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【少なくない収穫】明治安田生命J1 第16節 清水エスパルス-鹿島アントラーズ レビュー

戦前

前節はエヴェラウドと上田綺世のストライカー2人のゴールで、ベガルタ仙台に2-1で勝利。3年ぶりの4連勝を飾った鹿島アントラーズ。中2日で迎える今節、狙うは5連勝だ。

鹿島をホームで迎え撃つのは17位清水エスパルス。ピーター・クラモフスキー新監督を迎えたものの、直近は5連敗と苦しんでいる。特にその連敗中の5試合で16失点している守備面は、リーグワーストの35失点と昨季もリーグワーストを記録した状態から改善されていない。

両者は8月にJリーグYBCルヴァンカップのグループステージで対戦。その時はお互い敗退が決まっている消化試合だったが、鹿島は一時逆転を許しながらも、そこから再度試合をひっくり返して3-2で勝利している。

8月の対戦時のマッチレビューはこちら

スタメン

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鹿島は前節から4人変更。センターバックに町田浩樹、左サイドバックに杉岡大暉が久々のスタメン起用。ボランチにレオ・シルバ、2列目には和泉竜司が起用されている。

清水は前節から6人変更。センターバックに岡崎慎、左サイドバックに金井貢史を起用。中盤は総入れ替えで、ボランチに河井陽介と中村慶太のコンビ、トップ下には高卒ルーキー鈴木唯人が入った。また、前線には金子翔太が起用されている。

清水のボール保持

序盤、ボールを保持したのは清水の方だった。鹿島が2トップをスタートに攻撃なプレッシングを仕掛けてきたのに対し、清水の組み立てでカギになっていたのはボランチ。河井、中村とボールを持てて捌けるプレーヤーを活かし、彼らがサポートに回ることで清水は数的優位を作り出し、ボールを前進させていった。

清水のボール保持の局面

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ただ、清水はボールを前進させた後はそれぞれのサイドで違う崩し方を選択していた。右サイドはロングボールでサイドの裏を突く方法。杉岡が久々の試合で入りにバタついたのもあって、彼らのところを金子とカルリーニョス・ジュニオで突いていこうという意図が感じられた。

また、左サイドは西澤のポジショニングで鹿島守備陣に迷いを生み出そうとしていた。右サイドの金子がサイドに張って高い位置を取っていたのに対し、左サイドの西澤は低い位置のハーフスペースでボールを引き出す機会が多かった。西澤にフリーでボールを持たれると彼に自由に仕事をさせてしまうし、かといって西澤にプレッシャーを掛けていけば、持ち場の部分がスペースになってそこを突かれる可能性が出てくる。そもそも中途半端な位置に立つ西澤に対して誰がプレッシャーに行くのか、そうした迷いを小泉慶や犬飼智也に清水はもたらそうとしていた。

こうした清水のボール保持からの攻撃に対して、鹿島は高い位置からのプレッシングが中々機能せず、立ち上がりの主導権を清水に明け渡してしまっていた。また、鹿島は連戦の疲労からかポジショニングの修正にズレが生じることが度々あり、清水に簡単に中央に縦パスを入れられるシーンも見受けられた。

そんな中でチームを助けたのは、レオ・シルバと犬飼だ。中央に縦パスを通されても、彼らの個の力でボールを奪い取り、ピンチを未然に防いでいた彼らのパフォーマンスによって、鹿島は押し込まれていながらもさほどピンチを作らせなかった。もちろん、チーム全体として切り替えの部分でサボることはなかったのもそうだし、レオ・シルバはここ最近調子を上げていたために期待通りの活躍と言えばそうだが、犬飼のパフォーマンスは特筆ものだった。今節は積極的に前を出てのインターセプトを何回も成功させ、攻撃の第一歩になっていた。後述するが、その犬飼のインターセプトから今節はゴールが生まれている。

先制点を生んだ杉岡大暉とファン・アラーノ

中々プレスがハマらないことで、鹿島は20分過ぎからプレスの開始位置を下げ、ハーフウェーラインからのミドルプレスに切り替えていく。このあたりから鹿島は徐々に落ち着きはじめ、バタついていた杉岡も自分のペースを取り戻していく。

落ち着いた鹿島はボール保持からサイドの裏にボールを蹴り込んで、そこにエヴェラウドらアタッカーを走り込ませることでペースを引き寄せようとしていく。高い位置に相手を押し込めれば、一度ボールを失っても即時奪回で再びボールを自分たちのものにして、波状攻撃に繋げていけるからだ。

先制点はそうした中で生まれたものだった。29分、高い位置で杉岡が清水の横パスをインターセプト。そこからファン・アラーノがボールを拾い、レオ・シルバへ。最後はレオ・シルバのスルーパスに抜け出したエヴェラウドがトーキックでゴールを決め、鹿島は3試合連続で先制に成功した。

このシーン、まず評価したいのは杉岡の動きだ。一度鹿島がボールを失った後だったが、すぐさま切り替えてプレッシングを掛けて横パスを引っかけたところからショートカウンターがスタートしている。

このシーン以外にも今節の杉岡は好パフォーマンスを見せていた。良かったのは攻撃面だ。今節の杉岡は高い位置を取り、そこから仕掛けて鋭いクロスを入れていくシーンが多かった。これまでの杉岡は位置取りが低く、ボールを受けてもノッキングしてしまうことが少なくなかったが、ようやく彼本来の持ち味を出すことが出来るようになってきたように思える。低い位置からでも高いキック精度で前線にピンポイントで届けられる永戸勝也と、高い位置で切り崩してチャンスを作り出せる杉岡。彼ら2人のサイドバックによって、攻め方を柔軟に変えられれば、より左サイドの攻撃は活性化していくだろう。

また、アラーノの動きも見逃せない。彼の先制点が生まれるまでのプレーはいわゆるタメを作る動き。彼のところでワンテンポ遅らせることで、清水の岡崎と中村が引きずり出され、そこからレオ・シルバに預けたことで、レオ・シルバには立田悠悟が対応に行かなければならず、結果としてセンターバック2枚が開けたスペースをエヴェラウドが活用することが出来た訳である。

自由を謳歌する土居聖真

先制点で試合の流れは完全に鹿島のものとなった。清水は守備陣がズルズルと下がり始め、中盤や前線との間に間延びが生じ始めていた。ボール保持も鹿島が持てるようになってきたことや、そこから苦労なく前進できるようになってきたことで、鹿島の攻勢の時間が訪れた。

2点目は相手のスキを見逃さなかったのが大きかった。清水陣内深くからのスローインを、鹿島は犬飼が高い位置でインターセプトするとショートカウンター発動。エヴェラウドが和泉に渡り、最後は和泉の落としを土居聖真が沈めて、鹿島は3分間で2点のリードを手にした。

鹿島はこの後もゴールこそ奪えなかったが攻勢の時間帯を続けていく。大きかったのは清水の中盤とDFラインの間に生まれたスペースを自由に使えたことだろう。誰がプレッシャーを掛けるか迷うな位置に和泉や土居、アラーノが入り込んでボールを引き出すことで、鹿島は自由自在にボールを動かしていく。特にこの状況で活きたのが土居。狭いスペースでも苦にしない彼にとって、あれほど高い位置でスペースが出来ると仕事はやりやすくなってしかるべし。土居がテンポよくボールに触って動かしていくことで、鹿島の攻撃はより活性化していった。

仕留めきれないツケ

2点リードで折り返した鹿島だったが、攻勢の流れは引き続き変わらなかった。ハーフタイムにザーゴ監督が「後半開始からしっかり入り、3点目、4点目を狙っていこう!」と指示した通り、チームは試合を決めるべく追加点を狙いに攻撃に出ていった。

ただ、そうした中でそのゴールが中々奪えなかった。チャンスは迎えるものの、ことごとくシュートは枠を捉えることが出来ない。63分に上田と荒木遼太郎、70分に遠藤康と白崎凌兵を投入して、攻撃陣の活性化を図ったが、それでもリードを広げることが出来なかった。

そうこうしているうちに鹿島は連戦の疲労が隠せなくなっていく。交代で入れ替わった攻撃陣はともかく、後ろの方はあまり入れ替えていないため徐々に押し上げが効かなくなっていった。そうなってくると、即時奪回や波状攻撃は難しい。鹿島は攻撃が単発になり、次第に清水の攻撃回数が増えていった。

79分には清水に追い上げを許してしまう。スローインから鈴木が入れ替わると、彼のスルーパスに抜け出した途中出場のティーラシン・デーンダーがシュートを決めて、1点差に。この試合、唯一レオ・シルバが相手に入れ替わられてしまったシーンが失点に繋がってしまった。

このゴールで清水は勢いづく。逆に鹿島としては攻勢から一変、なんとかリードを守り切る時間帯に突入。それでも何とかそのリードを守り切ったままタイムアップ。鹿島は5連勝達成で、順位を暫定ながら5位まで上げる結果となった。

まとめ

前半の我慢する時間帯をきっちり凌ぎ、そこから攻勢に出たタイミングで2点を奪って試合を優位に運ぶまでは、満点の試合運びだった。ただ、そこから追加点を奪って試合を決められず、自ら苦しい試合にもっていってしまった部分は反省が必要だろう。

だが、試合の後味こそ良いとは言えなかったものの、厳しい連戦の中で確実に3ポイントを拾えた意味は決して小さくない。上位争いに加わっていくためには、今まで落としてきたようなこうした試合で勝点を拾っていくことは必須条件だからだ。

また、久々の出番となった町田と杉岡が今後も期待できるようなパフォーマンスを見せたことは、チームにとって厚みを増す結果となっただろう。特に杉岡は加入して以来、一番のパフォーマンスを今節見せてくれた。左サイドバックは永戸が主力として君臨していたが、ここで杉岡が計算できるようになったことは小さくない上積みだ。左サイドバックのポジション争いにも注目したい。

次節は4年ぶりの6連勝を懸けて、2位セレッソ大阪との上位決戦だ。安定した守備力を誇り、ボール保持のレベルも高いC大阪との対戦は、好調を維持する鹿島にとって一つの試金石となる試合になるだろう。目標としているさらなる高みを目指すために、次節は落とせない一戦だ。

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