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【ノリと筋肉】明治安田生命J1 第20節 鹿島アントラーズ-北海道コンサドーレ札幌 レビュー

戦前

鹿島アントラーズ

・現在7位

・前節は大分トリニータとスコアレスドロー

・前節から中3日で迎える

北海道コンサドーレ札幌

・現在11位

・前節は大分トリニータに2-0で勝利、リーグ戦2連勝中

・ミッドウィークに試合がなく、前節から中7日で迎える

前回対戦時

今季すでに3度対戦。リーグ戦では2-2のドロー、ルヴァンカップでは3-0、0-0と鹿島の1勝1分。

スタメン

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鹿島は前節から6人変更

・最終ラインに犬飼智也と杉岡大暉が復帰、ボランチはディエゴ・ピトゥカとレオ・シルバのコンビに

・2列目には荒木遼太郎と土居聖真が入る

札幌は前節と同じスタメン

試合をラクにした犬飼智也の先制点

今節、鹿島は終わってみれば4-0の快勝となる訳だが、その結果に大きく影響したのが10分の犬飼の先制点だろう。

ゴール自体は荒木のキックの質の高さはもちろん、犬飼のマークの外し方が称えられるべきものである。札幌はマンツーマンで守っており、犬飼のマークには福森晃斗が付いていた。犬飼は一度ファーサイドに逃げることで福森と距離を取って自由に動ける状態を作り出し、福森の背後から侵入して福森の前でボールを触ることが出来ている。マーク外しのお手本のような入り方だ。

鹿島はこのコーナーキックが最初のセットプレーであり、そのチャンスを得点に結びつけられたことは自分たちをかなりラクにした。5月の連勝中もそうだったがファーストチャンスでゴールを奪えれば、自分たちがリスクを冒す必要性も減るし、主体性を持って試合を進めることが出来る。それで奪えなかった時はどうするのか!という問題にこのところはぶち当たっていたが、今節はその問題に直面する以前の段階で解決できてしまった格好だ。

割り切れた守備

札幌のボール保持時

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先制点こそ許したが、序盤から試合を通じてボールを握っていたのは札幌の方だ。札幌はボランチの高嶺朋樹を最終ラインに降ろし、ボール保持時は4-1-5のような形になる。組み立ては高嶺と宮澤裕樹、駒井善成を軸に行い、両サイドのセンターバックはサイドに開いて高い位置を取り、サイドバックのように振る舞う。前線は5トップの如く張り出し、チャナティップや最前線の荒野拓馬が必要に応じてポジションを下げて、ボールを引き出しにかかる。

札幌からしてみれば、鹿島の4バックに対して5トップをぶつけ、荒木とエヴェラウドには宮澤、高嶺、駒井の3人でそれぞれ前でも後ろでも数的優位を確保。ボールを前進させながら、ウイングバックにボールを運んでサイドからの突破力も活かし、相手の守備が横に広がれば中央でチャナティップに預け、彼のところから運んで押し込む。鹿島に理不尽な選択肢を突き付け続けることで、タスクオーバーに追い込もうとしていた。

対して鹿島は最終ラインは高めに設定しながらも、プレスはいけたらいくという感じでそこまで積極的に掛けず。エヴェラウドと荒木のタスクはあくまで相手をサイドに追い出させるか、ロングボールを蹴らせること。守備陣形も中央に寄せ、札幌にボールを運ばれること、ロングボールを蹴られること(特にサイドの裏)は許容しながらも、最後に中央は割らせないという守り方を採っていた。

結果、今節は札幌にボールを持たれる時間が長かったものの、鹿島はその割にピンチをそこまで作らせることはなかった。前線の選手は各々のタスクを確実にこなしていたし、何より守備陣が耐える展開が長かったにも関わらずスライドや対応を怠らなかったことが大きかった。もっとも、札幌がもっとルーカス・フェルナンデスと青木亮太を早い段階で使うなどといったプレー判断の質がイマイチだったことや、クロスを供給してもターゲットになれるアタッカーがいなかったことも、鹿島に味方した部分はある。

また、この守り方を許容できたのは鹿島が早い時間で先制出来ていたことが何より大きかった。基本的にはボールを持たれて耐える時間帯の方が長く、またボールを奪った時には札幌は前と後ろに人数を掛けているため、中盤にスペースが生まれやすくカウンターに繋げればチャンスは作り出しやすかったのだが、札幌の素早い切り替えもあって鹿島は守備→攻撃の局面でのボールロストが多く、思うように攻撃の機会を作り出せていなかった。それでも、リードしているのだからこのまま守り切れればそれでよし、という思いがあるからか鹿島がそこまでこうした状況にストレスを感じている様子は見られなかった。

エヴェラウド降臨

札幌の守備はオールコートマンツーマンを採用しており、高い位置から人に強くいくのが特徴だ。鹿島はこのマンツーマンを剥がすことが出来れば、札幌の最終ラインは数的同数を受け入れて守っているので優位な状況で攻め込むことが出来るし、反対にハメられて相手のショートカウンターの餌食になる可能性もあった。

そんな札幌の守備に対してとにかく効いていたのがエヴェラウドの存在だ。鹿島は無理して繋ぐことはせずにエヴェラウド目がけて放り込むことも少なくなかったが、今節のエヴェラウドはラフなボールにもほとんど競り勝って起点を作り続けた。札幌の守備は一人一殺が大原則だが、エヴェラウドによってその原則は壊されてしまっていた。

エヴェラウドを中心に1対1の勝負で競り勝ち続けたことで、試合は鹿島の方に転がってくることになる。鹿島は後半になるといけたらいくのプレスを強め、攻撃ではエヴェラウドへのロングボールを増やし、前でも後ろでもエアバトル主体に持ち込んで優位性を握るようになっていった。

その優位性が最も活きたのが48分の追加点だ。高い位置からプレスを仕掛けてロングボールを蹴らせると、これを犬飼がはね返してそのルーズボールをエヴェラウドが競り勝って落とすと、これに反応したのがピトゥカ。そのまま運ぶと冷静にキーパーとの1対1を沈めて、移籍後初ゴールを挙げた。

犬飼とエヴェラウドの高さが活きたのはもちろん、エヴェラウドが競り勝つことを先読みしてセカンドボールを拾いにいったピトゥカの判断の良さも見逃せない。ピトゥカのこうした感度の良さは随所でチームにとってプラスになっているし、欲を言うならこの動き出しをボランチのピトゥカでなく、2列目の誰かが出来るようになるのが理想だ。

63分の3点目は白崎が左サイドでタメを作って、相手3人を引き付けたことで札幌の守備を崩すことに成功している。白崎からのパスを受けたエヴェラウドがゴール前に突進、最後はこぼれ球をなんであそこにいたのか分からないが全速力で走り込んできた常本が押し込んで、ゲット。常本は嬉しいプロ初ゴールとなった。

68分には左サイドからのコーナーキックのこぼれ球をエヴェラウドが豪快に蹴り込んで、トドメの4点目。ここまで2アシスト以外でもチームに大きく貢献していたエヴェラウドだが、ここで待望のリーグ戦初ゴールが生まれたことは今後のチームにとっても大きいはずだ。

ゴールラッシュで試合を決めた鹿島はその後ピンチを作られながらもなんとか凌ぎ、そのままタイムアップ。鹿島は大勝で勝ちなしを3試合で止めた。

まとめ

10分の先制点がとにもかくにも大きかった。これで試合の流れを引き寄せられたし、自分たちがなんとかしなければいけない局面に追い込まれることもなかった。先制しなくても個々のタスクやチームとしての戦い方がそこまで変化することはなかっただろうが、リードしたことでよりやるべきことが明確になって割り切って出来たことは確かなはず。そうした意味では今節は戦いやすい試合になったのではないだろうか。

もっとも、ここ数節で突き付けられていた課題が解決できたわけではない。このチームはファーストチャンスを活かして先行出来れば、そこから崩れていくことはなく、むしろノッていけるということはすでによく分かっている。だが、毎回そんな試合が出来るわけではない。そうした時にどうした振る舞いをして解決していくのか、それに対しては継続して向き合っていくことになるだろう。

ただ、そうした困難を理不尽なほど力で解決できるエヴェラウドが復調してきたのは明るい材料。エヴェラウドのような選手がやりやすいような状況を用意して、その力をフルに発揮させて殴り勝っていく。その積み重ねで結果を残していくというループにまた入っていくかもしれない。今を考えれば、それはそれで良いのだけれど。

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