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90年代の音楽を知らないアナタへ その67 I GET LONELY(97)/JANET JACKSON 世界的なコロナ情勢とシンクロする「寂しい」という本能的な感情の渦

90年代にアメリカでリリースされたアルバムの中で、わたしが一番といってもいいほど「暗いアルバム」に認定しているのがジャネットジャクソンが97年に放ったアルバム「VELVET ROPE」である。

陰気で陰湿。不幸でマジョリティ。オープンではなくクローズドされた内なる渇望。人間は誰しも明るい面ばかりを持ち合わせているのもではない。むしろこういう陰の部分をインフラとして、明るい面を魅せているのではないかとさえ思う。個人というものは実はこういうものだろう。

それまで明るく元気な女の子のイメージが強かったジャネットがここまでパーソナルな心境を吐露して魅せたことなんてなかった。これは当然、当時の大問題作であった。前作「janet.」が売れに売れまくった後、大事なリリースに選んだのは「闇」をテーマにしたコンセプトアルバム「VELVET ROPE」なのだから。

アルバム全体は暗いトーンであり、クラシックなR&Bとソウルのベースに最新のデジタル音楽をミックスした独特の音色でジャネットの内面を見事に表現してみせた。

中でもメロディアスでポップな要素を強く出している「I GET LONELY」の尊さよ。サビは「I GET SO LONELY. CANNOT LET JUST ANYBODY HOLD ME」。このどストレートな歌詞。でもこれが本音ですべてであろう。

コロナウィルス騒動まっただ中にある2020年に聴くと、さらに現実味を帯びて世界情勢とシンクロしてしまう。それだけ個人の陰の部分というのは普遍的であり、誰にでも起こりうるインフラ的な感情なのだとこの曲を通して思い知らされる。

当時のジャネットはただ、自分の中で爆発しそうなダークな感情を吐露することでパーソナルを調整しようとしただけかもしれない。それが結果として今の世界情勢とリンクしてしまっている。それだけ彼女の当時の感情が「本物」だった、ということも言える。という、あくまでもわたしの解釈なのだが、意図せずして世界の代弁者となるえるようなところがアーティストとしてのジャネットの存在であり、共感を呼ぶアーティストであるのだと、改めてジャネットの尊さに気づくのである。

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