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なぜZoomはSkypeに勝てたのか? — ムーブメントを作り出した3つの初期戦略

こんにちは、福家隆(@takashifuke)です。

4月2日、「Zoom」の3月のデイリーユーザー数が発表されました。3か月前の12月に達成していた1,000万から2億ユーザーへと急成長を遂げていると報じられています。一方、Microsoftの「Skype」も先月比70%増の4,000万ユーザーまで成長を示しています

いずれも膨大なユーザー数とはいえ、ここにきてZoomが圧倒的な存在感を表し始めました。なぜZoomがSkypeより多くユーザー数を集められているのでしょうか。結果論として「スイッチコスト」が挙げられます

Web会議サービスとしてのZoomは、得意先や社内で会議ツールとして一度導入され、利用がデフォルト化してしまうと抜け出すことが比較的難しいと言えます。なかでも社外の人との会議ツールとしてZoomの利用を勧められた場合、断ることは難しいでしょう。

ユーザー情報登録が必要なSkypeを利用するより、URLリンクだけで映像電話が繋がるZoomの方が使い勝手が良く、わざわざSkypeを提案しては、先方に無駄な時間やストレスを与えかねません。

B2Bツールは一度共通コミュニケーションツールとして導入されてしまうと抜け出すことが難しなります。現在、Zoomはまさにこの状態を再現しています。

それでは、高いスイッチコストを築き上げるまで、Zoomはどのようなプロダクト戦略を初期に打ち出してきたのでしょうか。3つのポイントにまとめて紹介していこうと思います。

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.HUMANSは、「次世代コンピューティング時代のコミュニケーション・サービスを開発する企業」です。

「AR」「Spatial Computing」「コミュニケーション」に興味がある方がいらっしゃったら、ぜひZoomお茶会 or さくっと対面お茶会でもしながらゆるくお話しさせていただけるとめちゃくちゃ嬉しいです!

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Summary(60秒サマリー)

1分でちゃちゃっと要点だけ知りたい方はこちらをどうぞ👇

Zoomが仕込んだ3つの戦略

1. 「プロダクトがプロダクトを売る」を実践:創業者のEric Yuan氏は5年で8回ほどしか出張しない徹底したオンライン会議主義者。熱狂的に自社サービスを使い込む習慣を根付かせ、社外の人にも自然な形で広げていった。

2. 屋外広告:初回利用ユーザーをHookさせるには、「あっ、これ見たことある」という既知体験を作る必要があった。そこでシリコンバレー中のハイウェイに広告を設置して認知度向上のブランディング戦略を採用。

3. 競合の穴をつく:当時、Cisco WebExなどの会議システムが登場。しかし、通信不安定やモバイル体験の欠如が存在し、顧客満足度は決して高くなかった。Zoomより少し早く登場したSkypeもP2Pネットワークを採用しており、サーバー型ネットワークより脆弱なモバイル通信環境が顰蹙を買っていた。Zoomはこうした大手サービスの抜け道をするすると見つけて上場まで漕ぎ着けた。

創業者の熱狂とリファーラル文化

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Image Credit:Zoom

秀逸なSaaSの代名詞として「プロダクトがプロダクトを売る」という台詞が用いられます。

Zoomの場合、初回利用ユーザーが知り合いからURLリンクを送られてプロダクトの良さを知り、自分でも使い始める自然流入の形を指します。また、ZoomではURLリンクが招待(リファーラル)コードの代わりとして働きます。

広告を打つことなく、「招待されたので自然と使ってみる環境」を指数関数的なスピード感で広げられるのがSaaSの良さです。

SaaSが持つリファーラルの利点を最大化させるため、創業者のEric Yuan氏はほぼ全ての会議をZoomで行っているそうです。『Forbes』によると、IPOまでの5年間で8回しか出張をしていないとのこと(その中にはIPOをニューヨークへ行うための東海外出張も含まれます)。

トップティアVCから資金調達をした際には、たった一度、投資家全員を集めた対面ミーティングを開き、Zoomをダウンロードしているかを確認したという逸話さえあります。社外からミーティングを提案された場合、「最初は必ずZoomで」と伝え、事業をしていく中で自然とプロダクトを広める仕組みを取り入れていたとのことです。

対面を徹底的に廃止し、Zoom会議だけで外部と仕事をしていたのがYuan氏でした。年平均1.6回しか本社近辺を離れないワークスタイルをCEOが実践することで、企業文化として遠隔ワークのDNAが育ち、従業員も社外関係者とはZoomを基本とする徹底した行動が根付いたことでしょう。こうして企業活動自体がリファーラルの始点となります。

雰囲気ブランディング — 屋外広告

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Image Credit:Zoom

Zoomのアーリーアダプター獲得戦略として屋外広告(ビルボード)の活用が挙げられます。

もともとZoomのマーケティング戦略は、地味なアプローチを採用していると言われています。たとえば、イベントでは販促物の提供などはせず、基本的にZoomのライブプロダクトだけを置いてピッチするスタイルを長く採っていたそうです。

初期のユーザー獲得で最も重視したものが屋外広告。以前、スタートアップ向けクレカ「Brex」が屋外広告を積極的に打ち出していると紹介した記事にある通りの戦略を実践しています。

鍵は「屋外広告」一気に拡大したBrexの #スタートアップPR 戦略を紐解く

Zoomを初めて利用してから継続利用させるループを生むための確率を高める1つの手法として、「これ見たことある」と事前に刷り込ませておくブランディングは有効です。

毎日通る道路沿いに広告を置いておくことで、潜在ユーザーの無意識化に「Zoom」の名前を刷り込ませておくことができ、プロダクトの信頼性を高めることができます。周りの人も使っている「雰囲気作り」は、リファーラル戦略を主軸とするZoomにとって非常に重要なPR思考となります。印象に残らないオンライン広告とは違い、何度も実物広告を見かける刷り込み戦略は功を奏しました。

モバイル体験シフト

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Image Credit:Zoom

反面教師として、SkypeとWebexの事例をまずは話していきます。

SkypeはP2P技術をベースにしたサービスであったため、モバイル端末での通信効率が悪いデメリットが発生していました。

モバイル体験に最適化されていない問題はMicrosoftに買収された後にも続き、2013年にはP2Pネットワークからクラウド型サーバーへと移行されています。同年、Windows 8.1のデフォルトメッセージアプリと位置付けられたり、Outlook.comの一部としてSkypeが統合されました。

ただ、統合後も技術基盤の移行やUX改善に何年も時間を費やしています。『The Verge』の記事中部に載せられている画面デザインを見ると一目瞭然です。

2017年には急にSnapchatライクなデザインへと様変わりをしており、無駄に絵文字などを増やしています。ユーザーの声を聞かずに必要のない機能を盛り込み続ける、プロダクト開発における悪手をMicrosoftは採ってしまったのです。結局、2018年には当初のSkypeらしいデザインへと再設計をし直しています、時すでに遅しの状態。元々、買収後のエンジニアリング再設計の段階からバグが多かったことからSkypeは信頼のできないプロダクトとして認知されてしまいました。

一方のZoomはシステム課題とモバイル体験の両立を当初から目指しました。Yuan氏はCiscoに買収されたWeb会議システム「Webex」のエンジニアリング・グループリーダーを勤めていた経験から、プロダクト開発手法を熟知していました。

Yuan氏はSkypeが採用したモバイル環境では通信脆弱性の高いP2P型ではなくクラウド型ネットワークを推し進めます。また、Webexが抱えていた3つの問題解決にも取り組みます。

1 ) ユーザーが会議に参加する度、どのバージョンの製品(iPhone、Android、PC、Mac)で実行されているのかを識別するのに多大な時間がかかる。
2) 回線に接続している人が多すぎると接続に負担がかかり、音声やビデオが途切れてしまうことがある。
3) 当時のWebexにはモバイル向け画面共有のような最新機能が欠けていた。

Skypeにも共通していた問題(2と3)を解決するシステムを作り上げたのがZoomでした。具体的には、URL発行の仕組みを通じて解決を図りました。ワンクリックでどの端末からでも会議参加できる導線を確立したことで、当時Skypeが抱えていたスパム問題の発生を根本からなくしました。

デスクトップおよびモバイル体験を充実させ、通信環境も問題のないように作り上げたのがZoomでした。

安心して話せる場が整うことで、高い信頼性の求められるB2B市場への進出が可能となります。「最適な会議時間は45分である」というデータを基に、40分で会議が終了するフリーミアムモデルを採用。こうしてWeb会議における「ユニバーサルデザイン」の構築に成功しました。

Zoomは類似プロダクトの多いWeb会議市場を席巻しました。「車輪の再発明」と言えばそれまでですが、創業初期からユーザー獲得とプロダクト開発の両方を満足させる条件を満たせていたと考えます。

当時、「SkypeやGoogle Hangoutがあるから今更Web会議サービスを立ち上げる意味はあるの?」と多くの投資家から言われたのがZoomであると聞いています。結果として、たとえ大手サービスがあったとしても、時代に沿った体験生が欠如しているのならば十分に参入する余地があることがわかります。

今回のZoomの事例から、B2Bの領域ではプロダクトデザインを大きく変えることを嫌う傾向にあるため、ディスラプトの可能性は大いにあるかもしれません。ぜひ本事例を踏まえつつ、巨大資本サービスへの立ち向かい方を考えてみてください。

また、Zoomは既存サービスの体験を地味な機能変更でありながら、大きく変えたことで急成長を果たしました。この点、Spatial Computing時代に新たなZoomが誕生してもおかしくはありません。既存サービスとしてのZoomやSkypeのようなサービスは、新サービスによって技術インフラから体験生までほぼ全てが刷新されるはずでしょう。全く違う次元で新たなサービスが生まれると考えるため、誰にとってもチャンスが開かれている時代が訪れると感じています。

追記:Zoomと比較する際、「Skype」とは別に「Skype For Business」の数値も合算して比較するべきというご指摘をいただきました。「Skype」は50名まで、「Skype For Business」はそれ以上の大人数コミュニケーションが可能です。冒頭に「Skypeのデイリーユーザー数が4,000万」と書き、こちらがあたかも「Skype For Business」を含んだ数であると誤解を生みました。訂正いたします。

「Skype For Business」の利用ユーザー数は公式発表されていませんが、「Skype For Business」とは別の「Microsoft Teams」のユーザー数が4,400万とあることから、少なくともそれ以下だと考えます。「Skype」と「Skype For Business」の数値を合算しても、Zoomの2億ユーザーには至らないと想定され、論旨に影響ないとは思いますが正しく比較するために念の為補足しておきます。

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少しでもARやSpatial Computing関連の話題にピンとくる方はぜひお茶でもしながらお話させてください🙇

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コミュニケーション・デザイン企業「.HUMANS」代表 / 事業着想メディア『PODIUM』編集長 / 『Bridge』ライター◀︎ARスタジオ企業「Meson」◀︎ライブ音声配信アプリ「Dabel」◀︎元シリコンバレー起業家、動画メディア『Hashlyve』創業

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