ウェブデザイナーのためのウェブサイト制作契約書【契約書のひな形/商用利用可能】
ウェブデザイナーの皆様こんにちは。クライアントとの円滑な仕事を実現するために、ウェブサイト制作業務の基本契約書のひな形をご用意しました。
この契約書ひな形は、ウェブサイトの制作からその後の更新、運用、修正などを含む、包括的な業務委託契約を想定しています。クライアントとの間で、業務の基本的な条件を明確に定めることで、トラブルを未然に防ぎ、円滑なプロジェクト進行を実現します。
【ひな形の特徴】
ウェブサイト制作業務に特化した条項
制作業務に特有の事項(制作範囲、納期、検収、対価、知的財産権の帰属など)を詳細に規定。継続的な取引に対応
この契約書は基本契約であり、一度契約したあとは案件ごとに簡易に個別契約を締結できる構造になっています。これにより同じクライアントから同種の発注を繰り返し受託する場合に、基本条件を毎回設定し直す手間を省けます。カスタマイズ自由
ひな形はWordファイルで提供。自由に編集できるので、自社の業務スタイルに合わせて必要な修正を加えられます。解説付き
わかりにくい条項には解説が付属。契約書の内容をより深く理解でき、円滑な交渉・締結に役立ちます。仕様書の事例付き
サンプル事例がついているので、仕様書をゼロから定義する必要がなく、下書きに沿って仕様書をつくることもできます。
実務上の論点をもれなくカバーしているため安心して業務を遂行できます。
また、基本契約として締結しておけば、同じクライアントとの間で、個別の案件ごとにその都度個別契約を締結するだけで業務をスタートできます。基本条件は共通化されているため、個別契約では具体的な業務内容と報酬のみを定めれば足ります。仕様書の詳細なサンプルや、発注書を用いる場合の書式例、発注請書を発行したい場合の書式例も添付されています。
契約書は、ウェブデザイナーとクライアントの間に、明確な合意と信頼関係を築くための強い味方です。ぜひこの機会に、業務基盤の見直しと強化にお役立てください。
メンテナンス、運用、更新などのリピート受注に特化
基本契約方式であるため、リピート注文に向いています。一度制作を受注してサイトを納品した後も、修正やメンテナンス、リニューアル、追加の作成といった継続的な受注に活用可能です。
特に重視したのは
①契約書の内容がシンプルで使いやすいこと
②リピートにも対応できる内容であること
です。
シンプルな契約書がよい理由
複雑すぎる契約書(お互いに理解しづらい)や、リピートを考えてない契約書(使いまわしにくい)は避けたいところです。
こういった「業務委託契約書」のテンプレートは、ネット上にもたくさん散らばっていますが、こうした状況に特化していないため、内容が簡単すぎたり複雑すぎたりします。条文数が多く複雑な契約書は、法的には正しかったとしても自分でも意味がよくわからなかったりして、かえってリスクになります。
受注額が何百万円と高額な案件にはそういうものも必要かもしれませんが、必要以上に専門的で込み入った契約書にしてしまうと、自分もお客さんも読むのに時間がかかります。そのため、契約書のボリューム感には気を配りたいものです。
汎用的で、有利性のバランスが良く、リピートに対応できる契約書
とはいえ契約書ですから、必要な内容が抜けないように注意したいですね。この矛盾した条件を同時に満たすには、実務で使われてきたリアルなひな形を使うのがベストです。
今回公開するひな形は、僕が実際にお客さんとの間で何度もディスカッションしながら練り上げた実践的な内容です。デザイナーにとってもクライアントにとっても不利ではなく、ほぼ中立的で、シンプルで、必要な条文がすべて含まれています。それでいて無駄に踏み込み過ぎない内容なので、汎用性が高く、数十万円から数百万円規模のホームページ制作案件には最適なボリューム。
前述のとおり「リピート性」を重視して「基本契約書」の形式になっています。基本契約とは、具体的な個々の契約(個別契約)については別途定めることとして、共通的な項目を先に規定する契約のやり方です。ようするに一度契約をしておけば、細かいことは別途、発注書(発注書に限らず、メール等の任意の方法でも可。)で決定する方式です。同じクライアントからメンテナンスや、ページ追加や、新規サイトといったリピートをいただいたら、(すでに基本契約は交わしているので)発注書(等)を交わすだけで、追加の契約が締結できるというわけです。
デザイナーにとって最適な契約不適合責任条項
どちらかが極端に有利なのではなく、バランスを意識した内容ですが、契約不適合責任条項については、デザイナー側に配慮でき、さらに微調整もできる内容にしました。よりリスクを抑えた契約内容となります。
このひな形の契約不適合責任条項は、ウェブサイト制作などの成果物に契約不適合(民法改正前は、いわゆる「瑕疵」と呼ばれていたもの。この場合はウェブデザイン上のミスやプログラムの何らかの誤り、仕様書との不一致など)が発見された場合の責任について定めたものです。要するに納品したものにミスがあれば、デザイナーが修正などをしなければならないことについてルール化したものです。
ひとつ具体的な内容を紹介すると、契約不適合の修正等(第1項)により、検収完了後に発見された契約不適合について、依頼者(甲)はデザイナー(乙)に対して修正等の履行の追完を請求できます。ただし、依頼者に不相当な負担を課さない場合、デザイナーは依頼者が請求した方法と異なる方法で追完できます。
この、依頼者に不相当な負担を課するものでないときは、デザイナーは依頼者が請求した方法と異なる方法による追完を行うことができる、というルールの意味が少し分かりにくいかもしれませんので、例を挙げると、例えば以下のようなケースが考えられます。
① 依頼者が求める修正方法が非効率的な場合
例えば、依頼者が細かな部分の修正を多数求めており、それらを個別に対応するよりも、全体的な設計変更を行った方が効率的である場合などです。この場合、本条により、デザイナーは依頼者の求める方法ではなく、より効率的な方法で修正を行うことができます。
② 依頼者が求める修正方法が技術的に困難な場合
依頼者が求める修正方法が、現在の技術では実現が難しい場合や、多大なコストを要する場合などです。この場合、デザイナーは代替的な方法を提案し、それによって修正を行うことができます。
③ 依頼者が求める修正方法が成果物の品質を下げる場合
依頼者が求める修正方法が、ウェブサイトのユーザビリティを損なったり、パフォーマンスを低下させたりする可能性がある場合などです。この場合、デザイナーはより適切な方法を提案し、それによって修正を行うことができます。
④ 依頼者が求める修正方法が法的・倫理的に問題がある場合
依頼者が求める修正方法が、知的財産権を侵害していたり、不当な表現を含んでいたりする場合などです。この場合、デザイナーは問題のない代替的な方法を提案し、それによって修正を行うことができます。
ただ、いずれの場合も、デザイナーが代替的な方法を選択する際には、依頼者に「不相当な負担」を課すものであってはいけません。つまり、代替的な方法が依頼者にとって受け入れ難いものであってはならないということです。
つまりこの条項は、修正方法をめぐって依頼者とデザイナーの間で意見の相違がある場合に、柔軟な対応を可能にすることを目的としています。ただし、あくまでも依頼者の利益に配慮しつつ、合理的な範囲で代替的な方法を選択することが求められます。
(本条について、ひな形にはより詳しい解説も載せています。)
最適な知的財産権の帰属条項(譲渡)
デザイナーにとって知的財産権の帰属の問題は常についてまわります。当然このひな形にも、ウェブサイト制作などの業務における知的財産権の帰属について定めてあります。基本的には以下の通り、クライアントに権利を譲渡する内容になっています。
4つの要点を説明します。
1.依頼者の知的財産権の帰属の確認(第1項)
依頼者が提供する情報・資料等の知的財産権(第1項) 依頼者(甲)がデザイナー(乙)に開示または提供する情報や資料等に関する著作権、特許権、商標権などの知的財産権およびノウハウは、すべて依頼者に帰属します。
2.成果物の知的財産権の譲渡(第2項)
業務遂行の過程で生じた成果物(編集著作物)の著作権や発明などの知的財産権は、業務開始前からデザイナーに帰属していたものを除き、対価の支払完了をもって、デザイナーから依頼者に譲渡されます。
3.知的財産権移転の対価(第3項)
前項の知的財産権の移転の対価は、依頼者からデザイナーに支払われる対価に含まれるものとします。
4.著作者人格権の不行使(第4項)
デザイナーは、依頼者に帰属した権利について、著作者人格権を行使しないことを約束します。
つまりこの条項のポイントは、依頼者とデザイナーの間で、知的財産権の帰属を明確に定めている点にあります。特に、成果物の知的財産権は、対価の支払完了をもってデザイナーから依頼者に譲渡されるという点が重要です。これにより、デザイナーは支払を受けるまで権利を留保できますし、依頼者は、(完済後に)成果物を自由に利用・改変できるようになります。
また、知的財産権の移転の対価が、依頼者からデザイナーに支払われる対価に含まれるものとすることで、依頼者は、著作権などについての別途の対価を支払う必要がないことを明確にしています。
さらに、デザイナーが著作者人格権を行使しないことを約束することで、依頼者による成果物の利用・改変が円滑に行えるようになります。著作者人格権とは、著作者が自分の作品に対して持つ権利(公表権、氏名表示権、同一性保持権)ですが、この条項によって、デザイナーがこれらの権利を主張しないことを約束するわけです。
このように、この条項は、依頼者とデザイナーの間の知的財産権に関する権利関係を明確にし、依頼者が成果物を円滑に利用できるようにすることを目的としています。もちろん当事者間の話し合いと任意の判断により、デザイナー側に著作権を残す契約条件に修正することも可能です。ひな形には、その場合にも参考にできるよう、サンプル条項(利用許諾バージョン)も含まれています。
特約を追加すればあらゆる例外的シチュエーションに対応可能
自社の契約書を用意していても、個々のクライアントとの間では特別な提案や条件で契約することはよくあることです。その場合、仕様書の「その他」の項目などに特約を追記して、対応することができます。この点は重要なので少し具体的に説明します。
仕様書の「その他」の欄に追加されることのある、いわゆる「特約」は、個々のクライアントとの契約において、標準的な仕様書の内容では網羅しきれない特殊な事情や要求事項に対応するために記載します。
それは、例えば以下のような状況が想定されます。
追加の業務内容
SEO対策のためのキーワード選定や文章作成
多言語対応(英語版、中国語版等の制作)
アニメーションやインタラクティブ要素の組み込み
特殊なプラグインやAPIの導入
特殊な納品物
CMSへの組み込み用のテンプレートファイル
デザインガイドラインの作成
プロトタイプ(クリッカブルモックアップ)の作成
独自の納品スケジュール
複数フェーズに分けた納品
特定のイベントや商戦期に合わせた納品
特別な検収条件
ユーザーテストの実施と結果に基づく修正
第三者機関によるコードレビューの実施
追加の権利帰属や利用条件
乙が制作した特定の素材(イラスト、アイコン等)の再利用権の設定
オープンソースライブラリの使用に関する条件
特殊な費用負担
写真や映像等の素材購入費用の負担
外部協力会社(ライター、フォトグラファー等)の起用に関する費用負担
これらは一例であり、クライアントの業種、業態、規模、要望等によって、特約の内容は多岐にわたります。特約事項を仕様書に明記することで、標準的な仕様書では対応しきれない個別の要求事項を契約内容に反映させ、トラブルを未然に防ぐことができます。
このひな形に含まれる条項
このひな形には、以下の条項が含まれています。
【免責事項】
当方が提供する契約書のひな形は一般的な形式や構成を示すものであり、特定の法的状況や個々の取引に適用されるべき内容を保証するものではありません。契約書のひな形はあくまでも参考資料であり、法的助言や専門的な意見を代替するものではありません。以下をご理解ください。
1.当方の契約書ひな形は参考資料です。特定の法的状況への適用は保証しません。
2.ひな形は法的助言の代替にはなりません。作成代行サービスとは異なるため、個別の条文についてのお問い合わせにはお答えできません。
3.利用者は、ひな形を自身の責任でカスタマイズし、使用してください。当方は、誤字脱字、表現上の間違いや矛盾を含むすべての内容の誤り、及び契約書のひな形に関連する利用者の行動や取引の結果、ひな形の利用による損害や損失について責任を負いません。
ご購入いただく前に、利用条件を十分に理解し、ご自身の責任においてご判断ください。
【ひな形を使うメリット】
当方の契約書ひな形は、実際の業務で使用された生きた契約書を基に作成されたオリジナルのものです。同じひな形は他には存在しません。
一般的な内容ではなく、特定の場面を想定して作成された、そのシチュエーションに特化した内容となっています。ぜひ、あなたのビジネスにお役立てください。
ウェブデザイナーのための、ウェブサイト制作基本契約書のひな形
以下がひな形です。末尾からWordファイルをダウンロードしてお使いください。
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