【受験ノート】北里大学

 北里大学のキャンパスは、相模原にあります。最寄り駅は小田急線の相模大野ですが、そこからパスで30分くらいかかります。アクセスがいいとは、お世辞にも言えません。医療系の大学として、首都圏では中堅校として知られている学校です。ただ、埼玉や千葉から通うとなると、片道2時間以上かかります。家賃はそう高くないので、大学の傍に部屋を借りて、地味に真面目に勉強している学生が、かなりいます。

 キャンパスの敷地は広大です。キャンパス内に北里大学病院と北里大学東病院と、2つ大学病院がありますが、バス停にすると、完全に1個分、離れています。北里大学は、一応、白金に本場キャンパスはありますが、そこで学んでいるのは、2年生以上の薬学部の学生だけです(薬学部も1年次は、相模原キャンパスです)。獣医学部のみ、2年次から、さらにど田舎に行かされるんですが、2年生以上の薬学部と獣医学部の学生以外は、すべて相模原キャンパスで学んでいます。

 相模原キャンパスには、広々とした1000人くらいは収容できる学食もありますし、コンビニも本屋もキャンパス内で営業しています。大学の周囲には、何もありません。大学の中だけで、すべてが完結しています。クラスやサークルの飲み会で、相模大野に繰り出すと云うノリではなく、大学の傍で暮らしている誰かの部屋に集まって、ゲームをやりながら、仲間内で飲むみたいな地味な展開です。

 獣医学部は、2年次から十和田キャンパスです。学校案内には、アクセスは、青い森鉄道三沢駅から、タクシーとのみ書いてあります。バスは走ってないのか、あるいは走っていても、一日、二本とかきっとそれくらいです。ここも、東京農大のオホーツクキャンパスに、まさるとも劣らない大自然です。海からは遠いんですが、とんでもなく大きい十和田湖があります。スキー、スノボ、スケートなど、ウインタースポーツと勉学との両立は、一応、可能です。ちなみに、海洋生命学部も、かつては三陸海岸にキャンパスがありましたが、今は実習の時のみ、「三陸臨海教育研究センター」に出向きます。

 東京には大学病院が沢山あります。が、神奈川には、ほとんどありません。横浜市立大には医学部がありますが、金沢地区です(みなさんが知っている地名ですと、八景島シーパラダイスとかその辺)。あと相模原よりさらに奥の(小田原寄り)伊勢原に東海大学病院があるくらいです。大学病院の数が少ないだけに、北里のstatusは、高いです。医学部および大学病院が北里大学の全体のレベルを押し上げているとこもあります。

 私大の医学部に、この学校から進学することは、まず考えられません。難易度が高いこともネックですが、それ以上に学費が高すぎて無理です。ですが、医学部以外の医療系であれば、普通に狙えますし、進学希望者も多い筈です。

 この学校に通って来ている生徒にとって、北里大の相模原キャンパスは、そう遠くはないです。バスは不便ですが、通学圏内です。北里大の看護学部はお薦めです。慶応とか上智、聖路加と云った有名大の看護学部は、つまり意識高い系の看護希望の方が、進学する学校です(紛争地域に行って、国境なき医師団の方々と一緒に、身を挺して看護の仕事がしたい云う方は、やはりそういう有名大の方が望ましいです)。そこでは、女同士の熾烈な闘いも待ち受けています。北里大の看護は、等身大で、まあ多少まったりで(まああくまでも多少です。看護系はさすがにガチモードのまったりではありません)この学校の生徒のテンポ感とも合っていると私は思っています。

 看護の仕事は、間違いなくあります。子育てが忙しくなって、途中でリタイアしても、また仕事に復帰することができます(ただし、大学病院と云った最先端の医療現場には復帰できません。そういう最先端の職場は、3、4年離れると、speed的にも、スキル的にも、知識的にも、ついて行けなくなります。最先端のスキルや知識を必要としてない病院は、いくらでもあります)。

 医者と看護師以外の医療系は(6年間、高い学費を払った末に国家試験に合格して、やっと資格を取得する薬剤師であっても)供給量が、すでに需要量を上回っています。薬剤師は、もうpayしないと、どこの予備校でも指導している筈です。国家試験に合格して資格を取得したら、薬剤師は、名義を貸して左うちわで、一生楽に暮らして行けると云う古き良き時代では、ありません。現在、大半の薬は、薬剤師ではなくても、簡単に講習を受ければ、販売できる仕組みになっています。薬剤師でないと扱えない薬は、当然、ありますが、そういう薬は(違法ですが)ネットを通して、手に入れることができます。薬に限りませんが、ネットの普及によって、闇ルートと云うものが、確立してしまいました。これは、ネット社会が引き起こした、ゆゆしき負の世界ですが、ネットの便利さの陰で、看過されてしまっています。

 北里のリハビリテーション科には供給が需要を上回っているいくつかの専攻があります。理学療法専攻は、運動や電気刺激、温熱、マッサージなどの物理的手段を用いて、運動障害や身体機能を回復させる理学療法士を養成し、作業療法学専攻は、生活動作やレクリエーション活動を通じた回復訓練を行い、社会活動への再適応をはかる作業療法士を養成し、言語聴覚療法専攻は、声・言葉・聞こえの障害に対し、発達と機能回復を促進するための治療を行う言語聴覚士を養成し、資格機能療法専攻は、視機能検査全般、斜視、弱視の回復訓練を行う視機能訓練士を養成する・・・わけですが、現場で一番、求められているのは、介護ができる人間です。介護ができる人は、いくらでもいますが、介護の仕事に就く人が足りなくて、常に慢性的な人手不足です。目の前の人に食事をさせたり、排池の介助をしたり、お風呂に入れたり、身体を拭いたり、声かけをしたりとかで、手いっぱいで、機能回復訓練までは、とても手が回らないと云うのが現場の実情です。

 北里大の医学部の授業料は高いです。帝京大の医学部と同じくらいです。が、高いのは医学部だけです。あとは、普通か、やや安いくらいです。たとえば、東海大の海洋学部と北里大の海洋生命学部とを比較すると、北里大の方が、はるかにお得感があります。東海大の海洋学部のキャンパスは、清水なので、自宅からの通学は不可能で、その分も上乗せされます(生活費そのものはあっちの方が安いんですが)。

 相模原キャンパスには、薬用植物を育てているバイオガーデンもありますし、将来、水族館職員や博物館職員を目指している、海洋生命学部の学生が企画・運営している「北里アクアリウムラボ」と云う水族館もあります。が、現実問題として、水族館や博物館職員は、定期的な採用はなく、欠員が出た場合のみ募集しますから、限りなく狭き門です。私は、30年以上、教員の仕事をしていますが、水族館の職員や、イルカのトレーナーになった教え子は、一人もいません。難関国立大に入学するより、多分、難しいと言えます(難関国立大に行った教え子は、ぱらぱらですが、現実にいますから)。


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