見出し画像

契約書を読んでみよう!【売買契約と業務委託契約はどう違うのか】

売買契約と業務委託契約はビジネスでよく使われる契約の代表格ですが、違いがわかりにくいですよね。売買は民法にも定義がありますが、業務委託契約という契約は民法には無くて、民法的に解釈すると委任契約だったり請負契約だったりします。売買、委任、請負という契約は似ているけれども、全然違うところもあります。

具体的には何が違うのでしょうか? どちらも発注者がお金を払って何かを買う契約であることに変わりはありません。でも目的とするもの、買う対象が違います。ようするに何を買っているのかが違うのです。

モノか、サービスか、完成か

売買は、モノを買います。委任は、サービスを買います。請負は完成するというゴールとサービスをセットで買います。つまり対価を払って商品を渡してもらうのが、売買。代金を払ってモノではなくサービスの提供を受けるのが委任。請負は依頼して何かを完成してもらうことが目的です。微妙に意味が違いますよね。

この微妙な違い、売買か、委任か、請負を(もちろん混ざっている契約もあるでしょうが、それならば混ざっていると)理解できることがとても重要です。なぜかというと、契約の目的を意識することでトラブルになりそうなポイントがわかるからです。

たとえば売買契約の場合は、モノを買う契約なので、当事者にも対象が前もって見えています。事前にじっくりと選んでから決めることができるので、複雑なもの以外は誤解が生じにくいです。トラブルになりにくいといえます。ところが委任とか請負の場合は、扱うのがサービスなので、たいてい売主と買主との間でそのイメージがずれています。期待のすれ違いが起きるのです。

業務委託契約がよくトラブルになる理由

「これはやってくれると思っていた」「いやそこまでやるとはいってませんよ」ということが日常茶飯事で、そのギャップをどこまで事前に埋めておけるかが勝負になります。ギャップがゼロにはなりませんが、大きいとトラブルになります。契約書で確認できるようにしておかなければなりません。

じゃあどうやれば契約書で確認できるようになるでしょうか。売買契約の場合は商品の写真をつけたり、仕様書をつけたりすれば具体的になります。委任契約の場合、つまりサービスの場合はいつも悩みます。

まだ実施されていないサービスのクオリティは書きようがないし、やってみないとわからないもの、やりながら決まるものもあるからです。たとえば設計をするという委任契約では、設計をするのが仕事なので、あらかじめどのような設計図になるか、完成品を示すことはできません。ではどうすればいいのか。

契約書に別紙を付ける理由

私なら、せめてできるだけ詳しく書けるように、契約書の本文ではなく「別紙に記載する」として、別紙をつくって契約書末尾に添付します。請負契約の場合は「完成」が基準ですので、委任契約と同様で、締結時点ではなにも完成していませんからやはり目に見えません。そこで、なにがどうなったら「完成」といえるのかを、やはり別紙で記載するのが得策です。

完成をめぐってよくトラブルになるのが、たとえば情報システムの請負契約です。情報システムはプログラムの集まりですから、制作を請負った会社は一生懸命「プログラム」をつくります。しかし買った側はプログラムがほしいのではなく、そのプログラムが期待したとおりに動くことや、システムがもたらす機能、さらにいえばそれを使用したことによる「課題の解決」がほしかったりします。ここで大きく期待がすれ違います。つまり、プログラムは納品されたが、期待通りに動かなかったとき、情報システムは「完成」したのかしていないのか、となってもめてしまうのです。作り話ではなく、裁判所のサイトを少し検索すれば今の話とそっくりの裁判例が、うんざりするほど見つかるのです。

まとめ

まとめると、

・契約トラブルは期待のすれ違いで起きる
・とくに委任、請負は期待のギャップが大きくなりがち
・契約書だけでなく別紙をつけてできるだけギャップを減らすのがノウハウ

といえます。契約の性質をみきわめて、上手にビジネスを守りたいですね。

もしこの記事が少しでも「役に立ったな」「有益だな」と思っていただけましたら、サポートをご検討いただけますと大変嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。