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自#092|愛の不時着と童貞の常識(自由note)

 「愛の不時着」を、童貞と云う一点で縛り、解説している週刊プレイボーイ(週プレ)の記事を興味深く読みました。「愛の不時着」は、韓国の財閥令嬢ユンセリが、パラグライダー事故により北朝鮮に不時着し、国境地帯の警備に当たっていた北朝鮮のエリート家系育ちの軍人、リジョンヒョクと出会って、次第に恋に落ちていくと云うラブストーリーです。財閥令嬢とエリート家系と云う設定が、如何(いか)にも韓国ドラマって感じがします。

 恋愛経験豊富なユンセリは、ピュアすぎるリジョンヒョクに思わず「母胎ソロじゃないの?」と聞くシーンがあります。母胎ソロとは、母親の胎内から生まれて以来ひとりと云う意味で、恋愛関係ゼロを指すそうです。最近は、母胎ソロを公言する韓国芸能人もいるらしく、韓国では、童貞の価値が上がって来ているとか。日本の女子アイドルが、男女交際の経験は一切ないと、公言するようなノリなのかもしれません。

 リジョンヒョクは、性的なにおいを醸し出さず、誠実さとピュアさを兼ね備えた、理想の童貞なんだそうです。北朝鮮の硬派の軍人=童貞と云う公式は、確かに成り立ちそうな気はします。硬派の軍人=遊び人、でも面白そうですが、それだと二流のドラマにとどまってしまいそうです。

 ユンセリが、最初の帰国に失敗した時、落ち込む彼女に励ましの言葉もなく「帰国の方法はもうない」と、リジョンヒョクは、きっぱり言ってしまいます。ここは、嘘でも「大丈夫だよ。きっと何とかなる」と声をかけるべき場面です。つまり、女性との会話に慣れてなくて、はっきりと物を言う空気の読めなさが、如何(いか)にも童貞的だそうです。

 今、ふと思い出しました。前の学校の部活の顧問時代、最後の3、4年間くらいは、はっきりと自分は童貞だと、公言する男子が、結構、いました。そんなことを、わざわざ言わなくても、顔に「童貞」だと赤マジックで書いてあるようにも思えましたが、口に出して、言うようになったのは、童貞が、ブランドとして、ある程度、価値を持つようになったからなのかもしれません。ちなみに、受験は、童貞の方が、有利だと思います。そんなことを知っちゃってる男たちに、知らない童貞くんたちが、負ける筈がないと云う気もします。彼女がいて、そういう経験が日常茶飯事ある男子高校生が、受験で成功したと云う話は、正直、ほとんど聞いたことがないです。彼女と別れて、半年以上は禁欲的な生活をしないと、受験の成功はsurely(absolutelyかも)ないと想像できます。

 北朝鮮に不時着したユンセリを見つけた瞬間、リジョンヒョクは、ニヤっとしたそうです。つまりタイプの女性だったからです。永遠のオトナ童貞のための文化系WEBマガジン「チェリー」編集長の霜月明寛さんは「大人なら、いくらタイプの女性を見てもニヤっとはしません。彼の精神年齢は中2なんです」と、語っています。女性に関する精神年齢が中2=童貞と云う公式も、成り立つのかもしれません。女子高のJKは、ごく一部の遊んでいる女の子を除いて、男子と付き合った経験は、多分、ないと思います。男子と付き合ったことのない女子高のJKも、男子に関しての精神年齢が中2だと云う公式が、成り立つかどうかは、私が把握しているデーターが少なすぎて、解りません(そもそも共学校の教員ですから女子高の実態は把握できてません)。

 リジョンヒョクは、ユンセリを自宅に匿(かくま)っています。ユンセリのために、日用品や下着を買って来ます。が、買って来たブラジャーのサイズが、大きかったりします。これは、童貞くんは、女性の胸を妄想で、大きくしてしまうと云うことなのかもしれません。童貞くんは、おっぱいを飲んでいた頃のお母さんの胸しか知りませんから、ついつい、大きいと思ってしまいそうです(幼児にとってはお母さんの小さな胸も、大きく見える筈です)。が、女性の胸の大きさは、経験豊富な男性であっても、容易には解らないと思います(女性だって、カモフラージュして作り込んで来ますから)。

 ユンセリが、証明写真を撮る時、一緒に撮ろうと誘われても、恥ずかしさから断ります。が、あとで、こっそり一枚、証明写真をもらっています。週プレは、これは妄想用の写真だと断定しています。パスポートや学生証に貼るような写真が、妄想用として使えるとは私には思えませんが、究極の童貞くんでしたら、それも「あり」と云うことなんだろうと推測できます。

 キスシーンは訪れますが、キスをする前にリジョンヒョクは、foreverと云っていいくらい、ユンセリを見つめまくっています。吉田拓郎の「青春の歌」風に云うと、「キスをする前、永遠に君をみつめる、ああ、それが青春」ってことになるのかもしれません。が、そのあと、セックスをした様子はないです。童貞ですから、セックスの仕方そのものが、そもそも解ってない筈です。日本の中学の保健や家庭科の授業でも、具体的には教えないことになっています。

 ユンセリは「毎日、きれいな言葉をかけて」と云うアドバイスを添えて、トマトの苗木をリジョンヒョクにプレゼントします。ユンセリも、リジョンヒョクの童貞ぶりに大きく感化されてしまっていると言えます。で、リジョンヒョクは、ユンセリが見てないとこで、こっそり苗木に優しい言葉をかけます。童貞くんは、植物にだって、優しい言葉をかけなきゃいけないんです。taskが多すぎるかもしれません。

 リジョンヒョクは、サプライズで、ペアリングをユンセリに渡します。「いらなかったら捨てていいよ」と、リジョンヒョクは捲(まく)し立てます。「うわぁ、中二病キター!!」って感じです。戸惑うユンセリに「男にもらったのは初めてか?」と、せいいっぱいの雰囲気でマウントを取ろうとします。「もう中二病やめてぇー」と、思わずshoutしたくなります。まさに、これがKing of 童貞くんです。このシーンを週プレは
「童貞力がモテる女性の経験値を超え、心を奪った瞬間です」と講評しています。このセリフを、海千山千の女性が読んだら、鼻で笑うかもしれませんが、まあ、恋愛であれ、受験であれ、結局は、一方的に思い込んでいるもの勝ちです。
「愛するひとがこの世にいるだけで幸せ。女性に対して、謙虚な世界観で生きている童貞マインドそのもの。全話を通して、セックスより素晴らしい愛がある云う意図を感じます」霜田さんはコメントを述べています。童貞=モテない、と云う常識を、この大ヒットドラマは、完全に覆したと強調しています。が、結局は、ヒョンビン扮するリジョンヒョンが、清純なイケメンだったからと云う、ぶっちゃけな話にすぎないような気もします。

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