レストランを客観的に批評する為に必要な知識について~高須賀の美食入門 3~

美味しさとは主観的なものです。あるモノを食べて100人が100人、同じ感想を抱く事はまずないといってもいいでしょう。

とはいえこのような主観的なものを客観的に評価するための技術というのはキチンとあります。例えばプロスケートの世界では、演者が走り終わったら演技に対して点数が付けられます。素人がみたら「なんだかよくわからないけど美しく滑走しているな」としか思えないものでも、プロは万人に理解可能な「数値」という形で演者を評価する事ができるのです。

スケート評価における素人とプロの違いは「演技に対して目が肥えているか」と「評価のための指標を持ち合わせているか」です。食べ手においてもほぼ同様の事がいえます。よき飲食店批判者たる私達に必要な事は「美味しいものをある程度食べ慣れる事」と「レストラン評価のための指標を持ち合わせる事」なのです。

さて前者である「美味しいものをある程度食べ慣れる事」については、ガイドブック等に載せられている評判のレストランに通う等すればよいとしましょう(そのガイドの評価が正しいかは置いといて)。では後者の「レストラン評価のための指標を持ち合わせる事」はどうすれば学べるのでしょうか?

実は殆どの書物ではこれがキチンと言及されていません。従来の飲食ガイドでは何故かここが無視され続けていますが、僕はここが食べ手にとって最も大切な核心的部分だと思っています。


プロスケートを見る際に、素人がプロスケーターの事をよく理解していないが故に正当な評価を下せないのと同様、多くの食べ手は「レストラン経営について」や「シェフ、サービススタッフなどの働く人々について」、「評価者である自分が食べ物を何故おいしいと思うのかのメカニズムについて」をしっかりと理解していません。これらを正当に理解していないが故に、レストランを「よくわからないけど美味しい」みたいな曖昧な基準でしか評価ができないのです。

僕は今後日本においてキチンとした飲食店批判文化が根付く為にも、ここについての解説は非常に大切だと思っています。多少かったるい部分も多いとは思いますので初読の段階では読み飛ばしてもらってもかまいませんが、非常に重要な事を記載していきますので、ゆっくりとでもいいので読み進めていって下さい。

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