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澤和樹が語る「東京藝術大学アカンサス音楽祭」はこうして始まった

割引あり

アカンサス音楽祭の提唱者の一人であり、東京藝大アカンサスフェスティバル・オーケストラのコンサートマスターも務める、前学長のヴァイオリニスト澤和樹先生に、この音楽祭が始まった経緯と、その大きな意義についてお話をうかがいました。(2024年7月東京藝術大学にて)

●澤和樹(さわ・かずき):ヴァイオリニスト、東京藝術大学前学長。ソリストとして、また室内楽や澤クヮルテットのメンバーとして精力的に演奏活動を続けている。指揮者としても活躍。本音楽祭の「東京藝大アカンサスフェスティバル・オーケストラ」では、昨年に引き続きコンサ―マスターを務める。


第2回東京藝術大学アカンサス音楽祭

第1日「邦楽の日」
2024年8月24日(土)15:00 開演 ( 14:15 開場)
会場:東京藝術大学 奏楽堂
三味線協奏曲/他
出演:林英哲(和太鼓) / 味見純 / 柴田靖代(三味線) / 常磐津文字兵衛(三味線) / 萩岡松韻(箏) / 深海さとみ(箏) / 藤原道山(尺八) / 藤波重彦 / 関根知孝 / 水上優 / 盧慶順 / 花柳輔太朗

第2日「オーケストラの日」
2024年8月25日(日)15:00 開演( 14:15 開場)
会場:東京藝術大学 奏楽堂
ブラームス(交響曲第2番)/他
出演:[指揮]大野和士 [独奏・独唱]佐藤晴真(vc) [司会]朝岡聡 [演奏]東京藝大アカンサスフェスティバル・オーケストラ

《問》東京藝術大学演奏藝術センター 050-5525-2300
 

東京藝術大学アカンサス音楽祭はどのようにして始まったのですか?

昨年開催の第1回は、ソリストに小山実稚恵さん(ピアノ)を迎え、小林研一郎さんの指揮でラフマニノフのピアノ協奏曲第2番やチャイコフスキーの交響曲第5番を演奏するなど、大変華やかなイベントとなり、多くの方々に注目していただきました。実はこの音楽祭はチャリティイベントで、収益を東京藝術大学音楽学部支援のために寄付することを目的のひとつとしています。

  この音楽祭が立ち上がったきっかけは、2004年の国立大学法人化に伴い「国からの交付金だけに頼らず、大学は自助努力しなければならない」という状況、そして10数年前の受験者数減でした。
受験者数の減少は少子化が大きな要因ですが、これまで卒業生の方々と大学が積極的に繫がりを持ってこなかったことも影響しているのではないか、と考えました。そこで始まったのが、この音楽祭の前身とも言える、2015年のホームカミングデイです。

ホームカミングデイは大変盛り上がりましたが、大学関係者と卒業生たちのいわば内輪のイベントです。これだけ活発で質の高い演奏会が開催可能であれば、もっと大勢の方々に聴いていただきたいという意見が参加者からも持ち上がりました。それで学外の方も広くご来場いただける演奏会を、と始めたのがこのアカンサス音楽祭なのです。

第2回となる今年の聴きどころは?

澤:昨年は1日目に室内楽の演奏会を行いましたが、今年は邦楽です。
邦楽科は藝大の大きな特色のひとつで、流派を超え、学生たちは互いに切磋琢磨しています。音楽祭では流派、そしてジャンルをも超えた演目例えば、《夏の夜の夢〜夢現恋戯(ゆめうつつこいのたわむれ)》をとり上げます。シェイクスピアの名作と邦楽、つまりは西洋文化と日本の伝統との融合をお楽しみいただきます。

そして2日目のオーケストラの演奏会、今年は大野和士さんの指揮でブラームスの《大学祝典序曲》、チャイコフスキーの《ロココの主題による変奏曲》、そして、ブラームスの交響曲第2番を演奏します。ロココのソリストは今もっとも注目を集めている若手チェリストのひとり、佐藤晴真さんです。
私は前回に続き、コンサートマスターとしてオーケストラで演奏させていただきます。同じ大学の出身者が集まって一緒に演奏する、ということで演奏のしやすさ、というのがありますね。例えば室内楽などでも音楽大学それぞれの特色が演奏に表れる、という感想を聴衆の方々からうかがうことがありますが、このオーケストラからも藝大ならではの特色を感じていただけると思います。

"藝大の音"とは、どういうものでしょう? 音楽大学それぞれの演奏の特色はどこからやってくると思われますか?

大学の伝統や雰囲気など、言葉ではなかなか説明のつかないようなものもあるかもしれませんが、指導に当たられている先生方の影響が大きく反映されるのではないかと思います。つまりは歴代の先生方がどの国の音楽や教育に影響を受けてきたか、ということですね。そういったことも想像しながら音楽祭を聴いていただくと面白いかもしれませんね。

以前のご質問でもお話ししましたとおり、この音楽祭はチャリティですので出演者も皆さんボランティアで参加してくださっており、収益は東京藝術大学音楽学部へ寄付されます。若き音楽家たちのために、ぜひたくさんの方々に会場にお越しいただきたいと思います。

音楽家として“今”を活きる


インタビューの最後に、現在音楽を学ぶ学生たちに向けてメッセージをいただきました。

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