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定時先生!第23話 最終下校時刻

本編目次 

第1話 ブラックなんでしょ

ー遠藤先生も、3年生が引退してから、少しずつ減らしたらどうだろうー

 中島の提案に対し半信半疑でいた遠藤は、昨日一日周囲の同僚たちに、部活動に対する考えを聞いてみた。わかったことは、教師によって部活動の捉え方は多様であり、余計にどうすれば良いのかわからない状態に陥ったということだ。 
 活動を減らせば、当然負担は減る。しかし生徒、保護者、周囲の教師、そして自身も、受け入れられるだろうか。

 疑問を抱いたまま、遠藤は今朝も朝練を終え、職員朝礼に臨んだ。司会は教務主任の西田だ。教務主任は、学校全体の予定や教育課程の管理・把握が主な業務で、管理職の校長と教頭に次ぐ重要な役職だ。そつなく仕事をこなす西田は30代半ばの若さでありながら教務主任を務め、気さくな人柄で生徒からも慕われている。市内サッカー部顧問の中心であるサッカー専門部長でもあり、まさにK市の将来を担うであろう中堅だ。

「それでは、職員朝礼始めます。おはようございます。今日から部活動最終下校時刻が18時半となります。では、部活動担当の市川先生から」

 職員室前方の西田と教頭の席に並ぶ席の市川が起立した。市川は50代後半の生徒指導主事で、学校全体の生活指導を担当し生徒から恐れられていた。S中全体の部活動をとりまとめる部活動主任も兼務している。市川の野太い声が職員室に響く。

「えー、最近は明るい時間帯が延びてきましたが、18時半は十分遅い時刻ですので、できる限り複数人で下校するようご指導ください。また、部活動下校時刻になりましたら、職員室にいらっしゃる先生方もですね、外に出ていただきまして、校門の先の信号のところまでで構いませんので、下校指導にご協力よろしくお願いいたします。えー、3年生最後の大会が近づいています。大会1週間前の部は、放課後練習を30分間延長ができますが、今週は剣道、柔道、卓球、陸上が延長ですので、お知りおきください。顧問の先生方におかれましては、生徒に悔いが残らないよう十分サポートしてあげてください。以上です」

 来週は、遠藤が顧問を務めるソフトテニス部も、延長が予定されていた。職員室のあちこちから、大会に意気込む顧問たちの声が聞こえる。

 川村先生の言うとおりなのだろうか。

ーやっぱり減らすわけにはいかないよー
ー先生方の目、気にしちゃうよー

 しかし、遠藤はこの日、部活動縮小の決意を確かにする出来事に遭遇するのだが、この時はまだ、知る由もない。