自#478「生まれてハジメテ、エペという言葉に出会いました。世の中、正直、知らないことだらけなんだと、あらためて理解しました」

          「たかやん自由ノート478」

 トランポリンの女子の予選を少し見ました。森ひかるさんという大学4年生が、メダル確実と言われているらしく、母校の金沢学院大で、トランポリンクラブの方々を中心に、パブリックビュー方式で、応援している様子が中継されていました。とにかく、明るくて、笑顔が素敵な先輩ですみたいなエールを、後輩たちが送っていました。7月23日に、オリンピックテレビ番組の特集号が、別刷りで出たんですが、そこにもすでに、「トランポリン女子決勝(森ひかる)、日本人初の表彰台へ」と、メダルを取ることが、あたかも規定事実であるかのように書かれています。この特集号で、表彰台確実だと持ち上げられている、特に金メダル候補は、ほぼ全員が、柔道を除いて予選落ちしました。メダル確実たと喧伝され、日本国民及び日本国の期待を背負ってしまうと、そのプレッシャーにアスリートたちは、逆につぶされてしまうという風なことも言えそうです。テレビ局は(視聴率を稼ぐために)話題を無理やり拵え、空手形を出して、盛り上げた結果として、アスリートを、追い込んでしまっていると感じられます。テレビもその他マスコミも、国民の様子を見て、基本、オリンピック開催には、消極的な姿勢だったと思われます。オリンピックは、日本国と東京都、オリンピック委員会が、強行突破して、実施したと言う風な印象も受けます。コロナ禍で、お祭り騒ぎは、望ましくない筈です。だったら、静かにあったかく、アスリートたちを見守ってあげればいいのにと、思ってしまいます。アスリートたちは、ビジネス的な商品のひとつとして、ただ単に消費されているだけと云う風にも見えます。
 森ひかるさんは、結局、予選落ちしました。テレビの中継を見ていても、ガチガチに緊張しているのが伝わって来ました。まったく期待されてなかった宇山芽紅さんが、5位で入賞しました。期待されてない方が、プレッシャーをさほど感じないで、力を出し切れるんだろうと想像できます。
 以前は、勤めていた学校の野球の試合(夏の予選)を、結構、見に行ってました。野球部の生徒って、だいたいみんな真面目なんですが、それでも、3年間きちんと文句なしに真面目にやって来た生徒もいれば、うーん、ちょっとチャラかったかもと思ってしまう生徒もいます。本番の試合で、最後、ワンアウト、走者2、3塁、一打さよなら勝ちという決定的な局面に陥った時、3年間、ずっと真面目にやって来た生徒は、三振したり凡ゴロで、ツウアウトになったりします。その後、結構、ちゃらい部員がバッターボックスに立って、ヒットを打って走者をホームに帰して、さよなら勝ちを果たしたりします。真面目にやって来た生徒が結果を出せなくて、チャラくてたいして真面目にやって来なかった生徒が、最後、結果を出す、こういうことって、野球の試合に限らず、結構、あります。世の中って不公平じゃないかと、思われたりするのかもしれません。高校の内部にいれば理解できるんですが、真面目な優等生はdiversityに欠けていて、学んでないことが、沢山あります。不真面目な生徒の方が、diversityに富んでいて、優等生が学んでないことを、会得してたりするものです。だからと言って、不真面目が望ましいと言っているわけではありません。真面目な優等生も、チャラくて不真面目な生徒も、どちらも必要なんです。それが、diversityです。真面目な生徒は、ただそれだけでは、常に結果が出せるとは限らないということを知っておいた方が、いいかもしれません。
 オリンピックをこんなにちゃんと見たのは、今回が初めてです。はっきり判ったことがあります。アスリートの身体能力は、普通の人とは較べものになりません。それこそ、3歳~5歳くらいから、これまで鍛え抜いて来ています。身体能力の超人と言っても過言ではないと思います。ですが、メンタル面は、普通の方とまったく同じです。アスリートだから、超人的なメンタルを備えているという風なことは、全然ないと感じました。むしろ、普通の人よりも、メンタルは追い込まれて、弱くなっているかもとすら思ってしまいます。特別視をしたりせず、身体能力はすぐれていても、まったく普通の人だと考えて、アスリートと接してあげた方が親切だし、望ましいって感じがします。
 フェンシングがエペ団体で金メダルを取りました。朝日新聞の番組特集では、「バド奥原、2大会連続メダルを狙う」とか「BMX、中村が初代王者をめざす」とかと喧伝されていますが、フェンシングは普通にスルーされています。特別、期待もされてなかったわけです。そもそも、エペなんて、聞いたこともない名称です。「What's エペ?」って感じです。近所の古本屋で百円で買って来た広辞苑第四版を開きました。エペを引くと「フェンシング用の剣のひとつ。先の尖った細身のもの。突きだけに用いる。またそれを使って行う競技」と説明してあります。新明解国語辞典には「フェンシングの種目のひとつ。全身を対象とし、突きを用いる。またその種目で用いる剣→サーブル・フルーレ」と書いてあります。新明解でサーブルとフルーレを引くと、すっきりと全体像が判りました。エペはつまり全身突き。フルーレは、胴体突きのみ。サーブルは上半身の突きと斬りです(ちなみに広辞苑では突きの場所を特定してないので、全体像は見えて来ません)。
 私は、広辞苑も新明解国語辞典も、高校生の頃から使っています。解らない言葉が出て来たら、辞書をきちんと引く、この基本は忠実に守って来ています。が、67年近く、生きて来て、エペは今回初耳でした。ソクラテスの無知の知ではないですが、これだけ、無駄飯を食らって生き続けて来ても、知らないことだらけなんです。
 西欧の闘い方は、突きが原則です。これも、今回、イリアスを再読して、はっきりと認識しました。イリアスでは、多くの場合、槍を投げて、結果として、突きで相手を斃すって感じです(剣を使うsceneは、アキレウスが川の中に入って、斬りまくるとこ以外にはないです)。
 エペ団体メンバーの集合写真が新聞に掲載されていました。うわぁ、こういう男子いるいると思ってしまいました。高校のクラスにも、居酒屋にもいます。世界のトップアスリートとは、とても思えないような、気さくさ、フレンドーさを感じます。オーラは、全然、放ってません。フェンシングですから、防具をきちんとつけて、対戦する時のみ、オーラを放てばいいんです。
 高校総体で、フレールの団体競技はあるそうです。が、私は、フェンシング部のある学校を一校も知りません。都立では、おそらく一校もないと推定できます。エペ団体で金メダルを取ったメンバーは、エペを拡散させたいと考えているようですが、フェンシングは、剣も防具も必要ですし、スケボーのようには、広がって行かないだろうと想像できます。 

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