しゃべる神様【ショートショートnote杯】
忘年会からの帰り道、人気のない路地で、とある露店に立ち寄った。
「これは持ち主の願い事を叶えてくれる、言わば神様みたいな代物なんじゃ」
俺は胡散臭さを感じつつ、それでいて合コンのネタにでもなればと、その神様……もとい象によく似た置物を購入した。
別れ際、一万円札を握りしめた老爺が、俺に妖しく微笑みかけ、
「毎晩、寝る前に一度、この置物に願いを乞うてごらんなさい。数日後、あなたは必ずやワシに感謝するはずじゃ」
実は、俺は昔、芸能界を目指していた時期がある。もし老爺の言葉が本当だとするならば、これはかつての夢を叶える絶好の機会かもしれない。
思い立ってからは早かった。
「神様、俺をスターにしてください!」
十日目のことである。
「スターって、君も変わり者だねえ」
「え?」
刹那、視界一面を覆った光。悲劇を悟ったのは数秒後。
「うわあああ!」
こうして、晴れてスターに――星になった俺は、今宵も夜空から、あの老爺の妖しげな笑みを照らしている。
オーイエーアハーン!