見出し画像

後脛骨筋(Tibialis Posterior)

前回の長母趾屈筋に続き、足関節に関与する後脛骨筋についてです。

偏平足や足のアーチへの関係が深いことで知られている後脛骨筋。

他の筋との関係性も整理しつつ、臨床で使えるように学んでいきましょう!

後脛骨筋の起始停止

画像1

画像2

(Visible bodyから引用)

起始:脛骨、腓骨、下腿骨間膜
停止:第2~4中足骨底、舟状骨、3楔状骨、立方骨
支配神経:脛骨神経L5~S1(2)
作用:足の底屈、内がえし
(基礎運動学第6版)
起始:下腿骨間膜の後面上半と脛骨、腓骨のこれに接する部分
停止:腱となり足底の内側部で舟状骨粗面と内側楔状骨につくほか、分かれて載距突起と舟状骨粗面との間を斜走し、中間・外側楔状骨、立方骨、第2~3中足骨底などにも至る
支配神経:脛骨神経L5~S2
作用:足を内反し、足底側に曲げる
(分担解剖学1総説・骨学・靱帯学・筋学)
起始:
 内側部:骨間膜の後面、脛骨後外側面とヒラメ筋線上方の間、骨幹部の下位1/3と中央部の間
 外側部:腓骨後面の上2/3、深部横筋膜、筋間中隔
停止:舟状骨粗面、載距突起先端と遠位端を結ぶ腱束を含めた内側楔状骨の足底面、距骨を除くすべての足根骨、第2~4中足骨底
支配神経:脛骨神経L4~5
作用:足関節底屈、足部の回外
(オーチスのキネシオロジー第2版)

起始も停止も多く、少し複雑ですね。

それだけ多くの部位に影響を与えている筋とも言えます。

距骨を除くすべての足根骨に付着を持ち、足部の底屈、内がえし作用を持ちます。

舟状骨を上方向へ引き上げる作用があることが、内側縦アーチを構成する筋といわれている理由です。

筋機能

画像3

後脛骨筋は長趾屈筋と前回解説した長母趾屈筋を含めて下腿後区画の深層筋として分類されます。

その深層筋の中では生理学的断面積は他の2つの合計よりも大きいことがわかっています。

後脛骨筋は距骨下関節回外モーメントアームが前脛骨筋の約3倍という報告もあることからわかるように、距骨下関節の主要な回外筋です。

また、足根骨に広範囲の付着を持つことから足部全体の回外にも作用しています。

足部の内側縦アーチを作ることで有名な後脛骨筋ですが、
静的なアーチの形成は主に靱帯による支持性によって達成されます。
(ばね靱帯、長・短足底靱帯など)

これに対して後脛骨筋は歩行などの動的な場面において、
足部の支持性を補強しています。

歩行では初期接地と立脚後期に2峰性の活動を示します。

初期接地では荷重による距骨下関節の外反を制動するために、
立脚後期では内反によって足部の剛性を高めて力の伝達効率を高めるために働いていると考えられています。

PTTDについて

画像4

後脛骨筋の機能低下は、PTTD(後脛骨筋機能不全症)として知られています。

今回はそこまで踏み込みませんが、簡単に解説していきます。

PTTDは後脛骨筋が様々な理由で機能不全になった状態です。

症状は色々ですが、主なものとしては
・片側性の偏平足
・足関節内側に疼痛や腫脹
・つま先立ちでの疼痛、またはつま先立ちができない
・足部の変形
・階段やでこぼこ道での歩行が困難
などがあります。

ステージ分類としては、PTTDを最初に報告したJohnson(1989)が分類した方法が現在でも使われています。

1期:後脛骨筋の腱鞘炎のみで変形なし
2期:徒手的に変形を修正できる偏平足
3期:徒手的に変形を修正できない偏平足
4期:外反型変形性足関節症を伴う偏平足

最近では2期を前足部の変形の状態によってさらに細かく分類している報告もあります。

リスクファクターとしては、
・肥満
・糖尿病
・高血圧
・外傷(足首内側の骨折など)
・ステロイドの局所注射
・リウマチなどの炎症性疾患
・腱内の血管機能不全
などが報告されています。

PTTDは足部全体の障害なので、物理療法や薬物療法などの対症療法だけでは解決しないことがほとんどです。

なぜ後脛骨筋に機能不全が生じたのか、評価から原因を考えることが大切です。

筋膜連結・経絡

こちらは長母趾屈筋とほとんど同じように考えられるので、こちらをご参照ください。

後脛骨筋の周辺組織

画像5

(Visible bodyより引用)

これまでも述べてきた通り、下腿後面の深層には長母趾屈筋、長趾屈筋があります。

それらと並走するように血管と神経がアキレス腱内側を通り足底へ向かいます。

後脛骨筋は内果の後方で比較的容易に触診可能ですが、
治療の際は血管や神経の走行に気をつけましょう。

また、足底では多くの足根骨に付着するため、内在筋や靱帯との位置関係も確認しておくと足部の変形に対して考察が深まります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

足部の内側縦アーチに関与する後脛骨筋。

実は動的な関与が大きいこと、足部全体のアライメントから影響を受けること、PTTDについて概要を把握することができたら今回の記事の内容は落とし込めたと思います。

それではまた来週!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

各種SNSでも情報発信していますので、よろしければこちらもフォローお願いします!

Twitter
instagram
Facebook

トレーナー仲間で日々の気付きをブログにしています。
ご興味あれば覗いてみてください。
《心のストレッチ》ブログ

心と身体のつながりを日々検証し、共有するオンラインサロン、
《心のストレッチ》心身相関Labもぜひご覧ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?