エンジニアにとってのリモートワーク考

株式会社iCAREでVPoEをしております安田と申します。この記事はiCARE Advent Calendar 2020の一日目のエントリとして書かれています。

今日は、エンジニアにとってリモートワークとオフィスワーク(対面による仕事)がどう異なるか、特にリモートワークの困難さについて書いてみたいと思います。今日は、エンジニアにとってリモートワークとオフィスワーク(対面による仕事)がどう異なるか、特にリモートワークの困難さについて書いてみたいと思います。というのも、今年はコロナの流行によって世の中にリモートワークが一気に増えたこともありますし、弊社iCAREでも緊急事態宣言下では全社的にリモートワーク化したり、その後も社員には週1回のリモートワークを許可したりしたことで、少なからずリモートワークとオフィスワークの利点、欠点について考える機会がたくさんあったからです。というのも、今年はコロナの流行によって世の中にリモートワークが一気に増えたこともありますし、弊社iCAREでも緊急事態宣言下では全社的にリモートワーク化したり、その後も社員には週1回のリモートワークを許可したりしたことで、少なからずリモートワークとオフィスワークの利点、欠点について考える機会がたくさんあったからです。とはいえ、弊社は全社的にフルリモートにしているような環境ではなく、あくまでオフィスワークを中心として一部リモートワーク化している環境ですので、そういう前提の上でリモートワークとオフィスワークの違いについて考察したいと思います。

すでに上記しましたようにここからは、リモートワークとオフィスワークの利点、欠点を列挙するのではなく、リモートワークはなぜ難しいか?という点にフォーカスして議論をしたいと思います。公平性を欠いた議論だと思われるかもしれませんが、自分の素直な所感をまとめると、議論の焦点はどうしてもそこに落ち着いてしまうためです。
もちろんリモートワークを否定するつもりもありません。誰もが主張するように、通勤時間をなくせる、作業にも集中できる、場所に限定されずに採用できる、等たくさんのメリットがあると思います。ただリモートワークでは、対面コミュニケーションより高度な(あるいは大きく異る)コミュニケーション能力を必要とし、より多くのコストを必要とするということは間違いないことのように思われます。なので、そこさえうまく克服できるのであれば、リモートワークのほうがより生産的であることは可能だと思います。

以下、いくつかの論点を列挙してみます。

1. 対面に比べてコミュニケーションの不全感がある
2. コミュニケーションコストが大きい
3. オンラインコミュニケーションでは原始的欲求を満たせない
4. オフィスワークには同じ空間を共有することでの安心感がある
5. 利害を大きく異にする人(例えば他部署)とのコミュニケーションの困難さが増す

以下、それぞれについて詳細に考えてみたいと思います。

対面に比べてコミュニケーションの不全感がある

リモートワークの議論から少し離れますが、緊急事態宣言後、オンライン(ビデオ通話)で面接をすることが増えています。
iCAREの場合、オフィスワークなので、最初にオンライン面接をした後、2回目以降の面接は来社してもらっての面接になるのですが、2回目以降の来社の際にいつも思うことは、大体オンラインの印象と大きく異なるということです。オンラインの印象とほとんど変わらないな、と思ったことは殆どありません。だいたいにおいて
「あれ、こんな人だったのか」
と少し驚きがあります。
また、オンライン上でしていた話と内容そのものはほぼ同じ話を来社の際にされることがありますが、このときも同じ話を同じ印象で受け取ることはない気がします。
文字情報に還元した場合、情報そのものはほぼ同じなのですが、大体において来社して聞いた話に対してのほうが、いろんな意味で自分(話を聞く側)の「感情」が大きく動かされます。
逆に言うとオンライン上の会話はどうしても平板になりがちな気がします。
もっとはっきり行ってしまうと、オンラインでの会話では、快不快を感じることが非常に少ないです。
その一方で対面での面接は快不快は顕著になります。相手の小さなリアクションに気づけてしまうのです。
対面の時に相手に何かを言って「あ、この人今少しいらついたな」とか「あ、空気変わったな」と感じることはよくありますが、オンラインではなかなかそのような気付きは難しいです。

このことが示唆しているのは、オンラインでは最も情報の豊富なビデオ通話でも感情の機微を捉えることが難しいということです。
感情の機微を捉えることが難しいということは、コミュニケーションの微調整が難しいということであり、ひいてはコミュニケーションの快適さを最大化することが難しいということになります。このことは相互の信頼感の醸成の上で大きな障害となります。

当然ですが、そうした微妙な情報量の減少に加えてもっと顕著な技術的な問題も乗っかってきます。
ネットワークの遅延による不快感、マイクから離れた話者の声の聞き取りにくさ、画面外の情報の共有の難しさなどなど。
エンジニアは、そうした問題を技術的に解決するのに長けてはいますが、技術的に解決できない領域は大きく、それらは不可避的にコミュニケーションの質を押し下げることになります。

コミュニケーションコストが大きい

先の議論では、対面の会話とビデオ通話の比較をしました。
業務をすすめる上ではビデオ通話みたいな、仰々しいコミュニケーションではなく、「ちょっとした」コミュニケーションが大量に発生します。
この時、オフィスワークであれば、コミュニケーションの性質次第で、Slackのようなテキストメッセージングツールを選択したり、ちょっと席を立って話しかけに行ったりします(近ければ席を立たずに声をかけられます)。

このときもリモートワークでは、テキストメッセージングツールにコミュニケーション手段が限られることになります(ボイスチャットとか他の選択肢もあるとは思いますが、基本的にはテキストメッセージやビデオ通話と変わらないので割愛します)。

ところで、テキストメッセージングツールは対面通話とコミュニケーションコストが変わらない、ということはあり得るでしょうか?
ケースによってはあると思いますが、大体のケースにおいてテキストメッセージングのほうがコストが大きくなると思われます。(エンジニア界隈では、隣席の人と対面で会話せずにSlackでやり取りをするという話もちらほら聞くので、このあたりは異論のある方もあるかもしれません)

人間は他人とコミュニケーションをとる際に、実は結構大きな心理的労力を払っています。
対面の会話でも心理的労力を払いますが、テキストメッセージングでは更に大きな心理的労力を払っている気がします。
例えば、Slackに文章を打ち込みながら、
「この表現を使ったら相手の機嫌を損ねないか?」
「もっと相手のモチベーションをあげる表現にした方がいいな」
「この表現は相手の気分を害するかもしれないから、なにか絵文字をいれよう」
とか常に考えながら、メッセージを打ち込むことになります。
あと送信したあとも
「しまった。相手の意図とずれたメッセージ送っちゃったな」
「あかん、これだと、相手を叱責してると誤解されるメッセージになってる!」
などなど。

テキストメッセージングでは、相手の反応を知る手段が相手からのテキストメッセージに限られるため、慎重にならざるを得ません。
個人個人のコミュニケーション能力の違いもあるので、一概には言えないと思いますが、自分の場合、対面のコミュニケーションだと、上記のような心理的コストはかなり下がります。
というのも対面の場合は、話しながら相手の反応を見て、それに合わせて話す内容やトーンを瞬時に変えられるからです。
なのでテキストメッセージを書くときほどいろんな誤解の可能性について考慮しなくて済む気がします。

オンラインコミュニケーションでは原始的欲求を満たせない

オンラインコミュニケーションでは、原始的な社会的欲求を満たせない、というのは結構大きい気がします。
ビデオ通話やテキストメッセージのやり取りは対面での会話に比べて心理的な効果は圧倒的に小さいと思われます。これは具体的な情報量の不足に基づくコミュニケーションの不全感による部分もあるでしょうし、もっと原始的な心理反応の部分もあるようにも思えます。
人間は、他人との接触要求を持っていますが、そもそも対面のコミュニケーションでさえ、これを満たすのが難しい時があります。
オンラインではその障壁はずっと大きいので、仕事を通して原始的な社会的欲求を満たすことはほとんど無理なのではないかとさえ思えてきます。

オフィスワークには同じ空間を共有することでの安心感がある

オンラインで仕事をする場合、相互の信頼感ができていないと、仕事をやっていないかもしれない、という不信感が生まれます。エンジニアの場合、コーディングなどのタスクが数日にまたがって個人的に進行することがあるため、なおさらです。
この不安感はナンセンスといわれるかもしれません。
なぜならオフィスにいてもその人はサボってるかもしれないからです。
けれども問題は、人間がそこまで理性的でないということです。
その人がオフィスにいれば仕事をちゃんとやっていると思い込む。これは時に誤りかもしれませんが、案外その思い込みが相互の信頼感の基礎にもなりうる気がします。
相手が目の前にいるというその事実だけで安心するような、本能的な部分が人間にはあります
長い歴史の中で人間がリモート環境の中で生活し始めたのはまだ間もないことで、原始的な衝動や無意識的な判断は、まだまだ全くそこに適応できているとは思えません。

価値観を大きく異にする人(例えば他部署)とのコミュニケーションの困難さが増す

オンラインで仕事をする場合、自分の仕事に集中できる代償として自分以外の組織のメンバーの動向が見えにくくなるという問題が生じます。
エンジニア間のコミュニケーションであれば、Githubのようにそもそもが分散作業が前提とされたサービスを通してコミュニケーションをする機会が多いため、コミュニケーション上の困難さはかなりの範囲で軽減されます。
しかし、エンジニアが例えばカスタマーサクセスやセールス等の他部署とやり取りする場合は、どうなるでしょうか?
もちろんSlackなどのテキストメッセージングツールで基本的なやり取りはできます。
ただ、問題は部署をまたがる場合、利害や価値観が異なる場合が多く、コミュニケーションチャンネルが少なければ少ないほど、そのギャップを埋めることが難しくなります。
利害を異にするのは他部署だけではありません。垂直的な立場上の違い(上長と部下、役員と社員等)によって生じる利害や価値観の差異を埋める困難さも増すことになります。

まとめ

以上、不全感、コミュニケーションコスト、原始的社会的欲求、安心感、価値観の違いの5点についてオンラインワークとオフィスワークの比較をしてみました。
個人的な所感ですが、オンラインワークの普及とともに、「コミュニケーション」というものが非常に複雑なもの、様々な要因に左右されるものだという事実がより鮮明になった気がします。
おそらくこのことは自分に限らず多くのエンジニアが感じていることではないかと思います。
オンラインワークの普及に伴って新たに見えてきたコミュニケーション上の課題に基づいて、よりよい他人との関わり方やコミュニケーションのとり方ができるような仕組みを作ったり、啓蒙活動をしていきたいと考えています。

iCARE Advent Calendar 2020、明日はこっしーが「氷山モデルについて」書きます!お楽しみに!!!

おまけ

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