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90年代の音楽を知らないアナタへ その28 UNDERNEATH THE STARS(95)/MARIAH CAREY 声に陶酔!人間ワザを超えた天性の歌唱!

95年にリリースされた「DAYDREAM」は発売するやいなや驚異的なセールスをたたき出し、「MUSIC BOX」がピークだろうと言われた批評家のバッドルーモアを一蹴し、前作の反響を軽々と超えてみせた。このアルバムで顕著だったのはマライアがそれまでの歌唱に大きな変化をくわえてきたこと。細かい音のコントロールで歌詞とメロディのより高いシンクロを試み、ヴォーカルとインストの境をなくすかのような歌の世界を表現できるアーティスティックな存在へと前進。技術的な進歩にくわえて「歌姫」たる美と自信を纏ったのもこの頃ではないだろうか。

このアルバム「DAYDREAM」には、マライアの歌唱に明らかにそれまでとの「違い」が感じられる曲が数曲収録されていた。それのうちの一つが2曲目「UNDERNEATH THE STARS」である。

いまとなっては彼女の歌唱スタイルのひとつとして認知されている、いわゆる「ささやき歌唱」。ベルトやファルセット、ハイノート、ローヴォイスの中の一選択肢として登場することはこれまでにもあったが、この曲のようにはじめから最後まで「ささやき系」(裏声とも違うかな...)で歌われたのはこの曲が初めてだったように思う。(セカンドアルバムに入っていた「THE WIND」は近い存在だけど、やっぱり歌唱は違う)

個人的な感想としては、新しいマライアが聴けたし、歌自体もロマンティックでほんのり官能的な世界観とキャッチーなメロディでいまだに好きな曲上位。しかし悲しいかな「EMOTIONS」や「IF IT'S OVER」などのパンチの効いた歌唱が好きな一部のファンは、こういう曲は期待ハズレとばかりに彼女の元を離れたとも言われている。

彼女がパンチ力だけでこなしていた歌唱は「MUSIC BOX」まで。もともと喉が弱い彼女にしてみれば負担のかかる歌い方ばかりしていては商売道具の喉を壊してしまうのはもちろん、一辺倒の歌手として長続きはしなかったであろうことは安易に予想できる。

マライアが長続きする歌手であるためには新たな試みに挑む姿勢、結果を出さなければならないサプライズ、もちろん良い歌を書くこと。課題は山積みであったが、この曲ではからずも彼女の新境地が開拓された。コアなマライアファンの間では相変わらず評価が高い一曲であり、この曲を受け入れられてこそ、マライアのアーティストとしての真意を理解しているのではと感じる。

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