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スポーツビジネスはスモールビジネス型からスタートアップ型へ

スポーツビジネスに限らずビジネスにおいて「スタートアップ型」と「スモールビジネス型」があります。起業や独立の大半はスモールビジネス型であり、日本のほとんどの企業はスモールビジネス型です。

起業家は、イノベーションを通じて、人々の生活や社会を変えるために起業し、しっかりとしたビジネスモデルもないなかを模索しながら新しいビジネスモデルを開発し、成長を目指します。 

スタートアップ型は「世の中の課題や問題を今までに無いイノベーションを起こし解決したい」という社会貢献を目的にし、資金調達をして、即戦力の人材で構成されている組織が短期間でのエグジットを目指すことだと言えます。人的・時間的コストを削減しやすいIT・インターネット業界での立ち上げが多いのが現状です。

一方でスモールビシネス型は少数の人数で限定的で少数の人の課題解決や価値提供をします。自己資金や融資で資金を集め、給与を支払い徐々に人数を増やして成長を目指します。

ちなみにベンチャーは、一般的に成長が見込める事業を持ち、個人投資家やVCなどから資金提供を受け、企業規模を拡大している企業、または株式の上場を目指す企業のことを言います。スタートアップとは若干違う側面があります。

今のスポーツ業界には、より短期的に爆発的な成長を目指すスタートアップ型のビジネスと思考が必要とされ、それができる企業(組織)が必要だと思っています。

Temporary organization designed to search for a repeatable and scalable business model.
再現性と拡張性のあるビジネスモデルを模索するために設計された一時的な組織
(スティーブ・ブランク氏の定義)


スモールビジネスとスタートアップ

スモールビジネス型の大半は、すでに存在している市場に向けてビジネスを行います。たとえば、飲食店、美容室、整骨院、コンサルティングなど、すでに多くの同業他社が存在します。つまり、すでに需要が存在することが確かめられている証拠でもあるわけです。

今のスポーツ業界には「スタートアップ型」がより必要だと言いましたが、スポーツ業界の課題からしてもスモールビジネス型だと難しいということがわかります。

【スモールビジネス】
すでに市場が存在することが証明されている。市場環境の変化は少ない。労働力の調達とサービスの消費される場所は限定される
【スタートアップ】
市場が存在することが証明されていない。不確実な市場環境。タイミングが重要。労働力の調達とサービスの消費があらゆる場所で行われる

この考え方、特徴こそがスポーツビジネスにおいて圧倒的に必要なものだと考えています。

スモールビジネス型は「すでに市場が存在することが証明されている」のであれば、スポーツにおいて市場が証明されているのは、スポーツ用品、小売、アウトドアスポーツ、競馬競輪、などがあります。スポーツの領域では比較的大きな既存市場であります。

これらの領域で視点を変えてリプレイスしていくとしても、スポーツ領域で全く新しい事業モデルを考えた場合、スタートアップ型の思考でなければ上手くいかないと思っています。

すでに市場が存在することが証明されていると考えられるとしたらどこの市場であり、どの領域なのか?スモールビジネスにおいて「どこで何を」は非常に重要です。そしてその領域での経験と知識があるかないかも大きく左右されます。

市場の捉え方としてあるサービスのTAM(Total Addressable Market)に対して、あなたのサービスのSAM(Serviceable Available Market)のなかでどれだけのSOM(Serviceable Obtainable Market)が獲得しているのかという視点から考えれます。


あるサービスにおいて、スポーツ版〇〇はスモールビジネス型になるのか?と問われれば市場が存在することが証明されればそうと言えますが、スタートアップになるかと問われれば、ならないと答えるのが普通です。

スポーツ市場でなにかやろう新規事業を始めたとしても同様です。ドメインをスポーツに設定した時点で市場はスポーツ市場になり、その中で領域を決めるとより小さくなります。その小さなパイの中でどれくらいのシェアが取れるのかを考えた時に、仮に20-30%のシェアではかなり小さくなるのでいかに独占できるかが重要になります。

TAM:①あるサービスの全体の市場 ②スポーツ市場
SAM:①スポーツ特化の市場 ②スポーツのなかでの分野領域の市場
(例①)TAM:TikTok SAM:スポーツ版TikTok
(例②)TAM:アパレル SAM:スポーツアパレル

既にあるサービスをスポーツ市場でやるということとスポーツ版の〇〇サービスをつくるとでは大きく違いますが、結局スモールビジネスとしての考え方になります。そしてスポーツに親和性の高い領域やサービスの対象をニッチから広げようと考えることで成長戦略を考えます。

どちらにせよこのままだとスモールビジネス型の考え方だと産業として市場が大きくなりません。というのもスポーツ市場はほとんどの領域において「すでに市場が存在することが証明されていない」のでスモールビジネス型すら成り立たちません。故にスタートアップ型の思考で新しい価値の創出をし、新たな市場を作るために利益を生み出せるビジネスモデルをスピード感をもって拡大し、市場の独占をしないといけません。

スタートアップ型への変換

弊社も創業してから4年間、スモールビジネスをやってきました。その理由はスモールビジネス型がスタートアップ型よりも自分たちのビジョン実現には必要だったのと、なんの能力もなかった自分たちの経験値とフェーズも少なからず影響していたからです。

弊社の事業領域の1つにスポーツ専門職にフォーカスした事業がありますが、これはスモールビジネスといえます。スポーツ専門職の育成と専門職のマネジメントを軸にやっていますが、このビジネスは論理的構想であり時間をかけて成長するものです。

例えばスポーツ専門職の育成は、既存だと大学専門学校などの学費がある程度の大きな市場となっていますが、こちらをリプレイスすることで市場を獲得しようとしてます。また参考にしているのが、既知なビジネスモデルとして”エンジニア”を対象にしたビジネスモデルです。

エンジニアの育成については、スクールとしてはプログラミングを教え、育成した生徒たちの独立や転職の支援、そしてSES(System Engineering Service)などから、今のビジネスモデルを構築してます。スポーツ専門職の育成をし、彼らをマネジメントし、企業や選手にそのスキルを提供しています。

プログラミングも資格が存在するわけではないので、ポートフォリオやスキルチェックで能力を判断されます。私たちは同様にスポーツの専門職の実力(専門スキル)の可視化に挑んでいます。選手と同じく定量・定性のデータを蓄積し、能力を可視化することで「資格<実力」で判断ができるようになります。そうすることで資格をとることを目標とせず、実力をつけるために何をすべきかを考えます。

実際に弊社でエンジニアの採用をしたときもスキルチェックを専門家にお願いしたのですが、スポーツ専門職には現状それがほとんどないので、仕組み化し、企業や選手に信頼を持って繋ないで行こうと考えています。

スモールビジネスであればある程度の市場がみえるので、数十億円が見込めますという話ができますがスポーツではほとんどの領域において小さな金額(市場)になってしまいます。

故にスモールビジネスだけでは会社の成長がビジョン実現において厳しかったので、弊社も労働力の調達とサービスの消費があらゆる場所で行われるスタートアップのビジネスモデルを創業以来ずっと考え続けていました。そしてサービスをいくつか仮説検証し挑戦してきました。

【スポーツにおける新規事業】
・男女のマッチングアプリ「Tryste」 → 撤退
・マッチングサービス(BtoC、CtoC)
 ①トレーナー → 検証→ 課題あり → 仮説
 ②指導者 → 検証 → 課題あり
 ③栄養士 → 検証
・スポーツ業界の採用プラットフォーム「MERCI」 → 検証 → 方向転換 
・スポーツアパレル(パンツ)のDtoC 「ERGONO」→ 検証 → 課題あり
・スポーツチームと企業のマッチング(BtoB) → 仮説 → 課題あり
・選手のマネジメント(エージェント) → 検証 → サポート事業へ
・スポンサーセールス →  検証 → スモールビジネス
・企業のアクティベーション →  検証  → 条件次第
・身体スキルのAI分析サービス → 検証
・スポーツインシュアテック → 仮説
 etc

これらの新規事業に挑戦して感じたことこそが、スポーツという市場は、その市場が存在することが証明されておらず、不確実な市場環境だということです。

しかし、得れたものは非常に大きなものであり、挑戦のプロセスのなかで1次情報に触れ、スケールするのかしないのか、しない原因は産業構造なのか、文化的理由なのか、なにがボトルネックになってるのかなど、スポーツの価値や競技の面白さといった定性的な概念での判断ではなく消費行動のなかでの判断をしてきました。

【実施したプロセス】
 ①仮説を立てる→調べる。聞く。
 ②検証する→1次情報に触れる。
 ③課題を抽出する→言語化と構造化
 ④再度検証する→効果をはかる
 ⑤周囲を巻き込む→組織をつくる(2人以上)

これらはスモールビジネス型を継続してるからこそ見えてくることも多々あります。小さく仮説検証をくり返すことで、どうやったら新しい価値創造ができるのかを考えることができます。いきなりスタートアップよりも確実に見えてくる世界、自分たちだけが知る事実を見つけれると思います。

不確実な市場環境にはチャンスがある

投資家、VCにプレゼンするとき、スポーツビジネスの話をすると、たびたび「それお金だすかな?」「マネタイズはどうするの?」「利益でるかな?」「市場規模は?」と聞かれることが多いわけです。そしてその答えを用意すればするほどだんだんとスモールビジネスになっていきます。

しかし、スタートアップ型の思考を持ち続けていくことこそ今のスポーツビジネスにおいて必要なのではないでしょうか。破壊的イノベーションで新たに市場を創造し、初期段階では赤字が続くことも多いが成功した場合、巨額のリターンをえるような考え方こそ日本のスポーツ界で何十年と続く不を解消することができると思っています。

新型コロナの影響によりこれからの日本経済や生活が大きく変わります。これまでの歴史からもそういった状況から破壊的イノベーションが生まれ、たくさんのスタートアップが生まれました。

ウィルスというスポーツ活動にとって大きな影響を与える直接的なものと、それに伴う経済変化、当たり前の変化にチャンスがあるはずです。頭の中で思いついたアイデアに価値はありませんが行動の中で気がついたアイデアにはきっと可能性があるはずです。

これからはハイリスク・ハイリターンのスタートアップ型で挑むことでスポーツ界のスタートアップという果てなき荒野を越えていけると思っています。弊社もスタートアップへの変換にむけて大きく舵をきっていきます。

自分にしか発信できない、スポーツに関わる全ての方にとって役立つ情報をGiveし続けたいと思います。