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コミュニケーション・キャズム : なぜSiriは使われないのか?

こんにちは。.HUMANSの福家隆(@takashifuke)です。

最近、音声プロダクト開発に向けていろんな人に会わせていただきながら、ざっくりと音声アシスタント(Siri・Google Assisntant・Alexa)の利用状況を聞く機会が増えました。

膨大なボリュームを調べていないため反論もあると思いますが、結論から言うとSiri(もしくはGoogle Assistant)を日常的に使う人はほとんど見当たりません、今のところ。

ここで言う「日常」とは、日々持ち歩くスマホやスマートイヤホン経由で音声アシスタントを少なくとも毎日、2-3度以上は起動・利用するシチュエーションを指します。

肌感としては自宅でEchoシリーズを使っている方が1/5人の割合、スマホの音声アシスタントを日常的に利用する人は数十人に一人くらいと言ったところ。ちなみにAlexaはスマホには進出していないため、自宅ユースケースが大半です。Google Assistantもスマートホーム文脈が比較的強いため、持ち歩き外出シーンではあまり使われていない印象でした。AppleのHome Podはほとんど普及していないため、Siriは完全にスマホ利用を想定しています。

Summary(60秒サマリー)

1分でちゃちゃっと要点だけ知りたい方はこちらをどうぞ👇

なぜ日常的にスマホのSiriやGoogle Assistantを使うユーザーにヒットできないのか。理由は2つ。

1つはお国柄。移動時間に積極的に音声アシスタントを利用できる環境が良くも悪くも日本にはない。加えてタイピング文化。フリック入力文化もあり、高速でGoogle検索できます。メッセージアプリもテキスト入力が比較的多い。

「日本ではそもそも音声を発する場がない」「タイピング文化がフィットし過ぎている」が1つ目の理由。

もう1つが、本記事のテーマでもある「コミュニケーション・キャズム」。これは音声アシスタントの利用を多くの人が躊躇してしまう根本的なUX上の問題を指す。

従来のモバイルでは「アプリを開く→特定サービスを受ける」という導線であった。しかし、⾳声コマンドでは「要望を伝える→サービスを受ける」の導線へと変わる。こうした導線変化にサービス開発者もユーザーも上手く対応できていないことが挙げられる。

「モバイルファースト」と「ボイスファースト」の狭間をスムーズに移行させるには、サービス開発者とユーザーの両方を巻き込んだ構造的な導線シフト、キャズム突破が求められていると考える。しかし、シフトが未だに発生しないのはなぜか。

1つは「鶏と卵の問題」。サービス開発者は市場からの強いニーズがあれば音声体験への最適化へ必然的に動くが、未だに少数しか音声を使いこなせていない。この堂々巡りが市場を硬直させている。

2つ目は「シークレットクエスション」。誰もがタイピングに慣れ過ぎていて、より楽な音声UIの重要性に気付かずに過ごしてしまっている。

.HUMANSはこうしたモバイルとボイス時代の架け橋となる、「音声コミュニケーション・キャズム」を超えるプロダクトアイデアを試している。ARグラス時代に音声コマンドは主要UIとなると仮定し、Spatial Computing時代の到来に備え、Voice Computingを抑える戦略を採用している。

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.HUMANSは、「次世代コンピューティング時代のコミュニケーション・サービスを開発する企業」です。

「AR」「Spatial Computing」に興味がある方がいらっしゃったら、ぜひお茶でもしながらゆるくお話しさせていただけるとめちゃくちゃ嬉しいです!

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日本と音声アシスタントの相性

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Image Credit: Youssef Sarhan

なぜ日常的にSiriやGoogle Assistantを使うユーザーにヒットできないのか。私が人を選んで会っていないという理由を除き(選ぶと市場の俯瞰的な定性データが集まらない)、2つほど仮説を立てました。

1つはお国柄。

まず音声アシスタントの利用シーンとして考えられるのは移動時間。しかし、日本は欧米のように、音声やオーディオサービスの価値が発揮されるプライベートが担保された自動車空間にいることがあまりありません。電車内で声を出すこともエチケット違反であると感じるため、使いところはないでしょう。(この点、唯一タクシーや自転車移動を頻繁にされる方には刺さるかもしれませんが)

加えて、タイピング文化が日本に追い風なのも特徴です。

フリック入力文化もあり、高速でGoogle検索できます。メッセージアプリもテキスト入力が比較的多いと思います(要検証項目ですが)。一方、中国ではタイピングフォーマットと言語がマッチしない理由から、音声メモを送り合う文化が形成されていると聞きました。欧米では先述したように、自動車空間に縛り付けられる拘束時間があるため、両手を使うテキスト入力が音声に代替されることに合点がいきます。

スマホの音声アシスタントのデフォルト機能は音声検索以外には電話やメッセージ、翻訳などです。ただ、全てスマホのデフォルトアプリに依存するため、使い勝手はよくありません。

今のご時世、取引先とはMessengerやSlack、Gmailで繋がっていたり、電話をするとしてもZoomリンク経由。電話帳を利用したコミュニケーションは図らないのが大半でしょう。そのため、価値の高そうな機能として唯一残ったのは音声検索。しかし、タイピング文化の強い日本ではそこまで強い提供価値を持ちません。

まとめると、「日本ではそもそも音声を発する場がない」「タイピング文化がフィットし過ぎている」が1つ目の仮説です。

逆に言えば次の3つのターゲットは1つ目の仮説を反証してくれると希望を持って考えています。ただ、非常にニッチなのは否めないかもしれません。

・音声を発することにためらいをあまり感じない、デジタルネイティブな10代を中心とした「若者世代」
・比較的勝手に声を発しても許されるタクシー移動空間や、忙しなく仕事をして多量のタスクを処理する必要性に駆られている「ビジネスプロフェッショナル層」
・プライベート空間が保たれ、常にパソコンを見つめながら作業をしてスマホを随時チェックする作業に多少の煩わしさを感じる「リモートワーカー層」

ボイスファースト時代の「コミュニケーション・キャズム」

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Image Credit: Daniel Salgado

さて、もう1つが、本記事のテーマでもある「コミュニケーション・キャズム」です。これは音声アシスタントの利用を多くの人が躊躇してしまう根本的なUX上の問題を指します。

従来のモバイルでは「アプリを開く→特定サービスを受ける」という導線でした。しかし、⾳声コマンドでは「要望を伝える→サービスを受ける」の導線へと変わります。つまり、サービス名やブランドに価値がなくなる世界観が⾳声にあるのです。

ほとんどのサービスが裏手に周り、ユーザーの要望があれば最適なものを音声アシスタントがピックアップする体験。ユーザーがサービスを指定するがなくなることから、必然的にアプリをダウンロードすることもなくなり、極論を言えばApp Storeの存在価値がなくなる未来も想像できるでしょう。こうした体験に、各サービスを最適化させる必要が出てきます。

ここで述べている「コミュニケーション」とは、ユーザーが音声アシスタントを介してアプリケーションを立ち上げ、必要なサービスを引き出す「人とモノとの対話」を指しています。こうした音声コミュニケーションを軸にしたサービス利用の導線軸の問題を論じています。

話を戻すと、「モバイルファースト」と「ボイスファースト」の狭間をスムーズに移行させるには、サービス開発者を巻き込んだ構造的な導線シフトが求められていると考えます。自社サービスを前面に出さない音声体験へのシフトは、今までは違った戦略が求められるため、大きな覚悟が要されます。

ユーザーにも同様の体験シフトが求められるでしょう。これまでスマホ画面をタップしてサービスを指定していた習慣を変える必要があるでしょう。ここでキャズムの概念が適応されます。

市場には、イノベーター(革新者)・アーリーアダプター(初期採用者)・アーリーマジョリティ(前期追随者)・レイトマジョリティ(後期追随者)・ラガード(遅滞者)の5タイプのユーザーがおり、順にプロダクトを利用していきます。アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にある“崖”を超えれば、製品利用が爆発的に増える概念です。

スマホの音声アシスタント利用に関しては、イノベーター層は一定数存在すると踏んでいます。なんとかしてSiriやGoogle Homeの活用方法をハックして、自宅でEchoシリーズを使うように工夫する人がいるはず。もしくは音声メモをMessengerやSlack、LINEに頻繁に使ったり、私のように記事執筆の書き起こしに使う人がいるでしょう。

彼らはボイスファースト時代のサービス導線を自ら作る、学習コストの高いサービスを独自に工夫したりして自分なりの利用方法を開拓するイノベーターおよびアーリーアダプタ層「ProConsumer」です。

鶏と卵問題

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Image Credit: mnm.all

ProConsumerたちは音声の良さを最大限享受し、恩恵を受けています。しかし、私たちが使うほとんどのサービスがモバイルアプリ体験から⾳声体験へシフトができていないことから、キャズムを超えられていません、爆発的に音声の良さが伝わっていません。

ユーザーにとって⼊⼒やサービスが呼び出しが楽にも関わらず、なぜ⾏われていないのか?

音声コミュニケーションにおけるキャズムを越えれば、その先には大きな市場があるかもしれません。現在のサービス導線を工夫することで新たな巨大市場が現われる可能性が秘められています。

もともと音声は人間が本来持つコミュニケーションであり、ストレスなく情報を入力・取得できるものであるはず。より生産性を増やし、たとえば遠隔で働いていたとしても、ZoomやSkypeで低頻度に顔合わせをするのに比べ、より高頻度に気持ちを伝えながらプロジェクトを協力しながら進められるかもしれません。にも関わらず、なぜ体験シフトへ動かないのか?

答えは2つ挙げられます。1つは「鶏と卵の問題」。

サービス開発者は市場からの強いニーズがあれば音声体験への最適化へ必然的に動きますが、未だに少数しか音声を使いこなせていません。この堂々巡りが市場を硬直させていると感じます。

ただ、一石を投じたのがAirPodsです。耳元にSiriを持ってきた高性能イヤホン「ヒアラブル」端末の急先鋒として市民権を得ています。AirPodsは硬直状態の市場を少しずつ動かすはずです。

シークレットクエスチョン

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Image Credit: Emily Morter

ここ数年で発生したハードウェアの進出・利用浸透でもなお、シフトが発生しないのはなぜか。それが2つ目の答え「シークレットクエスション」です。誰もが当たり前に受け入れている問題のことをそう呼びます。

PCからモバイルへと体験がシフトしただけで、インスタグラムやUberなど、様々な巨大企業が誕生しました。それほどのインパクトがあります。あとは「音声コミュニケーション・キャズム」を超えるだけ。

もちろん、モバイルファーストが圧倒的に先行している現在の市場で、ボイスファーストの優先度が低く見られることは理解できます。加えて、サービス開発の難しさがあることから、移行しようと感じても思い切れないジレンマがあります。ただ、ユーザーの行動様式が音声体験志向へと変わる兆しは見えています。ここにチャンスがあることは予想できます。

何かしら大きな市場がキャズムの先にあるにも関わらず、私たちは未だに制限された音声体験を当たり前に受け止めています。長年使い続けた、生産性の低いタイピングでカバーしようと自然と考えてしまっています。これが私が考え、気付いたシークレットクエスションです。

そこで.HUMANSではサービス開発者と音声市場の崖、ProConsumerとアーリーマジョリティの間にある崖「コミュニケーション・キャズム」を超えるプロダクト案を考えて動いてます。

将来的にFacebookやAppleが開発に注力するARグラス端末が増えれば、音声アシスタントを通じたコミュニケーション手法は主要UIとして採用される可能性が高いです。まさにSF映画のように、音声コマンドだけであらゆるサービスを利用できる環境が2020年代に整うかもしれません。その下地をモバイルファースト時代に作っておくことで、戦略的に次世代ハードウェアが活躍する「Spatial Computing時代/ミラーワールドが実現された世界」へと打って出ていけると考えています。

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少しでもARやSpatial Computing関連の話題にピンとくる方はぜひお茶でもしながらお話聞かせてください🙇

また、.HUMANSに興味のある方(エンジニアさんでもリサーチャーさんでもプランナーやマネージャーさんでも、どなたでも)、ぜひお茶させてください!人に会わないと何も始まらないので、いろんな人にお会いさせてください!

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コミュニケーション・デザイン企業「.HUMANS」代表 / 『Bridge』ライター◀︎ARスタジオ企業「Meson」◀︎ライブ音声配信アプリ「Dabel」◀︎元シリコンバレー起業家、動画メディア『Hashlyve』創業

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