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Books, Life, Diversity #35

今回は出版社も併せて紹介します。プログラミングやデザインに関心のある方なら、きっと本棚にBNNの本があると思います。内容はもちろん、装丁も非常に洗練されていて、お気に入りの出版社のひとつです。以下はBNNのオンラインショップです。希少本や企画などのお知らせもあります。5/23まで送料無料キャンペーン中とのことなので、ぜひこの機会に。

noteもあります。

あと、いま気づいたのですが、以前に紹介したフィルムアート社とBNNは関連会社とのこと。この辺の関係は良く分かりませんが、とにかく私にとってはどちらも重要な出版社です。講義資料を作成するためであったり、研究資料としてであったり、あるいは単に趣味としてであったりで、いつの間にか何冊も手元にあるようになりました。

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今回は特にアート/バイオアート関連で面白い本を紹介します。

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『SPECULATIONS 人間中心主義のデザインをこえて』川崎和也監修・編著、BNN、2019年

時間の許す限りはなるべく美術展に足を運ぶ方ですが、海外となると難しいですし、どのみち食べるための仕事でいっぱいいっぱいなので、なかなかそうもいきません。そんなとき、こういう本があると非常に助かります。コンセプトは明快で、環境問題が深刻化し情報化が深化拡大していく時代においてデザインはどうあるべきかを問うというものです。私たちをとりまく環境(それは自然環境だけではありません)が多次元化し、複層化するなかで、もはやデザインは人間中心ではあり得ない。編者の川崎氏により、本書の冒頭でこういった問題意識が歴史を追いつつ簡潔に説明されています。

私自身はいま生命と技術の関係に関心があるので、本書後半でバイオアートを扱っている「Inhuman インヒューマン ポスト・アントロポセンにおける非人間たち」の章が特に面白かったです。とはいえその他の章も興味深い作品ばかりですし、図版も非常に多いので、さまざまな分野の方にお勧めできます。

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ウィリアム・マイヤーズ『バイオアート バイオテクノロジーは未来を救うのか』久保田晃弘監修、岩井木綿子、上原昌子訳、BNN、2016年

『SPECULATIONS』よりは若干古いのですが、バイオアートに関して知りたいときにはもっとも良い本のうちの一冊で、多数のバイオアート作品が紹介されています。幾つかの作品は『SPECULATIONS』と被っていますが、バイオアートに特化している分情報量は圧倒的で、両方買っても問題ありません。

念のために申し上げれば、私自身はバイオアートについては批判的な立ち位置を取ることが多いです。単純化してしまうと誤解を受けそうですが、人間が生命に手を出すことへの畏怖を、私は重視しているためです。ですので、ここで取り上げられている作品や解説の幾つかには、それはヤバいんじゃない? という気持ちになります。けれども、何故ヤバいと思うのかを考えるためにも、まずは知らなければなりませんし、1/10でも1/100でも、確かにここには新しいアートが、私たちの生を表現する新しい様式への冒険があります。

バイオアートについて考えるときにお勧めの本は他にも幾冊かあるので、それはまた別途ご紹介していこうと思います。

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ビアトリス・コロミーナ、マーク・ウィグリー『我々は 人間 なのか? デザインと人間をめぐる考古学的覚書き』牧尾晴喜訳、BNN、2017年

『SPECULATIONS』にしても『バイオアート』にしても、その根本にあるのは人間はもはやこれまでの人間ではいられないという事実であり、直観です。テクノロジーによって環境が改変され続けてきたその臨界点――カーツワイル的シンギュラリティといった戯言のことではなく歴史的必然としての――を私たちは生きています。でも、じゃあそもそも人間って何なんだろう、ということで、本書はその問いをストレートに掲げている、『SPECULATIONS』でも重要な参照点になっている本です。

とはいえまったく堅苦しい研究書ではなく、BNNらしい、図版も多くデザインも美しい読んでいて楽しい本です。解説の伊村靖子氏によれば、著者のコロミーナとウィグリーは2016年に開催されたイスタンブール・デザイン・ビエンナーレのキュレーターを務め、本書もそれに呼応して生み出されたものだとのこと。「よいデザインは麻酔である」、「人間中心主義デザイン」、「2秒間のデザイン」など、各章タイトルも魅力的ですし、各章につけられたキーワード、「化石技術」、「マイクロバイオーム」、「プロト・ヒューマン」、「堆積物」なども興味を惹きます。

そんなこんなで、良い本を数多く出版しているBNN、非常にお勧めです。ぜひ上記オンラインショップを覗いてみてください。私もこの投稿を書きながらすでに三冊注文してしまいました。

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以下、里山社様によるオンラインで本を購入できる書店のリストです。


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