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山形浩生/Joi Ito/高須正和「コミュニティ構築について」イベント録画 #遠くへ行きたければ #OPEN #9プリンシパル

言うは易し行うは難しの「コミュニティ構築」

僕の前説では、コミュニティの重要性と社会との関わりについて紹介して、イベントの方向性を説明した。

この書籍「遠くに行きたければ、みんなで行け」を翻訳中に、いろいろ話を聞きたくなったのが、解説を書いてくれたCode for Japanの関さんと、今回イベントに登壇してくれたJoi Ito(伊藤穰一)だ。
僕はハードウェアハッカーのバニーファンほか、何人かのMITメディアラボ関係者と付き合いがあるが、なんというか偏屈モノ、ハミダシモノばかりで、一緒に仕事をするのは楽じゃない。

どうやってそういう人たちを集めてある程度の方向性を与えてアウトプットに結びつけているのか、インセンティブ設計や雰囲気づくりをどうしているのかは、すごく聞きたかった。
彼の著書(これも山形さんの翻訳だ)9プリンシパルには、そのエッセンスが詰まっているが、雰囲気やムードなど、改めて聞きたいことは多い。

Joiはどうコミュニティを運営し、いま何を目指すのか?

Joiのトークは、MITのブランドをどう使ったかなどの「ぶっちゃけた話」含めてすごく面白いものだった。言葉の端々から語るヒッピーっぽさは、僕が今いる中国にはないものだ。
そうしたカウンターカルチャーが、今やむしろ与党となったインターネットや大学、研究分野でどう発揮されるかは興味のあるところだ。
Joiのトークでは、反骨心やハグレモノだけでなく、「ゴールを変えると見るものが変わる」「光が及んでいないところを見る」「Project Based」といった、むしろますます日本では重要さを増すところで、千葉工大でそれを実現するのは時間がかかりそうだけど、今後が楽しみなトークだった。

ディスカッション:コミュニティ構築

ディスカッションは、やや発散したものの、このメンバーならではのむちゃくちゃ面白いものだった。
「ガバナンスをオープンにやりすぎるとめちゃめちゃ工数がかかるし生産性も良くない」というのは、最近のJoiのポッドキャストでも触れられていた内容で、重要な点だ。

オープンさと内輪意識のバランス

山形さんがたびたび指摘してくれた、近著「OPEN」からの、「いつのまにかコミュニティが自己目的化し、前例踏襲のクローズドなものに変わる」も重要な指摘だ。Joiが開口一番「コミュニティには独特の内輪意識みたいなものがないとうまくいかない」と合わせ、コミュニティとOPENは無限のニュアンスを含む大事なテーマだ。

世界を変えるエンジニアを育てるには

Entrepreneurshipの上で、具体的なことがわからないと話にならないので、engineer based entrepreneurがすごく重要なのだけど、他の職種からengineerになるのはなかなか難しい。僕はたまたまインターネットがサブカルチャーだった時代の人間なので、未経験から技術に近づく仕事をずっと過ごしているけど、今そういうキャリアを歩むのは難しいだろう。テックインフルエンサーみたいな人で、ちゃんとしたエンジニアになる人は、もともとエンジニアだった場合を除いて、ほとんどいない。
Joiが千葉工大で目指す、「時間はかかるけど、Project Based Learningなどから変えていくことで、成果は出ると思う」というのは説得力あるアプローチだ。

日本から何を目指すのか

Joiはまだ日本に戻ったばかりで、僕はここ2年ずっと深圳にいる。山形さんは相変わらず世界を飛び回っていて、このコロナ禍でもキューバに長期出張していた。
そうなると気になるのは「今の日本でウリになるのは何だ、世界に押し出せるのは何だ」だ。
いま多くの人が行っている「日本の強みやクールジャパン」みたいなものはけっこう間違っていて、IPのシェアに抵抗がないとか、好きベースのクリエイティブが自律的に成長する、初音ミクやPixiv、メイカーフェアみたいなものに可能性があると思う。そこに、グローバルに押し出す推進役をどうくっつけていくか。日本でのJoiの活動では期待したいところでもある。

危ない活動だからこそ飛び込んでいく

JoiのPodcastではweb3やNFTへの取り組みが紹介されることが多いが、彼自信が「SCAMばっかり」「投資家としては怪しくて注目できない」とはしょっちゅう口にし、podcastのニュース欄では暗号通貨絡みのクラッキングや詐欺が毎回紹介される。
そうやって負の面を常々強調しつつ、「だからこそ突っ込んでいって手を動かしてみないとわからない」という姿勢はリスペクトに値する。
僕の中国オープンソースへの投資は、もちろんワケがわからないから自分でコミットしようというJoiと似たファーストペンギン魂もあるが、「中国もオープンソースもイケるから、こっちの時代が来るだろう」と思っている、つまり勝ち目が見えている部分もある。

中国だけ見ていては触れられない、ヒッピーっぽいもっと怪しいものに積極的に飛び込んでいくべきだと強く感じたイベントだった。


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