三者視点から宇宙飛行士の姿が見えることはない。これはゲームを遊ぶプレイヤーの視点であり、この視点で宇宙飛行士が見えることはない(見えてる描写があったらすみません)
宇宙飛行士は、セレーネにとっては精神疾患により見える幻覚であり、ヘリウスにとっては年少時代に見えたり感じられるような架空の存在でありプレイヤーから見える存在ではないのではないだろうか。

8.宇宙飛行士はセレーネ

本編の描写から、宇宙飛行士はセレーネ自身あるいはその象徴であるようだ。
しかしセレーネは宇宙飛行士が母親だと錯覚していた。
このことは彼女が母親の存在をそれだけ心の中で大きく偉大に、そして強く恐怖感も持って捉えていたからそう感じていたことである。
そして、自身が成長し最後には母親の存在をとるに足らない、たいしたことのない壊れてしまった人物であると悟り、乗り越えたことにより宇宙飛行士と母親の存在は切り離された。
母親の所為にしていただけで、事故を起こした原因や、自分を苦しめている幻覚の原因は自分にあることを認めて受け入れたということではないだろうか。

9.ヘリウスにとっての宇宙飛行士

また、ヘリウスにとっても宇宙飛行士はまさに母親であるセレーネである。
セレーネは一度は堕胎まで考えたヘリウスを芯から愛することができず、ヘリウスもそれを感じていたのではないだろうか。
ヘリウスはオクトを精神の支えとし、芯から愛されていないとはいえ母親のことを愛する優しい子供だった。
ヘリウスが言う「怪物」とはおそらく精神疾患により感情の波が激しいセレーネの激しい感情のあらわになる部分か、奥の部屋に同居しているであろう壊れてしまったティアなのではないだろうか。

10.この先箇条書きで疑問点。

ティアが現役の宇宙飛行士だったのは、本編の描写から宇宙開発における早い時期の段階だったのではないかと考えられる。(月面着陸等の描写から)したがって、セレーネが仮に本物の宇宙飛行士だったとしても、宇宙船で他の惑星に行けるほどは航空技術が進歩していないのではないだろうか。なので、本編での宇宙探検はあくまでセレーネのイメージによるものである可能性が高いと思われる。

本編においては、センティエント達の文明の侵略者である触手の描写と、文明の衰退の表現としての植物の特に根の描写が強く、そしてリンク(どちらもうねうねしてる)して感じられる。
触手がオクトだとして、このしつこいほどの植物の根の表現はなんだろうか。最後のムービーでティアの姿は枯れた樹人のような姿で現れる。これはセンティエント達とも触手の者達とも違う気がする。
このティアの枯れた樹人のイメージが、センティエント達の文明が植物により侵食されて枯れ荒れ果てていることにつながっている気がする。

ティアはおそらくクトゥルフ神話やギリシャ神話が好きで、そういった書物もたくさん持ち、セリーネもその影響を強く受けていたのではないだろうか。
本編に登場するモンスターは、そういった神話から連想されるような生物から連想されている。
また、ボスキャラクターは神話のイメージか、あるいはセリーネの個人的なトラウマの象徴ではないかと推測される(父親と音楽等)。

ギリシア神話によると女神ティアと太陽神ヒュペリオンの娘が月の女神セレーネであり、ヘリオスは太陽神である。
ヒュペリオンとヘリオスは別名に過ぎなかったという説もあるらしく本編になぞえた考察が必要な部分に感じられる。
セレーネにとってかけた太陽を集めることは、父または自分の子供との和解や寄り添いの意味合いなのだろうか。

フリーキ(ギリシャ語で恐怖)
イクシオン(ギリシャ神話の王子、小惑星)
ネメシス(ギリシャ神話の神の怒り天罰の擬人化、仮説の惑星)
ヒュペリオン(ギリシャ神話の神、衛星)
オフィオン(ギリシャ神話の原初の神の一柱)

一応ギリシャ語あるいは神話においてのつながりはありそうだがフリーキとオフィオンはつながりがやや薄そうな気もする。


あとがき


とても長い文書になってしまいましたが、ご覧いただき誠にありがとうございます。考察、考証、添削が足りていない文章なのは承知ですが、せっかくの機会だし、また他の方々もまだそんなに考証をまとめているわけではなさそうだなと思いこういった拙い文章をしたためた所です。

ツイッター等でご意見いただければまた、時間を見つけて改稿したいとも思いますのでどうぞお気軽にご意見いただければ幸いです。

最後に素晴らしいゲームを作ってくださった関係者の方々にもお礼申し上げたいと思います。あと、できればDLCとか、出れば買いますのでよろしければお待ちしています。よろしくお願いいたします。

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