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『CODA』を観て気づいた、自分がこれからも大切にしたいこと

映画館で映画を観るのが好きで、時間を捻出しては、月に数回だけ、いそいそと映画館に出かけていく。2時間空白時間をつくるのは毎回労力がいるけれど、さまざまな「ながら」を取り払って、倍速やストップという選択肢なしに好きなコンテンツ一本に集中・没頭できる時間に対する喜びと多幸感は私の中で何ものにもかえがたいものになっている。

というわけで、2月最初の映画館鑑賞作品は『Coda あいのうた』。

*一部本編内容に触れる部分がありますので、未見の方はご注意ください

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聴こえない家族の「通訳」係だった少女の知られざる歌声。それは やがて家族の夢となるー。アカデミー賞®の前哨戦ともいわれるサンダンス映画祭で、史上最多4冠に輝き、世界を沸かせた〈必見の1本〉。その日、この映画が上映されるや、各国のバイヤーが配給権に殺到。サンダンス映画祭史上最高額【約26億円】で落札されたことも大きなニュースになった。
主人公のルビーには、大ヒットTVシリーズ「ロック&キー」で一躍人気のエミリア・ジョーンズ。共演は『シング・ストリート 未来へのうた』の主役でも話題のフェルディア・ウォルシュ=ピーロ。ルビーの家族を演じるのは、オスカー女優のマーリー・マトリンを始め全員が実際に聞こえない俳優たち。そのキャスティングにこだわったのは、若き実力派監督シアン・ヘダー。
抱き合い支え合っていた家族が、それぞれの夢に向かって歩き始めることで、さらに心の絆を強くする──熱く美しい瞬間を共に生き、あなたの〈大好きな一本〉になる、爽快で胸熱な感動作。
(『Coda あいのうた』公式サイト イントロダクションより引用)

詳しくはぜひ本編を観てほしいのですが、本作を通じて自分の中で気づいたことがあったので書き留めておこうと思う。

『Coda あいのうた』はシアン・ヘダー監督も言っているように、「突き詰めればとてもシンプルな家族の物語」。

その上で最初は主人公・ルビーの苦悩が中心に描かれる。

ルビー以外の家族は皆、耳が聴こえない。原題は大文字の『CODA』。Child of Deaf Adults (ろう者の親を持つ子ども)の略語のみで、サブタイトルはつかない。ルビーが初めて抱いた夢を通じて、家族との関係が少しずつ変化していく。

映画自体本当に素晴らしく。「耳の聴こえない世界」の描き方、聴覚に障がいのある家族が抱える悩みやまわりのひとやコミュニティとの繋がり。「聴こえない」世界から「聴こえる」世界をみる視点や、ルビーや家族の葛藤がとても丁寧に描かれていて、終盤は涙が止まらなくてあせった。(映画館で涙をふくハードルの高さよ) だからこそ観終わってからもう少し具体的に、素晴らしかった点、自分が心動かされた部分を改めて考えた。

マサチューセッツ州の港町の映像もとても美しかったし、ルビーの歌も素晴らしかった、役者それぞれのキャラクターもとても魅力的で、家族が仲良しで、チーム感があるのも羨ましいとおもった。

その中で私が特に心動かされたのは、「人と人、お互いが本当にわかりあえた」と感じるいくつかのシーンだった。

一見仲良しな親子が本音を出し合った後に本当にわかりあえた時、先生と生徒が魂がぶつかりあうような歌の表現で通じ合えた時、主人公とパートナーが美しい時間を共有することで恋人として心が通ったとき。

『Coda』では登場人物それぞれの「わかりあえる」瞬間がとても丁寧に、自然に、やさしく描かれていて、私はもれなくそこで泣いていた。

そしてあらためて思い返すと、映画に限らず、私が好きだな、愛しいなと思う作品は、派手なり地味なり、大なり小なり、ほとんどが、その描写が丁寧なものだ。これは、自分がひととわかりあう、ということへの憧れがあるからかもしれない。

一方で、ヒット作や、皆がすすめている作品の中で、ごく一部、自分もその波にのりたいのにいまいちのれない場合の理由もわかった気がした。

とても小さくて基本的なことかもしれないけれど、それが頭でわかるというより心で理解できた気がして、目の前が開けた気持ちだった。

その気づきを忘れずに大切にしていきたいと思う。


ちなみに、本作は2014年公開のフランス映画『エール』のリメイク版でもあります。

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見比べると、心動かされる部分が違っていたりして面白い。アマプラで観れますのでぜひに。

そして最後に、『Coda』のパンフレットも素晴らしかったのでこれもお伝えしたい。

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練習楽譜テイストにタイトル箔押しがとても素敵で、かばんにしまわずに手に持って胸に抱いて帰りたくなる。

映画を観た後にパンフレットを買って、監督の意図や役者の想いを読むのが大好きなのですが、Codaのパンフレットは内容もとても充実してました。これで880円は安いと思えるほど。

パパ役のトロイ・コッツァー氏(ご自身も聴覚に障害がある)の「私たちは、ただの人間だということ。手話で話しているというだけ」という言葉に心打たれたり、ご自身がコーダである五十嵐大さんのレビューは、ぜひ読んでほしい内容だった。

自分の中のいろいろなピースがつながった気がした。

今月は他にどんな映画に出会えるかな。






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