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移住したい人みんなに伝えたい、”住める” 空き家がない問題// 移住STORY15【最終回】

日本中にどんどん増えている「空き家」。特に、田舎は少子高齢化のスピードが早く、わんさか空き家があるーー。そんな社会問題を耳にしていたので、私は移住前にこう軽く考えていました。
「数百万くらいの空き家を買って、ちゃちゃっと自分で修繕して住もう」なんて。しかし、現実にはそんなこと無理無理無理。
移住にあたって色々な物件を内覧したのですが、空き家の現実は甘くなかったです。
数百万で売りに出ている空き家は確かにあったのですが、そのほとんどは、以下のような課題がありました。

・サイズが小さくて二人以上住むには適さない
・もともと別荘として使われていたため、冬は寒くて住めない
・水回りを改修しなくてはいけない(→100万以上はかかる)
・ボロボロで汚くて、全面リノベーションが必要
・前の住民の持ち物が残っていて、素人だけでは片付けきれない

色々な空き家を見ながら思いました。リノベーション作業が好きなら、安い空き家を買って自分で手を加えるのも楽しいけど、時間とコストがかなりかかる。それならば、新築で建てた方が結果的に安上がりかもしれない、と…。

ヒエラルキーの頂点:すぐ住める空き家


そうなんです。空き家は実際にあるのですが、そのクオリティは玉石混交です。「すぐに快適に住める空き家」というのは、空き家ヒエラルキーの最も頂点に君臨しますが、こういう物件はよほどラッキーでないと出てきません。高山村でもたまにそういう物件が売りに出ることはありますが、価格は1000万円以上します。見ず知らずの土地で、いきなり1000万円の物件をポンっと買うのは、なかなか勇気がいりますよね…。そして、そもそもの母数が少ないです。それでも、自分のライフスタイルに合う物件が出る可能性はあるので、私たちも欠かさずチェックしています。そういう情報はまず不動産屋さんがキャッチするケースがほとんどのようです。我々は高山村の中澤不動産によくお世話になっており、新しい物件が出ると見学させてもらっています。

お片付けをすれば住めそうな空き家


最初に掲載した空き家の課題のうち、「前の住民の持ち物が残っていて、素人だけでは片付けきれない」というものに関しては、比較的解決がしやすいです。解決方法は、みんなでお片付けをすること。高山村では移住コーディネーターが年に数回、空き家のお片付けイベントを開催しています。このイベント、実はとても画期的な取り組みだと思います。空き家に長年保管されている生活道具を全部外に出して、分別して、トラックに積んで捨てに行くという作業は、一人や二人でこなせる仕事ではありません。専門の業者に依頼すると、それなりのお金がかかるので、「そんなにお金をかけるくらいなら放置しておこう」という思考になってしまう持ち主が多いのです。それならば、村が協力をして空き家のお片付けをして、移住希望者にお家を引き継いでもらおうと始まった取り組みです。つい先日も、お片付けイベントが開催されて、私もボランティアで参加してきました。

地域のボランティアさん、地域おこし協力隊員などが参加したお片付けイベント

今回のお片付けイベントでは、空き家のもともとの持ち主さんと、次に住む方(移住者さん)も参加しました。なんだか、感慨深かったです。前の持ち主さんと次の持ち主さんが一緒にお片付けをして、移住コーディネーターが架け橋になって……。こんなふうに、空き家の持ち主である当事者、地域の当事者、空き家にこれから住む当事者。この当事者達が具体的に行動することで、無事に空き家が引き継がれ、移住者が住む場所を獲得できる。このようなケースが増えていくと、空き家問題は少しは緩和されるはずです。

移住コーディネーターと、これから住む移住者さんと、前の持ち主さん

もともと別荘として使われていた空き家


高山村にも別荘地があります。別荘地というのは、たいてい寒い(涼しい)場所にあるのが常ですね。なぜなら住人は夏しか利用しないから。別荘そのものも夏仕様に作られていることがほとんどです。風通しが良くて、断熱材が入っておらず、窓のサッシも頑丈ではない……。そういう別荘に冬に住むのは、なかなか根性が必要です。実際、別荘は手頃な値段でよく売りに出ています。が、収納が少なく、部屋数も少なく、一年中住むには適さない物件が多いように思います。ただ、外観が素敵だったり薪ストーブが付いていたりと、「萌えポイント」が多いのも事実。実際、中古別荘を購入して、自分達で暖かくリノベーションをして素敵な暮らしを実現している友人もいます。そういう道もありだな〜と憧れます。

理想の住まいはいつ見つかる?


よくよく調べてみると、「空き家はあれどもすぐに住める空き家がない」という問題は、どの地方でも共通した課題のようです。そういう課題のある中で、良い物件に巡り会えたらもちろん幸運ですが、理想的な物件が出てくるのは半ば、諦めかけているのが現状の私たちです。実際最近は、物件を探すのではなく、新しい家を建てるための土地探しに移行しつつあります。これからどうなることやら……。これから移住を検討している方には、この空き家問題の現状をぜひ知っておいてもらいたいです。私たちはとりあえずすぐに移住するために賃貸という選択肢をとったので、移住後、定住地を探している今、この問題にぶち当たっています。なんとかこの課題を乗り越えて、理想の住まいを手にできますように……。

移住STORYは最終回。新連載がスタートします!


1年3ヶ月にわたって続けてきた本連載「山中麻葉の移住STORY」は、今回の記事で最終回となります。これまで読んでくれた方々、ありがとうございました! 移住1年目は何をしていても新鮮で、書きたい事が山のようにありました。そして、書いていてとても楽しかった! 少しでも移住希望者や高山村のことを知りたい人の役に立てたなら嬉しいです。
これからは、高山村の先輩移住者さん達の現在の暮らしに迫りたいと思います。移住とは、新しい土地に移り住むこと。移住を終えた人たちが、数年後、いったいどんなふうにこの土地に馴染み、何を感じ、どんな幸せを見出しているのか、はたまた何に苦労をしているのかーー。リアルな真実に迫りたいと思います。インタビューと執筆は、引き続き山中麻葉が担当します。みなさまもう少し、お付き合いのほどお願い致します。新連載は4月からスタート。ぜひ、お楽しみに。


山中麻葉 Maha Yamanaka
1984年生まれ。30歳を機にサラリーマン生活に終止符を打ち、ワンピースのオーダーメードのお店を起業。2021年夏、群馬県高山村に、夫と娘と移住。夢は、小さなアーミッシュ村をつくること。

> Down to Earth アーミッシュワンピースのお店
> instagram @shop_down_to_earth
> 著書「アーミッシュカントリーの美しい暮らし」

【お知らせ】
アーミッシュワンピース展示販売会
4月9日 熊本県南阿蘇村 お宿「青い空と白い龍」

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