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カフェもレストランもバーもない村への移住、大丈夫? // 移住STORY2

私、山中麻葉がつづる、群馬県高山村への移住体験記。連載第2回にようこそ。第1回目は色々な方面から反響をもらいました。読んで頂きありがとうございます。

連載2回目の今回は、移住前に不安だった「飲食店がないという問題」を中心にしながら、私の引っ越し、村での短期滞在、出産までのストーリーを語ります。今回も楽しみながら読んでもらえるよう、ラフに、そして何より、正直に書いていきますよ。

想定外の引っ越し費用。そして、東京脱出

2021年に開催された東京オリンピックの時期、みなさんはどんなふうに過ごしていましたか?
私はこの時期、ちょうど妊娠9ヶ月。お腹がパンパンに膨らみ、むくみもひどく、おまけに7月の猛暑が直撃、さらに新型コロナウィルス第5波の直撃も受け、日々の生活が大変でした。そんなタイミングで東京から高山村への引っ越しという大仕事を迎えます。
ここで1つ、想定外の出費が発生。それが、「引っ越し費用」です。移住を決める前に、ある程度の諸経費は計算していたのですが、この「引っ越し費用」という項目は、想定額を大きく超えてしまいました。今まで東京内の引っ越しは何度もしていたのですが、県をまたぐ引っ越しははじめて。引っ越し会社5社ほどの見積もりをとって、最終的に一番リーズナブルな価格に調整してくれたパンダでお馴染みの会社さんにお願いしました。その額、20万円弱でした。これから移住を検討する方、県をまたぐ引っ越しはなかなかの引越し代がかかりますので、予め予算多めに計算しておいてください。

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立ったり座ったりするのも辛い9ヶ月のお腹で梱包。実際は、引っ越し作業のほとんどを夫や両親に手伝ってもらいました。(ありがとう!)

荷物をすべて積み終わり、最後に360°撮影できるカメラで記念写真。

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この家には2年間ほどお世話になりました。都内では珍しく、一軒家の賃貸で、1階のリビングと和室を利用してワンピースの展示販売会を開催していました。壁紙の一部をブルーグレーの色にしたところがお気に入りだったところ。さようなら、東京阿佐ヶ谷のおうち。

東京を離れる前の不安:村には飲食店が少ない

東京暮らしの良い点は色々な側面から語れますが、やはり飲食店がたくさんあり、毎日美味しいものを食べ歩く生活が楽しかったです。気晴らしに近くのカフェに行ったり、ランチをレストランに食べに行ったり、夕飯作りをサボって夫とバーや居酒屋に行ったりすることが、大好きだったのです。ところが、移住先の高山村にはカフェもレストランもないし、車移動なので気軽にお酒を飲みに行く事もできません。村の飲食店は食堂が2軒だけ。東京でのライフスタイルは否が応でも変わるはずです。私はカフェやレストラン、居酒屋、バー無しになっても大丈夫なのか……。飲食店天国の東京を離れる前、そんなところに不安を抱えていました。

移住して半年近く経った今、この時の私に「大丈夫だよ」と語りかけてあげたいです。

移住前の私へ

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カフェがなくても大丈夫だよ。新居の付近をブラブラと歩くだけで、美味しい空気を味わい、四季折々の景色を楽しめて、近所の人との立ち話や挨拶で気晴らしができるので、カフェが無くても大丈夫だよ。

レストランがなくても大丈夫だよ。高山村で安くて新鮮な食材が手に入るし、夫が料理にハマって毎日、自宅で美味しいゴハンが食べられるから大丈夫だよ。

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居酒屋やバーがなくても大丈夫だよ。こっちでは誰かの家に集まってわいわいとみんなで騒ぐ「家飲み」が楽しいから大丈夫だよ。

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みんなで一品ずつ持ち寄って、日本酒会とかやってるよ。さらに、うちでも、どの家でも庭でバーベキューができるから、居酒屋で飲むよりも気持ちよくて、楽しいよ。だから大丈夫だよ。

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一つだけ、大丈夫じゃないこと

心配していた「飲食店がない問題」は、住んでいくうちにどんどん解消されていきました。そして、毎日カフェやレストランに通って使っていた食費もどんどん浮いていきます。一ヶ月のうちにかかる食費は今、世帯で半分以下くらいになっていると思います。

でも、大丈夫じゃないことが一つだけありました。それは、高山村では美味しいタピオカドリンクが飲めないこと! 私、タピオカドリンクが大好きなのです。東京にはタピオカドリンクのお店が乱立していましたが、高山村にはもちろん、その付近にもタピオカのお店はありません。やはり、流行りのスイーツやドリンクを毎日堪能できるのは都市部の強みですね。そのへんはもうしょうがないので、我慢しております(涙)

(2022.2.21追記)この記事を公開した後、何人かの方から「美味しいタピオカ、家でつくれるよ!」と、ご連絡を頂きました。楽天などのネットショップでこだわりのタピオカが販売されていて、あとは美味しい紅茶と美味しい牛乳があれば簡単に作れると。情報ありがとうございます!そして、「家で作る」という発想がなかった自分が、恥ずかしいです……。さっそくトライしてみます。これで美味しいタピオカドリンクが作れるようになれば、東京に未練がなくなります!!!

高山村の夏はクーラーがいらないほど涼しい?

さて、東京オリンピックで盛り上がる東京をあとにし、7月の後半、私たちは晴れて高山村の村民になりました。引っ越してから1週間だけ新居で過ごし、その後また、東京の実家に戻って里帰り出産をするというスケジュールです。
東京の7月はうだるような暑さで毎日死にそうになっていたので、寒冷地に属する高山村の涼しさを大いに期待していました。

が、、、、、暑い!!!!!!!!

これもまた、想定外のことの一つです。標高500m以上の高山村にも、温暖化の影響なのか、酷暑は訪れていました。昔はクーラーのない家がほとんどだったそうですが、ここ数年は半分以上の世帯がクーラーを導入するようになったとか。日中、外を歩くと数分で汗が噴き出してくるし、炎天下ではヤル気も気力もどんどんそがれていき体力が消耗していきます。

それでも、東京の暑さとは質が違うことにすぐに気がつきました。まず、暑い時間が短いのです。午前中10時くらいまではクーラーなしで気持ち良く過ごせます。太陽が屋根を暖めて家全体が熱くなり始めるのが11時くらいから。そこから17時くらいまでヒートタイムが続きます。そこを過ぎると、あら不思議。一気に風が抜けるように暑さが流されていき、ひぐらしの鳴く声とともに涼しい、清々しい夏の夜が訪れます。クーラーはもちろんストップです。夜はずーっと涼しくて、そのまま朝まで快適です。そして、本当に暑いのは7月の後半から8月のお盆くらいまでの間のようです。この期間の日中だけはクーラーが必要。東京ではほとんど24時間クーラーをつけていなければ命の危険に関わる暑さだったので、それと比較すると天国のように感じました。特に、夕方から夜の涼しさは気持ちが良くて、ノスタルジックな気分に毎日浸れます。朝方、虫の声に起こされて始まる1日もとても清々しいのです。

寒暖差を利用して美味しくなる高山村の野菜たち

日中のヒートタイム、そして夜のクーリングタイム。この温度変化は私たちニンゲンにも嬉しいのですが、もっともっと恩恵を受けている子達が実は存在します。それは、野菜たちです。

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(↑下の太い緑の野菜は「高山きゅうり」という名産品。これが、美味!)

野菜は日中、太陽の光を受けて光合成をして栄養を体内に取り込みます。夜の間に呼吸をしてその栄養を排出するのですが、寒くなると呼吸が浅くなって、栄養を体内に溜め込むのだそう。そういうわけで、寒暖差の激しい地域で育つ野菜は体内の栄養、つまり甘みが残っていて美味しいというわけなんだとか。

高山村の野菜たちもこの気候のおかげで、ずいぶんと美味しく仕上がります。それはすぐに、移住して家で料理をした途端に実感しました。何を作っても、野菜が美味しいから、すべての料理のクオリティが底上げされるんです。一瞬、料理の腕が一気に上がったのかと勘違いしたくらいです。

移住したては野菜の美味しさに大興奮して、随分と友達や家族に野菜を送りまくりました(笑)その後、無事に娘が産まれてからは、出産のお祝いのお礼に高山村野菜の詰め合わせを送ったり……。私の営むワンピースのお店「Down to Earth」でメルマガのプレゼントにしたり……。高山村野菜のエバンジェリスト(伝道師)としての活動を勝手に展開しております。

日々、新しい野菜に出逢い、美味しい料理法を探求していますが、中でも感動した2つの料理を紹介させてください。どちらも、有機農家さんKimidorifarmのお宅で頂いた奥さんの手作り料理です。

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ビーツのラペ
<作り方>ビーツをスライスしてオリーブオイル、リンゴ酢、塩胡椒を混ぜて、胡麻をパラパラっと。

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高山きゅうりとトマトのサラダ
<作り方>高山きゅうりとトマトをカットして、オリーブオイル、パセリ、キヌア、塩胡椒、レモンであえる。

カラフルな色で見た目にもとっても綺麗ですよね。野菜そのものが美味しいので、特に手を加えず、生のままちょっと味をつけるだけでハイレベルの一品になります。
東京の一流レストランのランチセットで提供されるサラダみたいなクオリティーでした。外食せずとも外食欲求が満たされます。

高山村のビーツや高山きゅうりは夏を中心にKimidorifarmさんのオンラインショップでも購入できます。高山村に来られる方は、道の駅「中山盆地」でも買えますよ。

いよいよ出産へ。高山村がふるさととなる娘、誕生。

束の間の高山村滞在で高山グルメを味わい、東京の実家に戻り、私は臨月を迎えました。もういつ産まれてもおかしくないという状況で、セルフマタニティフォトを撮ったりしながらその時を待ちました。

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出産の話を詳しく書きたいところですが、この記事はあくまで移住体験記なので、それはどこか別のところで語るとして……ひとことだけ言えるのは、「大変でした!」ということです。お産でお世話になった助産師さんにこの写真を見せても、きっと私だとは認識できないでしょう。そのくらい、人相が変わるほどの苦しみに耐え抜いたお産の現場でした。

やっとの思いで、赤ちゃん誕生↓

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高山村の野菜の栄養分でしっかりと育っていました。8月28日生まれ、3,259gの元気な女の子です。

高山村の役場に出生届を提出し、私達夫婦に続きまた一名、村民人口が増えました。この子にとってはここ、高山村が「ふるさと」になるのです。この子に、こんな素晴らしい場所をふるさととして与えられることを、とっても嬉しく思っています。ここで伸び伸び、育っていこうね。

番外STORY:もうすぐ高山村にカフェができます!

「村にはカフェがない」と問題視していた私ですが、実は2022年5月にカフェがOPENすることになりました! 高山村の道の駅「中山盆地」の横に、「たかやま未来センター『さとのわ』」という村の施設ができる予定です。その中には農産物加工所、コミュニティスペース、そしてカフェが含まれるとのこと。コーヒーはもちろん、村の作物でつくったジェラートやピザを味わえるそうで、素敵な立ち寄りスポットになりそうです。さすがにタピオカドリンクはないと思いますが……、それでも、楽しみでなりません!

次回はいよいよ、高山村での家族3人暮らしのスタート。季節は稲刈り、収穫祭のシーズンです。そこには都会では経験したことのないワクワク体験と、またまた美味しい体験が待っていました。


山中麻葉 Maha Yamanaka
1984年生まれ。30歳を機にサラリーマン生活に終止符を打ち、ワンピースのオーダーメードのお店を起業。2021年夏、群馬県高山村に、夫と娘と移住。夢は、小さなアーミッシュ村をつくること。

Down to Earth アーミッシュワンピースのお店
> instagram @shop_down_to_earth
> 著書「アーミッシュカントリーの美しい暮らし」

【お知らせ】
2022年は全国でアーミッシュワンピースの展示販売会を開催します。ワンピースを試着して、その場でオーダーが可能です。ぜひご来場ください。
● 東京都国分寺市
5月13日(金)~15日(日) 東京都国分寺市「カフェスロー」 各日程11:00~17:00
● 宮城県仙台市
6月18日(土)、19日(日)宮城県仙台市「ブランチ仙台」
● 大阪
10月5日(水)~10日(月)大阪府大阪市「阪急うめだ本店」
● 熊本県南阿蘇村
10月熊本県南阿蘇村 詳細は決まり次第アップデート
● 福岡県福岡市
10月福岡県福岡市 詳細は決まり次第アップデート



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