小城 崇

ビービットのプリンシパル、フェロー。 UXグロースモデル(http://amzn.to…

小城 崇

ビービットのプリンシパル、フェロー。 UXグロースモデル(http://amzn.to/2UR9J23)という本を書きました。 UXデザインの方法論について情報発信します。 お仕事の相談などは、TwitterでDMいただけると有難いです。

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  • UX戦略の教科書

    「UX戦略の教科書」シリーズのまとめです。

最近の記事

  • 固定された記事

#1-1 道具からライフスタイルへ(UX戦略の教科書)

UXはこれまで、個別の顧客接点(Webサイトなど)の体験価値を向上させる文脈で語られることが多く、事業戦略の定義などのハイレイヤーな論点とは縁が遠い概念であった。 しかし、デジタル社会が到来して企業を取り巻く外部環境が変化した結果、今やUXは経営イシューとなっている。「どのような顧客体験(UX)を提供する存在になることを目指すのか」という視点に基づいて、事業戦略を検討することが必要になっているのだ。だが、そのことに真の意味で気づいている経営者・ビジネスパーソンはそれほど多く

    • #1 そのUXリサーチには『嘘』がある(UXリサーチの方法論)

      今回から「UXリサーチの方法論」というテーマにて連載する。 昨今では「UXリサーチ」や「デザインリサーチ」といった分野が開拓され、ビジネスシーンにおいて市民権を得つつある。特に「N1分析」という言葉に代表されるように、定性的な調査からインサイトを得るプロセス・方法論の重要性が見直されている状況にある。私自身もbeBitのコンサルタントとして10年以上にわたって様々な企業のUXデザインやリサーチを支援してきたこともあり、自らの専門分野に光が当たってきたかのようで嬉しく感じてい

      • おわりに _ UXと戦略を分断させないために(UX戦略の教科書)

        本記事は、UX戦略の教科書シリーズにおける「おわりに」的な位置づけのものになります。あまり一般受けしない内容だと思っていたのですが、事前に予想していたよりも多くの方に読んでいただき、とても感謝しています。 本シリーズの内容について、改めて振返らせてください。 第1章では「なぜUXを起点として戦略を検討する必要があるのか」を明らかにしました。具体的には、デジタル社会の到来という外部環境の変化によって、企業は「道具」を提供する存在から「ライフスタイル」を提供する存在へと転換で

        • #3-5 デザイン思考は「はやすぎる」(UX戦略の教科書)

          サービス仮説を立案するための方法論としては、一般的に「デザイン思考」や「デザインスプリント」「リーンUX」などの手法が提唱されている。 しかし、これらの方法論を活用してサービス仮説を立案しても、「経営サイドからSTOPをかけられてお蔵入りする」や「経営サイドの要望に応えているうちに、企画段階とは全く異なるサービスとしてリリースされてしまう」といった結末を辿ることが多い。 なぜ、このような現象が起きるのだろうか。本記事では「デザイン思考」を始めとする既存のサービスデザイン方

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        #1-1 道具からライフスタイルへ(UX戦略の教科書)

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        • UX戦略の教科書
          14本

        記事

          #3-4 UX起点で考えるコンセプトワーク方法論(UX戦略の教科書)

          本書の第3章では「顧客理解から、顧客体験の理解へ」をコンセプトとしたデザイン方法論の確立を目指している。 前節(3-3)では「既存サービスの改善仮説を立案する方法論」を紹介した。ターゲットが置かれている状況・文脈を設定したうえで、一連の顧客体験(認知世界+情動)を理解して、ペインポイントを抽出・言語化することで仮説を立案する方法論を提示した。 本節(3-4)では「新たなコンセプト仮説を立案する方法論」を紹介する。USJのハロウィーン・ホラーナイトのような画期的な仮説を、顧

          #3-4 UX起点で考えるコンセプトワーク方法論(UX戦略の教科書)

          #3-3 UX起点で考えるサービスグロース方法論(UX戦略の教科書)

          前節では「顧客を深く理解すれば、良質な仮説を立案できる」という言説は間違いであり、このような言説が広く信じられていることが企業の成長を阻んでいることを示した。また、ビジネスパーソンが優れた仮説を立案できるようになるためには、「顧客そのもの」ではなく「顧客体験(UX)」を理解する必要があることを主張した。 本書の主張が正しいとするならば、我々は顧客理解・ユーザ理解に基づく方法論にサヨナラを告げて、顧客体験の理解を起点とする方法論を新たに採用する必要がある。そこで本節以降では「

          #3-3 UX起点で考えるサービスグロース方法論(UX戦略の教科書)

          #3-2 顧客理解・ユーザ理解にサヨナラを(UX戦略の教科書)

          昨今では、顧客理解 / ユーザ理解に取り組む必要性が様々な所で主張されており、一般常識になりつつある。そして「顧客のことを深く理解すれば、良質な仮説を立案できる」という言説が広く信じられており、マーケティング戦略を検討したり顧客体験をデザインするうえでの前提条件となっている。しかし、このような言説は本当に正しいのだろうか。 結論からいえば「顧客を深く理解すれば、良質な仮説を立案できる、という言説は間違っている」というのが本記事の主張である。この間違った言説が広く信じられてし

          #3-2 顧客理解・ユーザ理解にサヨナラを(UX戦略の教科書)

          #3-1 UX戦略の策定プロセス(UX戦略の教科書)

          第3章では「UX戦略を策定する方法論・プロセス」を紹介する。本章の位置づけを明確にするために、ここまでの内容を簡単に振り返りたい。 第1章では、デジタル時代に対応するために企業が進むべき道を提示した。 デジタル社会が到来したことで企業の競争ルールが変化しており、ライフスタイル提供型の事業モデルへの転換が必要になっている。また、ライフスタイル提供型に転換するためには、いきなり個別のデジタルサービスの開発に取り組むのではなく、事業・ブランド単位でUX戦略を策定することから取り組

          #3-1 UX戦略の策定プロセス(UX戦略の教科書)

          #2-3 時代遅れになりつつある「ブランディング」を再設定する(UX戦略の教科書)

          前節(#2-1、#2-2)では、事業戦略の検討枠組みである「STP」とマーケティング戦略の検討枠組みである「ファネル」がともに時代遅れになっているにも関わらず多くの人に信じられており、そのためにUX戦略の策定・実行が妨げられていることを説明してきた。そのうえで「STP」や「ファネル」の検討枠組みを、時代の変化に合わせてアップデートする方向性を提示した。 本節(#2-3)ではブランド戦略を取り上げる。デジタル社会の到来によって、これまでのブランド戦略を捉える枠組みが時代遅れに

          #2-3 時代遅れになりつつある「ブランディング」を再設定する(UX戦略の教科書)

          #2-2 ファネルからダブルループへ_後編(UX戦略の教科書)

          前回の記事では、これまでのマーケティングの検討枠組み(=ファネル)の概要を提示したうえで、それが時代遅れになっている理由を解説した。また、ファネルの枠組みに囚われている人から見ると、UX戦略が「儲からないビジネスモデル」として捉えられてしまい、そのことがUX戦略の実行を阻害する要因になっていることを説明した。 今回の記事では「UX戦略は儲かるのか」という疑問に答えつつ、ファネルに代わるマーケティングの全体像を捉える枠組みを提示することを目指す。 デジタルサービスがファネル

          #2-2 ファネルからダブルループへ_後編(UX戦略の教科書)

          #2-2 ファネルからダブルループへ_前編(UX戦略の教科書)

          前節(2-1)では、いまだに多くのビジネスパーソンがSTPの思想・枠組みを事業戦略を策定する場面で採用しており、そのことがUX戦略の策定〜実行を阻害していることを説明した。デジタル社会の到来によってSTPの枠組みは時代遅れとなっており、時代環境の変化に合わせてアップデートする必要性が生じている。 しかし、デジタル社会の到来によって時代遅れになっているにも関わらず、いまだに多くの人が暗黙の前提としているためにUX戦略の策定〜実行を妨げている伝統的なナレッジ・方法論は、STP以

          #2-2 ファネルからダブルループへ_前編(UX戦略の教科書)

          #2-1 STPにサヨナラを_後編(UX戦略の教科書)

          前回の記事では、伝統的な事業戦略の検討枠組みである「STP」が時代遅れになっている理由・背景を説明した。そのうえで、多くのビジネスパーソンがSTPの思想にサヨナラすることができず、今も暗黙の前提に置いてしまっていることがUX戦略の策定〜実行を阻害していると主張した。 では、我々は事業戦略の検討枠組みをどのようにアップデートすればよいのだろうか。本記事では、デジタル社会の到来にあわせて、STPをどのようにアップデートするべきかを明らかにすることを目指す。 セグメンテーション

          #2-1 STPにサヨナラを_後編(UX戦略の教科書)

          #2-1 STPにサヨナラを_前編(UX戦略の教科書)

          第1章では、デジタル社会が到来したことでUX戦略を策定する必要性が高まっていることを説明した。しかし、いざUX戦略を策定〜実行するプロジェクトを進めると、ほとんどのケースでプロジェクトメンバーや経営層から戸惑いの声があがる。なぜならUX戦略を策定・実行するためには、これまで経営戦略やマーケティング戦略などの世界で常識とされてきたナレッジや方法論を脱学習する必要があるからである。 だが、ビジネス書などを通じて経営戦略やマーケティング戦略のナレッジ・方法論を熱心に勉強してきた人

          #2-1 STPにサヨナラを_前編(UX戦略の教科書)

          #1-3 UX戦略とは何か?(UX戦略の教科書)

          前節(#1-1,#1-2)では、デジタル社会が到来したことで企業の競争ルールが変わっており、ライフスタイル提供型の価値提供モデルに転換する必要性が高まっていることを説明した。また、ライフスタイル提供型への転換によって企業競争力を大きく飛躍させた事例として、NIKEと平安保険の取り組みを紹介した。 それを受けて本節では「企業がライフスタイル提供型に転換するためには、どのような活動が必要になるのか」を説明する。 ライフスタイル提供型への転換プロセス 結論から言うと、企業がラ

          #1-3 UX戦略とは何か?(UX戦略の教科書)

          #1-2 ライフスタイル提供型への転換事例(UX戦略の教科書)

          前回の記事では「デジタル社会の到来が企業にもたらす変化」について解説した。今回は、ライフスタイル提供型の価値提供モデルに転換することで、競争力を大きく飛躍させることに成功した企業の事例を紹介する。 ライフスタイル提供型への転換事例(1) ~ NIKE ~ ライフスタイル提供型への転換によって競争力を飛躍的に高めることに成功した代表的事例としては、まずはNIKEが挙げられる。 ご存じの通り、NIKEはもともと運動シューズやスポーツウェアを製造・販売するメーカー企業であった

          #1-2 ライフスタイル提供型への転換事例(UX戦略の教科書)

          「闇堕ち」してしまったUX概念を再定義する

          『UX(User eXperience)』という概念に、注目が集まっている。ここ数年で、UXリサーチャーやUXデザイナーといった職種に就いている人の数は大きく増加した。専門家だけではなく、経営者を始めとしたビジネスパーソンの間でも、UXの認知度や関心度は高まっているようだ。一見したところ、『UX』という概念は順調に世の中に普及しているようにも見えるが、実はその裏側で存在意義を揺るがすような「危機的な状況」に置かれている。 もともとUX / UXデザインは、企業とユーザの間に

          「闇堕ち」してしまったUX概念を再定義する