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0円Jリーガーとプロ契約してわかったアスリートの費用対効果

今年の1月21 日にJ3のYSCCに所属する安彦考真選手とプロ契約をしました。この契約を実際に思ったことについてまとめたいと思います。アスリート側に向けて書いてないので少し分かりづらいかもですが、ご了承下さい。

なお弊社はAscenders(アセンダーズ)株式会社です。

安彦さんには、8ヶ月間、現役の選手として活動しながら、弊社の一員として、役職は「プロサッカー選手」として働いてもらいました(名刺も渡してるけど使ってるかな?)。契約に至るまでには、安彦さんと1年にも及ぶコミニケーションから、ビジョンの一致、信頼関係、そしてプロ契約しても、契約金以上の価値を生み出せるか実験しようという話から契約に至ったわけです。安彦さんが0円Jリーガー(実際の年棒120円)の理由には弊社の存在もあります。

スポーツ選手の多くは、個人事業主です。つまり、契約形態は安彦考真という個人事業主と、いわゆる業務委託契約を結び、弊社の望む結果を出してくれるであろうと、期待しての契約です。

サッカー選手としてサッカーで結果を出してもらうのは、クラブとの契約です。もちろん弊社も応援と期待はしていますが、Ascendersの望む結果はプロサッカー選手としての価値を使って、どういった新しい価値を生み出し、会社の利益に貢献できるかという話です。

弊社は安彦さんを「広告塔として」ではなく、求めるのは「Ascendersの業務」をこなしてもらうということであり、それはクラブも弊社も同じ仕組みだと思います。だからプロ契約なのです。結果が出なければそれは報酬や契約に左右するということです。

求める業務はざっくりいえば、Ascendersの既存事業の拡大、企業価値の向上、さらには安彦さんと、または彼のステークホルダーたちと新規事業の立ち上げなど、つまり会社の成長や売上に貢献してもらうことです。

結果として、良かった点(期待通り)は会社の話題性や人脈による恩恵、悪かった点(思い通りにいかなかった)は業務のパフォーマンスでした。ここでは定性的、定量的2つの評価をしていきます。なお弊社と安彦さんの関係値とかから、忖度なしでガチでいきたいと思います。どっちが悪いとかの話ではなく、お金を払ってる側としてリアルを書きたいと思います。



サッカーについては特にないです。頑張ってください。



さて、安彦さんはSNS、特にTwitterでは影響力はまあまあだと思います。数はそんなにいませんが、フォロワー層や、過去のクラウドファンディングでの実績、日々の投稿をみればわかるが、きっと活かせるものであると思い、オンラインサロンにしてクローズドにしてみたら、もっとよいのではと思ってつくってみました。



オンラインサロン+リアルなコミュニティとしてのサービスだが、運営してみると、自社の場合4年ほどやってきたのと、わりとうまくいってるので自信があったが、プロデュースとなると話は違います。

オペレーションの難しさ、本人がやるのか、運営がやるのか、ターゲットに対してサービスコンセプトが合ってるのか、など思いのほか難しく、安彦さんの想いや、性格を考慮しながら中身を変えたり、金額を変えたり、まだまだ安彦さんにもユーザーにとっても使いやすい設計にするには時間がかかっている。今も試行錯誤していて、一般的な流行は当てはまらず、今は完全な動画シフトを考えているところです。

SNSの属性で言えば、分析したところ他の数人のJリーガーと比較しても、40代の比率が非常に高く、普段から同世代(おじさん)に向けて発信するものの、実際のCVRは若者の方が多かったので、サロン(コミュ二ティ)もそれに合わせて40代向け、若者向け2つの設定をしました。



3つのコースに分けた上で、現在ABIKOサロン57名、安彦塾2名、スポンサーサロン0名という結果になりました。それぞれの金額を支払うと何ができて、何ができないのか、ベネフィットがなにかをしっかりと伝えきれてないと反省し、検証しながら運営しているところです。

ちなみにクローズドなコミニティにこだわったのはキングコング西野さんの記事にも書いてありますが、安彦さんにもSNS離れ(使用目的と用途)を変える意味でも立ち上げました。安彦さんはよくTwitterでバチるので...(笑)


次はあれをする、その為にはこれをするっていう建設的な話ができるので。それをTwitterとか世間に投げちゃうと、理解が追いつかない人達が自分の自我を守る為に、「なに言ってんの」「また逆張りして」「炎上商法ですか」と言い出すわけで、シンプルに面倒臭いんです。


某Jリーガーの会員制のコミュニティが炎上していましたが、何が目的で何をしたいのかが重要です。安彦さんにもアンチ、ノイジーマイノリティがいますが、支持層が一定数いるのもすでにデータであります。その属性がどんな人間か分析し、判断する必要がありました。

安彦さんが求めているのはファンではなく、社会的課題に対しての訴えと仲間集め、そして解決です。そこにファンとの境界線をつくることも重要でした。共感するなら一緒に訴えていこうぜってものです。

はじめ安彦さんのフォロワーがYouTubeチャンネルの開設やコミニュティでいろんな施策を打ってほしいと思ったものの安彦さんのファン、フォロワーはそういった属性ではなかった。コミニュティである以上、メンバーがもっと自発的に生み出す仕組みにしないといけません。

その辺、オリエンタルラジオの中田さんや西野さん、堀江さんなど、すごくうまくやっているんだろう。安彦さん本人とメンバーが作っていく中で弊社がサポートに回る仕組みが必要でした。単純に知名度やカリスマ性は比じゃないですが。

安彦さんの意思としては「堀江貴文イノベーション大学校」に近い『安彦塾』は自発的にいろいろやっていく、安彦さんが特に挑戦してほしいと思うのは40代前後の同世代にむけたもので、おっさんが当たり前に挑戦できるようなコミュニティ。安彦さんがその背中を押したり、方法ノウハウを教え、言い訳をなくし、40代世代の強みを活かしたコミュニティにしていきたいと。そしてそれを『安彦サロン』で若い世代に共有し、伝えていくことで若者のチャレンジを後押したい。「40のおっさんもこんな挑戦してるぞ」という想いでした。

想いと、やりやすさ(結果が出やすい)はまた違うのは重々承知ですが、想いを具現化するのもプロデュース側の使命でもあります。結論、セルフプロデュースとプロデューサーは全くの別物であるということです。

とはいえ、結果には拘りたいので、新しいサロンメンバーと共に開拓していきたいと思ってます。安彦さんの想いに共感した人はぜひサロンへ。


サロンメンバーに興味がある人は

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定性的評価

定性的な面でいうと、共通の話題や、人の繋がりが大きかったです。営業先、パートナー先での話題はかなり多く「安彦さんの件で知りました」などの声もありました。また安彦さんを通じてAscendersを応援してくれる人もいました。安彦さんが"0円Jリーガー"や"Jリーグ最年長デビュー"などの話題を記事としての取り上げられたことも大きかったと思います。

さらには”プロ契約”ってなんだ?みたいな話題性など含めて、最初の利点は大きかったです。一過性の利益はその人の知名度、影響力が高ければ高いほど良いと思います。契約したことが他のJリーガーとの交流や、関心なども信頼につながりました。


定量的評価

「定量」については、いくつか数字をもとに評価すると、まず安彦さんとの契約は年間240万、源泉徴収、弊社のパートナートレーナーのサポート費用を1万円/月を(トレーナーに渡して)引いた額を本人に毎月、支払っています。講義やイベントなど数回の実務があり約20万円分の労働はしてもらいました。今後の業務を考えても40万は労働費として換算できます。

安彦さんのTwitterには6913人のフォロワーがいます。それに加えて、安彦さんには熱狂的なファンがいると判断(仮説)し、ファン会員サービスを実験的につくりました。ここにいるコアファン5%(約300名)に向けたものでした。こちらは思い通りにはいきませんでした。SNSで本人投稿してもらったが、実際は0.4%しかコンバージョンせず、反応率は3%ほどでした。

定量的な評価でいうと、期待していたよりは得れないが、60万(5万/月)くらいの実務は、競技をしながらほぼ全てのアスリートが確実にできるのと、それに広告効果があるのではと思いました。広告価値は競技のメジャーマイナーに影響を受けますが、実務は関係ないと思います。それに+アスリートの特殊性を定量化するには、詳細なスケジュールと管理、業務が必要になると思います。企業側には親和性や業界一致が必要かもです。


新規事業

新規事業として、安彦さんとは”ゼロスク”という新サービスの立ち上げもしました。ゼロスクは”0円”で受けれるオンラインサッカースクールです。住んでる場所も、カテゴリーも幼児からシニア世代まで全ての人に、お金に縛られず誰でも受けれるスクールです。しかも一方通行なコンテンツ押し付けのものではなく、ユーザーが選んで、考えて、実行するオンラインスクールです。しかも講師は全員現役のプロ選手というサービスです。

こちらは、安彦さんが指導者をしていた頃の違和感「なぜみんなが同じ練習をして、同じことを学んでいるのか?ポジションも経験値も、それぞれの課題も違うのに」という疑問、怒りから生まれたものです。



これはビジネスモデル含め、かなり面白いサービスです。興味あるプロ(トップ)スポーツ選手はやりましょう!サッカー以外もできます。

プロ選手数名が講師登録してくれて、オープンして数時間で100人近くの登録がありましたが、諸事情により停止しました。現在は諸事情で起きたことを理解し、再開の計画のために、サービスの改善と体制を整える用意をしています。

クラブには理解されるのに時間がかかりそうなのと、選手たちには普段からしている自主練を撮影してアップロードしてもらうまでをしっかり定着させるまでオペレーションをすること、何より選手にどんなベネフィットがあるのかを伝えないといけません。個人として稼ぐことも、資産にもなるし、クラブにもベネフィトがある仕組みです。

ゼロスクについての詳細は別のnoteで書くとして、選手が自発的にやるサービスはかなり難しく、オペレーションがだいぶ必要だとということです。逆に言えば、これができ、周囲にもさせれる選手は稼げると思います。できる選手がいたら声かけてください。

安彦さん以外にも複数の選手と契約してみて思うことは、選手のプロ契約(それに近いような契約)については費用対効果はすこぶる悪い、その理由は、費用対効果を広告塔だけで考えるなら、一定のセグメントに影響力のあるインフルエンサーのがよっぽど高く、協力的なYouTuberとかのが費用対効果はきっと高いでしょう。スポーツのトップオブトップにしか広告塔にはほぼならない。企業において、人材を雇う方が利益になるのでプロ契約という形は取らないでしょう。

スポーツだけやる広告塔には現代社会においてほぼ意味はなく、ファンエンゲージメントを高めることが重要なときに、最も効果を発揮するのは所属やオーナーシップを発揮することなのではないかと思いました。(この辺は長くなるので別の機会に書きます)

選手の価値はやはり特殊、故に難しく、今回も1回目の契約した利点はあたったにせよ、1回目の恩恵を失うと、継続するには厳しくなる。契約する企業側が、選手の特殊価値に相乗効果をもたらす事業や仕組みを持っている、または作ることができれば継続は可能でしょう。

こんなアスリートはプロ契約したいなと思うのはまた別の機会に書きたいと思います。ただ、選手と一緒に起業し、仕事を分業して事業を成長させエグジットさせるまでやりたいなと思ってます。この話が理解できて、リスクを背負ってチャレンジできるアスリートは契約したいなと思います。

今回やってみて、確実に思ったことは、広告塔や影響力だけのアスリート価値は圧倒的に弱まり、特定の企業と一緒に、企業を成長させようとする、できるアスリートはこの先、お金には絶対に困らないと思います。企業の売上に直結できること、企業ができないこと苦手なことをやれるか否かが重要です。

そのためにはその企業のことを社員と同等レベル以上に理解し、一員となって役割を担うことが必要です。これが意識(+仕組み化)できればトップ選手におけるセカンドキャリアの問題はもはや問題ではないと言えると思います。教育は必須だと思いますが...出会いと環境だと思います。


バックエンドの設定が重要


やりたいことやっていいですよだけでは限界があります。

アスリートはその存在自体が※フロントエンドなりえます。アスリートに限らずかもしれませんが、その人が自分の※バックエンドに集中する状態を設計してあげるのが重要だと思いました。

安彦さんは特に色々したがるし、しちゃう人なので、素晴らしい活動でも収益や資産には繋がらないことが多いです。また選択と集中ができれば、結果にコミットしやすくなります。その導線を設計するのが必要です。

※フロントエンドとバックエンドとは

バックエンドがないと色々やったところで、続かないし資産が貯まらない。

バックエンドはオンラインサロンでもなんでもいいですが、これをつくることで安心と安定したキャッシュフローを生み出します。ここれをアスリート1人で作ろうとなると、その大変さが身にしみます。

ゼロスクのアイディアもそうですが1チーム、1選手ではその集客力も収益率も効率性も低すぎて、でも1つでやろうとする人は絶えません。その結果、継続できない例は多々あります。


選手の価値を様々な形で仮説検証しながら作っています。まだまだ挑戦段階ですが。我こそはできるぞって人いたら会いたいです。

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来年の契約は...
他の企業への移籍とかも面白いけど移籍金は発生するのかな?例えばオンラインサロンやサービスそのまま譲渡みたいな。それはそれで面白いけど。笑

1年で結果出しましょうと安彦さんと契約時にも話しているので前半の反省や結果を活かして後半も挑んでいきたいと思います。弊社もまだまだなので、結果で示したいと思いますし、安彦さんにもガンガン要求したいと思います。

この新しい契約がスタンダードになる未来のきっかけになればいいなと思います。アスリートに伝えたいことは社会ではなく会社に貢献できる能力のある人はお金に困らないということです。toC課金でもtoB課金でもいいので、”利益に貢献できる能力”を身につければ良いと思います。手段ばかりに目が行き過ぎると失敗すると思います。

 

まとめ

プロ契約は手段としてあり
この契約のモデル自体はありだと思います。適正な金額とコミットメントしたい業務を定めて、マネジメントできれば良い手段になると思います。

広告費用対効果は低い
広告としてとか露出やリーチを追うだけなら、費用対効果は悪い。ファンエンゲージメントやどれだけの人がその企業のファンになるかが重要。広告のあり方の変化もあるので、これ自体はそこまで課題ではない。ただ、事実としてない。

所属意識が大事
これはカルチャーフィットという意味で言えば1番大事。契約した会社の一員なんだという考えと行動が日頃からできるか否か。他のチームや企業と契約していたとしても、ここは自分の所属している会社の一つだと思って発信、行動してるかは大事。

セルフプロデュース
これはある方がめちゃめちゃ強いし、求められるスキルである。パーソナリティが重要な時代において、自分をプロデュースできるか否かは周囲のマネジメントのし易さをそのまま影響します。

バックエンドの設定
バックエンドを持つことが大事、これがないと本当に大変。絶対に作るべき。追うべき数字、KPIを決めるのにもこれがないと迷走する。

事業対効果がある選手は強い
契約する企業の売上、利益に貢献できる能力スキルを持っていれば、企業はいくらでも“仕事”をくれます。能力スキルが何かを理解して、鍛えていくしかないです。


アスリートベンチャーズ

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