見出し画像

フードデリバリーロボットが京都の仕出し文化から学べること

京都に住み始めて10年近く経ちますが、最初の頃、良く思ったのが、『仕出し』って文字が多いっ!ということでした。街を歩いていると、至る所に「仕出し」と書かれた店の看板があったり、「仕出し」と書かれた小型配送車が走っています。とにかく、その数が多い。

あんまり深く考えたことなかったのですが、以下のコンテンツを見て、確かに!!と思ったのと、自分自身「デリバリーロボット」の開発に携わっている中で参考にできる部分があるのでは??と思ったので、番組の内容含めて、記録に残しておきたいと思います。

「仕出し」とは何なのか?

「仕出し」というのは、「注文で作った料理を届けること」ということで、まさにフードデリバリーの原点とも言えます。Uber Eatsなどの現在のフードデリバリーは、「作ること」と「届けること」を分業していますが、仕出しはどちらもやるというのが特徴でしょうか。

京都では、江戸時代から、得意先へ料理を運ぶという位置付けで盛んに行われていました。

仕出しは、裕福な商工業者である「町衆」に育てられた文化とも言えるそうで、そもそもは、晩ごはんに「好みのもん二、三品作って持ってきて」というような、元来町衆にとって身近な存在だったようです。また、遊郭で出される料理は、専門の仕出し屋である「台屋」から取り寄せた高級な料理という形が一般的になっていきました。

お客様の好みやその日の天候などもとに、その日の食材、調理、味付けなども変えて届けられていたとのことです。そのような江戸時代の仕出しが、時代と共に、日ごろは質素な生活をしていても、お祭り、節目のお祝い事や来客など「ハレ」の日は思い切って贅沢しようという現状の仕出しに近づいていきました。

フードデリバリーというと最新のトレンドという印象を持っていましたが、よくよく考えると、日本の伝統的な文化かもしれません。そして、屋台とかもそうかもしれませんが、個人個人がキッチン、食材を所有するよりも共有した方が、楽しいし、もしかしたら効率も良いという現在のシェアリングに通じる思想もあるような気もしました。

作ることへの想い

仕出しは調理してから食べるまでの時間が長いため、冷めてもおいしく食べられるように緻密な計算というか、技術が使われており、「時間の魔術師」とも言えそうです。

上記の番組の中に出ていた木乃婦の高橋さんが紹介していたものだけでも

・出汁を取るときに、原料魚の頭と内臓部分を取り除き、煮て、骨を除き、燻し乾燥させた状態の「荒節」にカビを付けた「枯節」を料亭では使うけど、秒単位で劣化していくので、仕出しの時には、「荒節」を使う。ただし、直前に追い鰹をすることで風味を加える。
・日本酒をよく使うことで、食材の中の水分を保つ
・牛や豚ではなく、融点の低い不飽和脂肪酸が多い魚を使うことで、口の中の温度ですぐに油が溶けるようにする。

などの工夫が紹介されていました。

お店側にとっても、料亭のように立派な店舗を持たなくても良く、お店の固定資産が少なく済むため、また、一度に大量に仕込むということでリソースも集約することができる、ということで、利益率が高くなっているようです。

時間をおいても味が劣化しないという技術を作り上げていくことで、利益率が高いビジネスへと成長できているんですね。

運ぶことに対する想い

番組中では「七里四方」という考え方も消化されていました。お店から30km以内の場所への配達に拘るというニュアンスで使われていましたが、この範囲にしておくと、一回あたり最低3万円分の注文を頂ければ、配送にかかるコスト(3000円)が全体の10%になってくるとのことでした。

逆に、10%以下になるようにモビリティも自転車や小型配送車などを使い分けているとのことでした。この辺りはモビリティビジネスをする上でも参考になる点ですね。

知らなかったのですが、「七里四方」という言葉は、もともとは「七里結界」という仏教、密教用語と繋がっています。「七里結界」とは、魔障を入れないため、「七里四方」の所に境界を設けるということということであり、弘法大師・空海は、高野山上七里四方に結界を結び、伽藍建立に着手しています。

仏教用語がどのように食文化までに影響を与えるようになったかはわかりませんが、家から七里四方でとれた食材を使った料理を食べるのが体に良いとされているようです。同じエリアの空気、水、土から育った食材が良いでしょうということだと思われます。

七里四方という約30kmエリアは、地元とか地域とかコミュニティとかをリアル空間で考えるためには1つの指標となってくる単位なのかもしれません。

上等な考え方を食べるという料理の本質

番組の締めの言葉で、メディアでもお馴染みの歴史学者の磯田道史さんが「料理の本質とは、料理に対する上等な考えを食べる」ことなのではないかという意見を述べられています。

なんてステキな言葉。

料理に対して、時間が経っても美味しく食べられるように作る技術、考えは、もちろん上等ですし、それを効率的に運ぶ、もしくは価値を落とさないように運ぶ、なんなら運ぶことによってより美味しく感じるということも、もしかしたら「運ぶ」ということが実現できるかもしれないし、デリバリーロボットに携わっている者として考えてみても面白いなと思いました。

フードデリバリーとは、食べる場所を変えることでもある。もちろん、便利のために家で食べるということもあるでしょうし、家だからこそ実現できる価値もある。そして、ピクニックをしたときに食べる弁当は美味しく感じるといったように、食べる場所によって食事に対する感性は大きく変わる

このあたりは、技術的にもまだまだいろんなことができそうです。

フードテックというのが、ここ数年?よく聞かれますが、なんで盛り上がっているのか、改めて「食」に関して考えてみることで、なんとなくわかるようになってきました。

「食」、おもしろそう。


毎日、有名な仕出し屋さんの前を通って通勤していたのですが、朝早くから、若者たちが大量の料理を仕込んで、配達車を洗って、準備しているのを毎日見ていました。

彼らのようなやる気のある料理人とテクノロジーがうまく融合していくことで、美味しく、身体にも良いご飯が、世の中にどんどん広まっていくと良いですね。


では、また来週〜。

「フォロー」や「ハートマーク(スキ)」を押して頂けると喜びます。笑
安藤健(@takecando)

======================

Twitterでは気になった「ロボット」や「Well-being」の関連ニュースなどを発信しています。よければ、フォローください。


頂いたサポートは記事作成のために活用させて頂きます。