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【疾風怒濤】ルヴァンカップ GS 第3節 鹿島アントラーズ-北海道コンサドーレ札幌 レビュー

戦前

リーグ戦では、セットプレーからの町田浩樹のゴールを守り切って徳島ヴォルティスに完封勝利。相馬直樹新監督の初陣を飾った鹿島アントラーズ。今節は中2日でのルヴァンカップ。ルヴァンカップはここまで2連勝と好調だ。

今節対戦するのは北海道コンサドーレ札幌。リーグ戦では16位と苦しんでおり、16日の試合も横浜F・マリノスを相手に先制しながらも、終盤に3失点を喫して逆転負け。ただ、ルヴァンカップでは鹿島と同じくここまで2連勝。今節は中3日で迎える。

両者は9日前にリーグ戦で対戦。結果的にザーゴ前監督のラストマッチとなった試合は、前半に鹿島が2点を先制するも、フリーキックとPKから札幌に追いつかれ2-2の引き分けに終わっている。

前回対戦時のレビュー

スタメン

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鹿島は徳島戦から10人変更。林尚輝、染野唯月が今季公式戦初スタメンとなっており、荒木遼太郎は徳島戦フル出場からの連戦だ。

札幌も横浜FM戦から10人変更。キム・ミンテのみ連戦で、大谷幸輝、荒野拓馬、ジェイ、特別指定選手の田中宏武が今季初スタメンとなっている。

機能した選択肢を削る守備

立ち上がりの鹿島は積極的なプレッシングで試合に入った。徳島戦ではセットした状態での守備が中心だっただけにザーゴ体制への回帰を思わせるような振る舞いだったが、おそらく今日の人員を見てピッチ内でそうした判断に至ったのだろう。

それを受けて札幌は前線へのロングボールで回避することを選択していく。ロングボールの先にいるのはドウグラス・オリヴェイラやジェイといったフィジカルに自信を持つ選手たち。彼らのパワーで押し込むことでチャンスを作り出そうと踏んでいたのだろうし、序盤から鹿島の守備陣は彼らのパワーにかなり手を焼いていた。

10分を過ぎると、鹿島の守備に変化が起き始める。前線へのプレッシングを控えめにして、4-4-2のブロックをコンパクトな状態でセットして守るようになったのだ。前線の選手のタスクはボールを奪いに行くよりは、相手の選択肢を削ることに移行していった。

徳島戦と違っていたのは最終ラインがかなり高めに設定されており、横だけでなく縦方向にも圧縮された状態であったこと。これは最終ラインを低く設定してしまうと、札幌のパワーで押し込まれてしまうリスクを考慮したのであろう。反対に言えば、鹿島の最終ラインの裏には広大なスペースが出来ており、ここをどうケアしていくのかがポイントになっていた。

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鹿島のプレッシングが弱まったことで札幌はボールを保持できるようになった。札幌は荒野を最終ラインに降ろし、4-1-5のような形を取る。これはミシャ式の中ではオーソドックスな形だ。鹿島はこれに対して、小野伸二には小泉慶が付くなどマーカーをハッキリさせる形で対応。ここから相手の選択肢を削りに出ていった。

結果として、この守備は札幌を大いに苦しめていた。もちろん、札幌が鹿島の裏のスペースをもっと露骨に狙っていれば状況は変わっていたのかもしれないが、ボールホルダーは常に選択肢が限られており、中央へのパスコースは鹿島が圧縮して守っているため、常に奪われるリスクがある。札幌としてはボールこそ保持しているものの中々前進させることが出来ずに、無理して縦パスを入れては引っ掛けて鹿島のショートカウンターを食らってしまうという負のループに突入してしまっていた。

効いていた小泉慶

今節、鹿島にとって大きかったのは攻守の切り替えでことごとく相手を上回れたことであろう。この部分が相手の波状攻撃を防ぎ、逆に鹿島のショートカウンターを可能にしていた。今節スタメン起用された選手たちの個性が活きた結果ともいえる。

鹿島はボールを持つと早い段階で攻撃陣に預け、彼らに打開を託していく。鹿島の攻撃は個の力を最大限に活かす形が主になっており、荒木のボールを引き出して潤滑油となるポジショニングや、遠藤康のタメやチャンスメイク、松村優太のスピードを活かして札幌の守備陣を切り崩そうとしていた。

さらに、今節はそこに小泉が加わっていたのが効いていた。攻撃時には永木亮太に後ろを任せて積極的に前線に進出していく小泉。彼の動き出しによって鹿島の攻撃陣は1トップ+2列目3人に加えて5枚となり、札幌の5バックとなる守備陣に対して数的同数で攻めることが出来る。さらに、ここにサイドバックのオーバーラップが加われば、より人数を掛けられる。小泉の動き出しが札幌の5バックで守ることのメリットを消していたのである。

ペースを掴みつつあった鹿島だが、試合は唐突に動いた。32分、札幌のバックパスにプレスを掛けた松村がボールを受けた大谷より先にボールを触って、ゴールイン。相馬監督としてもこの形は予期していなかっただろうが、松村が自身のスピードを最大限に活かしたことで、鹿島は先制に成功した。

勢いの良い鹿島は39分にも追加点。右サイドからの遠藤のクロスを染野が流すが、これはルーカス・フェルナンデスがクリア。しかし、このクリアボールが荒木に渡り、荒木は左足でボールをネットに沈めて、鹿島はリードを2点に広げた。2得点とも札幌のミスと言えばそれまでだが、それでもチャンスを確実に仕留めた鹿島は2点リードで前半を折り返した。

白崎凌兵投入で取り戻した流れ

後半開始時~

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ハーフタイム、札幌は2枚代えを敢行。田中駿汰と金子拓郎を投入して、素早くサイドに預けて、ウイングバックのルーカス・フェルナンデスと金子の突破力を活かして、押し込む形に移行。中盤のセカンドボール争いで後手に回っていた部分も田中駿を投入することで、状況の改善を図った。

これによって、鹿島は後半立ち上がり後手に回ってしまう。札幌の交代策が効いていたのもそうだが、プレー強度が落ちて前半ほど相手にプレッシャーを掛けられず、選択肢を削れていないのも要因として大きかった。

だが、林や小泉が身体を張って凌いでいると、相馬監督も手を打つ。57分、運動量の落ちていた荒木に代えて白崎凌兵をトップ下に投入。これでプレー強度を取り戻した鹿島は再び流れを取り戻していく。

すると、64分だった。中盤から永木の出したスルーパスは松村には届かないかに思われたが、松村が驚異的なスピードで前を取ると、キム・ミンテがたまらずエリア内で倒してしまい、PKを獲得。キム・ミンテはこのプレーで一発退場となり、札幌は10人に。しかし、染野のキックはポストに阻まれ、追加点とは至らず。

それでも、81分にはセットプレーのこぼれ球を拾った関川郁万が大谷にエリア内で倒され、再びPKを獲得。今度は白崎がキッカーを務め、白崎はど真ん中に決めて鹿島はダメ押しの3点目をゲット。結局、試合はこのままタイムアップを迎え、鹿島は3-0の完封勝利で相馬監督になってから公式戦連勝。ルヴァンカップにおいても、グループステージ3連勝でプレーオフステージ進出に大きく近づいた。

まとめ

個々が持ち味を大いに活かした試合だった。クォン・スンテはコーチングを絶やさずに守備陣をコントロールし続け、林は外国人アタッカーに手を焼きながらも、最後の最後で身体を張り続け攻撃を食い止めていた。小泉は先述した部分も含めて攻守に効いていたし、松村はスピードという武器を存分に活かし、1得点1PK獲得と結果も残した。チームの底上げとしては十二分に意味のあった試合であろう。

今節は徳島戦とメンバーが入れ替わったこともあり、それに合わせた戦い方を選択していた。それは問題ないのだが、得点やビッグチャンスの後に勢いのまま前に出て、相手に裏を突かれるシーンが散見されたのは反省材料だろう。ノリよく攻められるのは悪いことではないが、試合を自分たちの優位な状況に持っていった直後にワンプレーでそれをぶち壊すのはよろしいことではない。今節は失点しなかったので致命傷には至らなかったが、今後修正しなければならないポイントであろう。

だが、今節大きかったのはベンチがそうした状況に対しての対応が速かったことである。相馬監督と熊谷浩二コーチが指示を送っていたが、指示が迅速かつ的確で、プレーの良し悪しの基準もハッキリしていた。ピッチの中での指揮官不在に悩んでいたが、ベンチが指揮を執ってチームの方向性を定めていくことで、この課題解決への光が見えつつあるのは今節の収穫とも言えるだろう。今の鹿島は良い流れが出来つつある。これをどこまで持続できるかが、上昇へのカギになってくる。

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