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吉田健彦『メディオーム ポストヒューマンのメディア論』共和国(3)

プログラミングに追われて、気がつけば『メディオーム』が発売されてから4日が経ってしまいました。幾つかの書店では目に留まるかたちで置いてくださっていて、ありがたく思います。たまたま誰かの目に留まって、興味をもって購入してくれるひとが居るとしたら、それは途轍もないことだと改めて思います。ああでも、そんな途轍もない奇跡としてではなく、ありふれすぎた感じでどんどん売れてほしい!

それから、これも本当にありがたいことに、月曜社さんの主催なさっているブックツリーに声をかけていただけました。ブックツリーとは(下記のリンク先をご覧いただければ明快ですが)ある選者がテーマを決め、そのテーマに沿って本を5冊紹介するというものです。月曜社さんは「哲学読書室」という名前で、既に87名の選者により91件の記事(すなわち455冊の本の紹介)が投稿されています。

月曜社さんのブログ「ウラゲツ☆ブログ」では一覧を見られるので便利。

恐らく年内にはぼくの記事も出ると思いますので、ぜひご覧ください。「断絶と孤絶の時代に抗して他者について考える」というタイトルで書いています。ほんとうはジュディス・バトラー『自分自身を説明すること 倫理的暴力の批判』(月曜社、佐藤嘉幸、清水知子訳)、保苅実『ラディカル・オーラル・ヒストリー オーストラリア先住民アボリジニの歴史実践』(御茶の水書房、岩波書店)、スーザン・ソンタグ『他者の苦痛へのまなざし』(みすず書房、北条文緒訳)も紹介したかったのですが、既に哲学読書室で紹介済みのものは避けようという自分ルールと、あとは絶版本、品切れ本は紹介できないということで、残念ながら外しました。でも普段あまりぼく自身が触れない本を紹介できたので良かったです。

『自分自身を説明すること』は今回の『メディオーム』のいちばんの出発点にあるもので、そもそも博士課程で初めて哲学をきちんとやるようになって、といっても右も左も分からないときにゼミの先輩が「吉田くんの興味関心からするとバトラーを読んでみたら?」と言ってくれて、確かにバトラー、読んでみたらすごい衝撃を受けて、そこから自分の思想にかたちができていったということがあります。これは「暴力論叢書」という素晴らしいシリーズのうちの一冊です。『自分自身を説明すること』については〝books, life, diversity〟で幾度も触れていますが、改めて月曜社さんの紹介回を。

『ラディカル・オーラル・ヒストリー』と『他者への苦痛のまなざし』は以下で紹介しています。

いかん、『メディオーム』の広告をしなければならないところが、他の本の紹介ばかりになってしまいました。けれども、本って、前々回でも書きましたが、生態系なんです。何か一冊だけが存在するわけではなくて、ネットワークのなかでしか生きられないし、そもそも生まれてこない。だから他の本の紹介は大事だし、そもそもそれは「他の本」などではない。そう思います。

と、眠れないままに書いているうちに、昨晩開催されていた、共和国と平井の本棚主催によるイベント「みんなで世界文学全集を妄想する」のあとに、登壇者のおひとりである山本貴光氏がツイート(で良いのでしょうか、Twitterはぜんぜん分からない……)してくださいました。ありがとうございます! ありがとうございます!

イベントについては下記。こういう試みって、上記の月曜社さんのブックツリー「哲学読書室」と同じで、本という生態系を豊かに残すためにはとても大切なものだと思います。

ぼくはこれ、ここしばらくプログラミングが終わらなくて最初から視聴を諦めていたのですが、何とあとからyoutubeでも購入できるとのこと(下記をご参照ください)。とても助かります。鴻巣友季子氏がこれからの文学のテーマとしてポストヒューマニズムを挙げていらしたとのことで、それも含めて聴くのが楽しみです。

平井の本棚さんは、その名の通り平井の駅すぐ近くにある本屋さんです。

昨年から今年にかけてでしょうか、友人が平井に住んでいて、ぼくもずいぶん通いました。残念ながら仕事の都合で平井の本棚さんが開店している時間帯には行けなかったのですが、閉まっているお店の前でパートナーと二人で「開いていないねえ」と指を咥えてぼーっとしていたのも良い思い出です。いやまた行けばよいのですが。

平井はすごいパワフルな活気に満ちた場所で、行くたびにぼくはびっくりしていました。当時はまだ出版のことも具体化していなかったときで、企画を受け取ってくださっていた共和国さんがあの平井の本棚さんでこういうイベントをするとは想像もしていませんでした。そしてぼくの直前に共和国から出版されたのが詩人、小林坩堝氏による『小松川叙景』。本屋ロカンタンさんで注文済みなのですがまだ受け取りに行けなくて、でも非常に楽しみにしている一冊です。小松川叙景、すごく良いタイトルですね。友人の家に行ったとき、早く着きすぎて、パートナーと二人で荒川土手で(平井の駅で買った)おにぎりを食べながら、ごうごう吹く風を受けてぼーっとしていたのを思い出します。

そんなこんなで、何だか不思議なネットワークのなかで生まれた『メディオーム』、ここまでぜんぜん広告していませんでしたが、まさにこの不思議なネットワークについて、メディアの生態系について、そしてそれがデジタル化したときに何が起きるのかについて――だからこそポストヒューマン論につながるのですが――考えている本です。目に留まりましたら、ぜひぜひ。寒くてついに指が動かなくなってきたので、それではさようなら。








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