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【持ってる鹿島】明治安田生命J1 第14節 鹿島アントラーズ-横浜F・マリノス レビュー

戦前

鹿島アントラーズ

・現在7位

・前節は名古屋グランパスに2-0で勝利、3試合連続完封で連勝中

・前節から中2日で迎える

横浜F・マリノス

・現在3位

・前節はヴィッセル神戸に2-0で勝利、4連勝中でリーグ戦11試合負けなし

・前節から中5日で迎える

スタメン

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鹿島は前節から6人変更

・FC東京戦と同じメンバーに

横浜FMは前節と同じスタメン、サブメンバー

鹿島の狙い

・攻撃は荒木遼太郎を起点とした中央でのパスワークからの押し込み
・なので、なるべく荒木が活かせる状況を作りたい
・組み立ては横浜FMが前から来るのもあって、無理せずサイドの裏に蹴っ飛ばす
・相手が自陣でボールを持ったらプレススタート
オールコートマンツーマンみたいな感じで人に強く付いていく
・高い位置でボールを奪えれば荒木が登場
・その点後ろは数的同数を強いられるのでリスクも

マリノスの狙い

・サイドが強力なので、パスを繋ぎながらそこを活かして素早く仕留めたい
・組み立ては個々のパススピードが速い&正確なので、数的同数でも繋げる自信がある
・エウベルと前田大然がサイドバックをピン留めしつつ、ボランチがサイドに流れてサイドで数的優位を作ろうとする
・ハーフスペースにはマルコス・ジュニオールとオナイウ阿道が顔を出して、パスを引き出す
・起点が作れれば、サイドの裏を突いてエウベルと前田の個の力を最大限活かす
ボールは常に持っていたいので、相手がボールを持つと積極的にプレッシングを仕掛ける
・サイドの裏はチアゴ・マルチンスと畠中槙之輔が広い守備範囲でカバー
荒木は自由にさせるとヤバいので、ファウル覚悟でもいいから強くいって潰す

リスクが響き、構造的に崩される

上記に挙げたお互いの狙いを踏まえて、試合はアップテンポな展開で進んでいく。お互いに縦に速い攻撃を志向しつつ、相手にはそれを許さないためにボールを奪いに襲い掛かる。一進一退の攻防はどちらが先にミスをするか、どちらが先に相手を上回るか、の我慢比べの様相にもなってきていた。

そんな中で先にスコアを動かしたのは横浜FMだった。25分、松村優太からティーラトンがボールを奪うと、それをオナイウが拾ってカウンター発動。オナイウからボールをもらった前田が逆サイドに展開すると、右サイドで開いていたエウベルがボールを運び、マルコス・ジュニオールとのワンツーでゴール前に侵入してクロス。最後は中央に入り込んでいたオナイウが合わせて、先制した。

鹿島にとってすれば、松村が苦手な相手を背負ってのプレーだったとはいえチームとして意図せぬ形でボールを失ってしまったこと、ボールサイドに人数を集めているためサイドチェンジはさせたくなかったが、オナイウにも前田にもプレーを制限させることが出来ず、結果としてサイドチェンジを許してしまったことが痛かった。今の鹿島の守備構造を考えれば、右サイドのエウベルにボールが渡った時点でチームの守備としてはマズい状態になっている。もちろん、こうした失点シーンのようなリスクは考慮した上で試合には臨んでいたはずだが、今節はリターンよりも先にリスクの方が響いてしまう形となった。

恵まれた逆転劇

先制したことで押せ押せの勢いを掴みかける横浜FM。鹿島はここで連続失点を喫するようだと厳しかったが、28分に松村が自陣からドリブルで相手陣内にドリブルで運んで(そのまま相手のスローインになったものの)陣地を回復したプレーが大きく、ここから落ち着きを取り戻していく。

すると、今度は横浜FMが一旦リードを保つために落ち着こうとしたのか、プレッシングの強度が控えめになっていく。これによって鹿島のボール保持のターンになっていく。このあたりから荒木のボールタッチの回数が増え、鹿島はリズムを作り出していく。中々相手ゴール前までは至らないが、サイドの奥深くまではボールを運べるようになっていった。

すると、40分。左サイドからのコーナーキック。荒木の蹴ったボールを高丘陽平がキャッチしようとしてファンブルすると、そのこぼれ球を白崎凌兵が折り返し、最後はこぼれ球を土居聖真が豪快なシュートで決めきって、鹿島は同点に追いつく。最後の一手を前線の火力が不足気味な中でどう崩していくか、というテーマにぶち当たる前にセットプレーからのラッキーともいえるゴールで帳消しにする、という前節と同じような形で鹿島は解決してしまった。

さらに、後半開始早々である。鹿島は最終ラインの裏に送られたボールをクリアすると、そのボールを競ったこぼれ球を白崎が引っ掛けて拾いスルーパス。広大なスペースに抜け出した土居が落ち着いて1対1を沈めて、鹿島は逆転に成功した。

このシーン、横浜FMがハイラインを敷いているため最終ラインの裏には大きなスペースが生まれているのは前提としてあるが、白崎からボールを奪おうとした松原健が奪いきれずに結果白崎にフリーで前を向かせる状態を作らせてしまったこと、最終ラインで余っていたティーラトンがそのまま止まってオフサイドを取りにいく判断をせずに土居と並走する判断をしたことが(そのまま並走しても土居に追いつけるかはかなり怪しかったが)、ゴールの要因としては大きい。アンジェ・ポステコグルー監督が試合後コメントで触れているミスの部分はこうしたところを指しているはずだ。

--立て続けに3失点した後半最初の10分がターニングポイントだったと思います。その時間帯をどのように捉えていますでしょうか?
ミスが起これば、やはり自分たちを苦しめます。ミスが起きてしまい、失点につながってしまいました。コントロールもできず、残念でした。
https://www.jleague.jp/match/j1/2021/051503/live#coach

畳みかける鹿島

リードを奪った鹿島はこの機を逃すまいと攻勢を強めていく。前半は相手のウイングを警戒して彼らのマークを外さなかったサイドバックがマークを捨てて、プレッシングに連動して前に出てインターセプトを狙うようになったように、鹿島は相手に押し込まれるのを防ぎ、逆にさらに畳みかけてリードを広げにいく戦い方を選んでいた。

今節の鹿島はこの勢いのある時間を無駄にしなかったのが大きかった。51分、エウベルのパスを三竿健斗がカットして白崎に繋ぐと、横浜FMの切り替えが遅くなったのを見逃さずにカウンターが発動する。ハーフスペースでボランチの裏を取った土居にボールが渡ると、土居は裏にスルーパス。これに右サイドから斜めに走り込んできた松村が反応して裏を取って抜け出すと、最後は並走したティーラトンが後ろからエリア内で倒してしまい、PK献上。このPKを土居が沈めて3点目。土居はプロ入り初のハットトリック達成となった。

このシーンも前述したような横浜FMの切り替えの遅さに加え、ティーラトンの2つの判断ミスが響いている。1つは松村に並走する判断をしたことでオフサイドを取り損ねたこと、もう1つは松村が利き足とは逆の左サイド深くに運んだことである程度シュートコースは限定されていたのに、無理してタックルにいき結果ファウルとなってしまったこと。ティーラトンは攻撃では高い左足のキック精度を武器に、横浜FMの攻撃的なスタイルには欠かせない存在だが、今節は守備のマズさが目立ってしまう格好となった。

鹿島の4点目もティーラトンのパスがカットされたことから始まっている。そのボールをレオ・シルバが拾うと相手のプレッシャーを剥がして前を向いたことで、一気に鹿島の攻撃はテンポアップ。ハーフスペースに顔を出していた荒木がボールを受けると、右サイドに駆けあがった松村に展開。最後は松村の折り返しをレオ・シルバが触ったこぼれ球を荒木がミドルシュート。これがチアゴ・マルチンスに当たってネットを揺らし、鹿島は後半最初の8分で3得点を奪い、試合の流れをほぼ決定づけてしまった。

荒木のゴールは関わった3人が自身の持ち味を活かしたスーパーなプレーを見せてくれた。まずは相手のプレッシャーに屈せずに独力で前を向けてしまうレオ・シルバ、次に前田のタックルにも負けずに自慢のスピードでサイドの深くまで駆け上がった松村、そして常にハーフスペースの嫌らしいところに顔を出し、こぼれ球には必ず反応している荒木。流れを掴んだ時間帯で鹿島は選手が個々の特長を最大限に発揮できたことが、横浜FMをこの時間帯で圧倒することに繋がった。

反撃するマリノス、落ち着かない試合

3点を追う展開となった横浜FM。しかし、この展開になってもポステコグルー監督は攻め続けて、追いつく気満々だったようだ。58分には一気に4枚代えを敢行。布陣も4-4-2に変更した。

58分~

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布陣を変えたことで横浜FMはよりシンプルに前線の個を活かす形にシフトしていく。豊富な運動量で最終ラインにも前線にも顔を出せる渡辺皓太と精度の高い左足でボールを展開できる天野純のボランチコンビが起点となり、前線は4枚のアタッカーが攻め残るような形で鹿島を押し込みにかかる。時間の経過と共に徐々にプレッシングの強度を弱め、ブロックを敷いたところから引っ掛けてカウンター狙いにシフトした鹿島の変化も相まって、横浜FMは前半の立ち上がりからのように再びボール保持の色を強めていった。

すると、74分。右サイドからのコーナーキックのこぼれ球を横浜FMが拾うと、渡辺のクロスをオナイウがボレーで豪快に合わせてネットを揺らし、横浜FMは追い上げを開始する。鹿島としては、オナイウのマークに付いていた常本佳吾が一度コーナーキックをはね返した時に、完全にオナイウのマークを外してしまったのが残念だった。

ただ、それでもその3分後である。鹿島は自陣でボールを回収すると途中出場のファン・アラーノが最終ラインの裏へとロングボールを供給。これを高丘が対応するも処理を誤り、ボールは同じく途中出場の上田の元へ。上田は無人のゴールへと流し込み、鹿島は勝負を決定づけるには十分の5点目を手にした。

試合はこれで決まったも同然だったが、これで終わらなかった。86分、鹿島は常本がティーラトンへのタックルでこの日2枚目のイエローカードをもらい、退場。10人での戦いを強いられることになる。常本としてみれば、この前のプレーで畠中槙之輔が頭部の接触でピッチ外に出ており一時的に横浜FMが10人となっていたため、高い位置で奪えればチャンスと思って積極的なプレーを選択したのだろうが、1枚イエローをもらっている選手が選んでいいプレーとはお世辞にも言えなかったために、やや軽率だった。

最後まで反撃を続ける横浜FMは90分、再び右サイドからのコーナーキックでゴールを奪う。レオ・セアラが競り勝ったところから波状攻撃でシュートを打っていくと、最後は天野が頭で押し込んでゲット。試合を再び2点差とした。

だが、試合はこれでタイムアップ。5-3で勝利した鹿島はリーグ戦4連勝を飾り、リーグ戦でのホーム横浜FM戦の連勝を9に伸ばした。

まとめ

終わってみれば派手な試合となったし、鹿島としては5得点を奪っての快勝と言えるだろう。自分たちのペースとなった時間帯で畳みかけて得点を重ねられたことが、今節の勝利には大きかった。

だが、そのきっかけがラッキーというか、どちらに流れが転がり込んでくるか分からない状況でことごとく鹿島の方に転がってきたことは否定できず、結果としてそれがスコアにも大きく反映されている。名古屋戦もそうだったが、ここ最近はそうしたところでプラスに働いてくれているが、長いシーズンを考えてみれば必ずしもプラスに働いてくれるとは限らない。そうなった時がチームの底力を試されることになるだろう。

とはいえ、こうした流れをプラスに活かさなければ上位進出もチームが強くなることもない。今はこの流れを出来る限り続けていくことが大切である。

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