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Books, Life, Diversity #27

きょうはブックストア・エイド基金の最終日。

この一連の投稿もとりあえずは最終回です。けれども素晴らしい本、素晴らしい出版社、そしてお勧めの書店はまだまだたくさんあるので、今後はゆっくりしたペースで更新していければと思います。

そんなこんなで、最後に(この言葉自体は響きが好きではないのですが)自粛期間中に、書店・出版社支援として自分にできることをしようと思い、手探りをしているなかで改めて認識したことを幾つか。当然のことばかりで恥ずかしいのですが……。

1.特に人文系の小規模出版社については、そこから出版されている一冊の本が気に入った場合、他の本も気に入る可能性が高い。だから出版目録を隅から隅までじろじろ眺めよう(Amazonのリコメンドよりもよほど良い)。
2.Amazonではなく書店や出版社に注文をすると、書店主さんや出版社の担当者さんからの一言コメントが一緒に届くことがあり、非常に嬉しいし、面白い情報が得られるときもある。
3.読書というものは、著者と読者との対話だけではなく、それをつなぐすべて(ほんとうにすべての!)の人びとを含んだ途轍もない重層な対話である。そしてその多様さがあってこそ豊かな出版文化が成立している。
4.本はデータでもないし、情報でもない。それは「本」としか呼びようのない徹底して固有の、僕らの生に直接つながった何かだ。

多様性って、それぞれの固有のものが複雑に関連し合って初めて可能になるものですよね。データだけで見ればAmazonのkindleでいろいろな本を買って、というなかにも確かに多様性はあるし、もちろんそれは悪でも何でもありません。だけれど、あくまで私個人の趣味としては、あるいはどういう生き方が自分にとっては美しいのかなあなどと考えたときには、やはりそれ(Amazonでkindle的なもの)じゃないな、と感じるのです。

本はデータではなくて、それにかかわったすべての人、モノ、時間の総体だし、その総体に自分の人生すべてでもって向き合うのが読書だと思うのです。おお、何か、このマガジンのタイトル("books, life, diversity")につながったかも。

とはいえ、この数ヵ月、実際に書店に行って本を手に取ってということはなかなかできませんでしたし、まだまだ本の探索は終わりません。終わるはずもありません。たぶん私が死んでも終わりません。だから、最初に書いた通り、これからも時折、素晴らしい本の紹介をしていこうと思います。どうか素晴らしい出版社と書店がたくさん残りますように。

以下、今回紹介した本の一覧です。どれもとても良い本、美しい本ばかりですので、改めてお勧めいたします。

+ + +

アーツ前橋編『表現の生態系 世界との関係をつくりかえる』左右社
東浩紀『新対話篇』ゲンロン
畑中章宏『死者の民主主義』トランスビュー
谷口亜沙子『ルネ・ドーマル―根源的な体験』水声社
早尾貴紀『パレスチナ/イスラエル論』有志舎
下道基行、安野太郎、石倉敏明、能作文徳、服部浩之『Cosmo-Eggs 宇宙の卵―コレクティブ以降のアート』torch press
京都工芸繊維大学美術工芸資料館監修、中川可奈子編著『チェコ ボーランド ハンガリーのポスター』青幻舎
石田英敬、吉見俊哉、マイク・フェザーストーン編『メディア哲学』デジタル・スタディーズ第1巻、東京大学出版会
大山エンリコイサム『Against Literacy On Graffiti Culture』LIXIL出版
富井雄太郎編『アーキテクチャとクラウド 情報による空間の変容』millegraph
蔡志偉、黃千育『昆蟲與植物的愛戀變奏曲 A Romance Between Plants and Insects』國立臺灣博物館
岸政彦『断片的なものの社会学』朝日出版社
町田純『ヤンの短編集より 善良なネコ』未知谷
稲川方人『形式は反動の階級に属している』書肆子午線
稲川方人『稲川方人全詩集』思潮社
秦隆司『ベストセラーはもういらない ニューヨーク生まれ 返本ゼロの出版社』ボイジャー
保苅実『ラディカル・オーラル・ヒストリー―オーストラリア先住民アボリジニの歴史実践』御茶の水書房/岩波現代文庫
HAPAX編『HAPAX 12 香港、ファシズム』夜光社
ジェイミー・バートレット『ラディカルズ―世界を塗り替える〈過激な人たち〉』中村雅子訳、双葉社
ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』阿部賢一訳、人文書院
グレゴワール・シャマユー『ドローンの哲学 遠隔テクノロジーと〈無人化〉する戦争』渡名喜庸哲訳、明石書店
ジェームズ・ブラッドワース『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した 潜入・最低賃金労働の現場』濱野大道訳、光文社
カレル・チャペック『いろいろな人たち』飯島周編・訳、平凡社ライブラリー
ジャック・ランシエール『民主主義への憎悪』松葉祥一訳、インスクリプト
ピーター・W・シンガー『ロボット兵士の戦争』小林由香利訳、NHK出版
ホルヘ・ルイス・ボルヘス『アトラス―迷宮のボルヘス』現代思潮新社
ヴァレリー、ブルトン、エリュアール『思考の表裏』堀口大學訳、閏月社
ルディ・ラッカー『思考の道具箱』金子務監訳、大槻有紀子、竹沢攻一、松村俊彦訳、工作舎
Sir Isaac Newton "Opticks" Kronecker Wallis
テッド・ピータース、ロバート・J・ラッセル、ミヒャエル・ヴェルカー編『死者の復活 神学的・科学的論考集』小河陽訳、日本キリスト教団出版局
ケビン・ベイルズ『環境破壊と現代奴隷制 血塗られた大地に隠された真実』大和田英子訳、凱風社
マルク・クレポン『文明の衝突という欺瞞 暴力の連鎖を断ち切る永久平和論への回路』白石嘉治訳、新評論
プラトーノフ『土台穴』亀山郁夫訳、国書刊行会
ロブ・デサール、スーザン・L・パーキンズ『マイクロバイオームの世界 あなたの中と表面と周りにいる何兆もの微生物たち』斉藤隆央訳、紀伊國屋書店
ギュンター・アンダース『われらはみな、アイヒマンの息子』岩淵達治訳、晶文社
サミュエル・ベケット『しあわせな日々/芝居』安堂信也、高橋康也訳、白水社
ヘンリー・ミラー『モロク』山形浩生訳、大栄出版
ノーム・チョムスキー『9.11 アメリカに報復する資格はない!』山崎淳訳、文芸春秋
奥野克己、近藤祉秋編『たぐい』vol.2、亜紀書房
エドゥアルド・コーン『森は考える―人間的なるものを超えた人類学』奥野克巳、近藤宏監訳、近藤祉秋、二文字屋脩訳、亜紀書房
ジャン=リュック・ナンシー『フクシマの後で―破局・技術・民主主義』渡名喜庸哲訳、以文社
デヴィッド・グレーバー『民主主義の非西洋起源について 「あいだ」の空間の民主主義』片岡大右訳、以文社
荒金直人『写真の存在論 ロラン・バルト『明るい部屋』の思想』慶應義塾大学出版会
石川学『理性という狂気 G・バタイユから現代世界の倫理へ』慶應義塾大学教養研究センター選書
ヴェルナー・ハーマッハー『他自律 多文化主義批判のために』増田靖彦訳、月曜社
ヘント・デ・ヴリース『暴力と証し―キルケゴール的省察』河合考昭訳、月曜社
山本圭『アンタゴニズムス―ポピュリズム〈以後〉の民主主義』共和国
ヨゼフ・チャペック『独裁者のブーツ イラストは抵抗する』増田幸弘、増田集編・訳、共和国
久保明教『機械カニバリズム 人間なきあとの人類学へ』講談社選書メチエ
郡司ペギオ幸夫『天然知能』講談社選書メチエ
『ギルガメシュ叙事詩 付・イシュタルの冥界下り』矢島文夫訳、ちくま学芸文庫
クリストファー・R・ブラウニング『増補 普通の人びと―ホロコーストと第101警察予備大隊』谷喬夫訳、ちくま学芸文庫
アルカジイ・ストルガツキー、ボリス・ストルガツキー『ストーカー』深見弾訳、ハヤカワ文庫
ジョージ・ダイソン『チューリングの大聖堂―コンピュータの創造とデジタル世界の到来』吉田三知世訳、早川書房
ギルバート・K・チェスタトン『木曜の男』吉田健一訳、創元推理文庫
フィリップ・K・ディック『暗闇のスキャナー』山形浩生訳、創元SF文庫
アルフォンソ・リンギス『汝の敵を愛せ』中村裕子訳、洛北出版
アルフォンソ・リンギス『何も共有していない者たちの共同体』野谷啓二訳、洛北出版
岡本想太郎、佐藤芙有、薮崎今日子、臼田桃子編『ジョゼフ・コーネル コラージュ&モンタージュ』フィルムアート社
ピーター・メンデルサンド著・デザイン『本を読むときに何が起きているのか ことばとビジュアルの間、目と頭の間』細谷由依子訳、フィルムアート社
ロージ・ブライドッティ『ポストヒューマン―新しい人文学に向けて』門林岳史監訳、大貫菜穂他訳、フィルムアート社
ウィリアム・バロウズ『裸のランチ』鮎川信夫訳、河出書房新社
エドワード・スノーデン『スノーデン独白 消せない記録』山形浩生訳、河出書房新社
トム・ヒレンブラント『ドローンランド』赤坂桃子訳、河出書房新社
フレデリック・ベグベデ『世界不死計画』中村佳子訳、河出書房新社
ルネ・ドーマル『類推の山』巖谷國士訳、河出文庫
アンドレイ・プラトーノフ『プラトーノフ作品集』原卓也訳、岩波文庫
ジャン=リュック・ナンシー『思考の取引 書物と書店と』西宮かおり訳、岩波書店
セネカ『怒りについて―他一篇』茂手木元蔵訳、岩波文庫
ノサック『短編集 死神とのインタビュー』神品芳夫訳、岩波文庫
ブルトン『シュルレアリスム宣言 溶ける魚』巖谷國士訳、岩波文庫
アトゥール・ガワンデ『死すべき定め 死にゆく人に何ができるか』原井宏明訳、みすず書房
スーザン・ソンタグ『他者への苦痛のまなざし』北條文緒訳、みすず書房
パスカル・コサール『これからの微生物学 マイクロバイオータからCRISPRへ』矢倉英隆訳、みすず書房
マーティン・J・ブレイザー『失われてゆく、我々の内なる細菌』山本太郎訳、みすず書房
マックス・ピカート『沈黙の世界』佐野利勝訳、みすず書房
ロラン・バルト『明るい部屋 写真についての覚書』花輪光訳
大山エンリコイサム『ストリートアートの素顔 ニューヨーク・ライティング文化』青土社
郡司ペギオ幸夫『生命、微動だにせず』青土社
『現代思想』vol.48-1、青土社
柴田邦臣『〈情弱〉の社会学 ポスト・ビッグデータ時代の生の技法』青土社
クリストフ・ボヌイユ、ジャン=バティスト・フレソズ『人新世とは何か 〈地球と人類の時代〉の思想史』野坂しおり訳、青土社
ジェイソン・スタンリー『ファシズムはどこからやってくるのか』棚橋志行訳、青土社
ジグムント・バウマン、デイヴィッド・ライアン『私たちが、すすんで監視し、監視される、この世界について―リキッド・サーベイランスをめぐる7章』伊藤茂訳、青土社
ジュディス・バトラー『アセンブリ 行為遂行性・複数性・政治』佐藤嘉幸、清水知子訳、青土社
ジュディス・バトラー、エルネスト・ラクラウ、スラヴォイ・ジジェク『偶発性 ヘゲモニー 普遍性』竹村和子、村山敏勝訳、青土社
『安部公房全集029 1990.01-1993.01』新潮社
宮沢賢治『ポラーノの広場』新潮文庫
アラン・シリトー『土曜の夜と日曜の朝』永川玲二訳、新潮文庫
ウィリアム・ウォートン『クリスマスを贈ります』新潮文庫
ウィリアム・ゴールディング『蠅の王』新潮文庫
ウィリアム・サローヤン『パパ・ユーア クレイジー』伊丹十三訳、新潮文庫
サン・テグジュペリ『人間の土地』堀口大學訳、新潮文庫
ジェイ・マキナニー『ブライト・ライツ、ビッグ・シティ』高橋源一郎訳、新潮文庫
ジョン・アーヴィング『ピギー・スニードを救う話』新潮社
トルストイ『光あるうち光の中を歩め』原久一郎訳、新潮文庫

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