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音選びの天才・筒美京平、逝く。

日本の歌謡界になくてはならない作曲家、筒美京平が逝ってしまった。好きな歌どれを聴いても、必ずといっていいほど彼の名前がクレジットされている。日本の歌謡曲・Jポップのほとんどは彼が手掛けたといっても、異議を唱える人はいないんじゃないだろうか。

それほど彼が世に放った歌は膨大であり、どの時代にも大ヒットを放っている偉業者である。

これは完全にいち個人の見解として読んで欲しいのだが、彼が詞につけるメロディは言葉の意味、文章に対して邪魔をしないところが最大の魅力だと思っている。いくら彼がトリッキーで奇天烈なメロディを紡ぎ出したとしても、言葉の途中で息継ぎをさせないし、言葉の途中で強引に別の流れに持っていくことがない、という曲が多いと思う。言葉運びに対してメロディの選び方がピタッと揃っているのだ。(言い切れないが、ほとんどの曲をきくとそう言えることが多い)だからいくらジェットコースターのようなアップダウンの激しいメロディでも歌そのものが体にすーっと入ってくる。それでいて強烈に印象に残るのだから凄い。

Aメロ、Bメロ、サビ、Dメロのオマケまである玩具箱のようなサービス性にとんだ曲を作り出す天才。歌手にとっても彼の作り出すメロティはなんやかんやで歌いやすかったのではないだろうか。そんなことはないか(笑)

西田佐知子の「くれないホテル」のお洒落さに痺れた。いしだあゆみが歌う一連ヒットの有名曲は彼の業績であろうし、そのどれもがメロディアスで一度聴いただけでも覚えられるセンス。男が楽に歌える堺正章の代表曲「さらば恋人」。ラグジュアリーなジュディオングのメガヒット「魅せられて」。世代を超える太田裕美の「木綿のハンカチーフ」。歌謡曲といえば尾崎紀世彦「また逢う日まで」。小柳ルミ子「来夢来人」のテクニカルなソウル歌謡に驚いた。小泉今日子「なんてたってアイドル」のキッチュさ。ただただカッコイイ稲垣潤一「ドラマティックレイン」。岩崎宏美のデビューを華やかに送った「ロマンス」。コロッケの餌食になった野口五郎「甘い生活」と岩崎宏美「シンデレラハネムーン」。クールビューティーな中原理恵「東京ららばい」と、庄野真代「飛んでイスタンブール」。エロドラマの主題歌CCBの「ロマンティックが止まらない」。意外だったNOKKOの「人魚」。トシちゃんの「抱きしめてTONIGHT」。マッチの「スニーカーぶる〜す」。少年隊「仮面舞踏会」。そして「サザエさん」まで!

演歌、歌謡曲、JPOP。ジャンルはボーダーレスで歌手も男も女のアニメも関係なし。歌というものが存在するところに筒美京平のメロディがあるのだ。

追悼に寄せられた歌手や芸能人、仕事仲間からのコメントをみているだけで素人のわたしでも目頭が熱くなってくる。関わった人たちの哀しみは想像を遥かに超えているだろう。お別れの会はないという報道だが、年末の特番はきっと筒美京平の番組が多くなるだろうし、そうであって欲しいと心から願う。日本で生まれ日本で育った人であれば筒美京平にお世話になっていない人はいないだろうから。

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