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「持続化給付金」を受け取ってもなお、クレジットカード8枚分の借金を背負わされる中小零細企業

アメリカでは既に始まった給付金制度

ロックダウン下のアメリカでは今、コロナ関連の個人向けStimulus package(景気刺激対策用の給付金)や、PPP(Paycheck Protection Package:中小企業ローン)の話題がそこかしこに溢れている。

一定程度の年収制限を設けて、個人にもどんどんお金を配っていく。年収750万円以下の個人には12万円、夫婦合算で1500万円以下の世帯(個人)には24万円が即時送金される。

従業員の雇用を維持しようとする中小企業には、総額35兆円の即時ローンが配られ、事業の生命維持に回されている。

アメリカ史上類を見ない220兆円の景気刺激策が、早速実行に移されている様子が、日々伝わってくる。アメリカ企業はどんどんレイオフ(解雇)を行うことができるので、政府は個人を経済的に助ければ、国全体を助けたことになるという図式が一定程度成り立っているように見える。

日本での「持続化給付金」制度に期待集まる

翻って「従業員の解雇が難しい」日本はどうか。僕はカリフォルニア州でソフトウェア会社を経営する傍(かたわ)ら、渋谷でカフェをやっていることもあり(渋谷二丁目にある「メンローパーク・コーヒー」は、5月6日まで休業中だ)、日本経済の行方も気になっている。

中小企業向けに「持続化給付金」なる制度ができつつあり、現在運用を開始しようとしているそうだ(申請の受付はまだ開始されていない)。

昨年と比較して、売上が50%以上減少した月の売上(月商)を12倍して、それを昨年全体の売上から差し引いた金額を中小企業に給付するとのこと。

問題は、「最大200万円」という金額(キャップ)だ。店舗を休みにすれば、売上の減少は50%どころでは済まない(実際は、ほぼゼロになる)。

給付金は十分か?売上ごとのシナリオ分析を実行

そんな中、日本の中小企業の「売上」は、中期的に見てどう推移していくのか疑問に思った。

メディアの記事は表面的なものばかりだから、自分の頭で考え、自分の手で計算してみたかった。

持続化給付金は、中小企業にとって、実際どれくらいのインパクトがあるのだろうか?

外出自粛要請で最も大きな影響を受けたのは、外食、小売、宿泊施設、フィットネスなどの店舗ビジネスだろう。

外出自粛規制が行われ、人の流れを規制すれば、店舗売上はほぼゼロに落ち込むが、それでも会社は「固定の不動産賃料」を支払わなければならず、日本は特にレイオフができないから(整理解雇が難しいから)、人件費も「ほぼ固定費」として支払い続けなければならない。

中小企業の資金繰りと典型的倒産パターン

店舗型の中小企業なら、そもそも利幅は薄く、おまけに自転車操業で、売上高の2~3ヶ月分くらいしか預金は積んで無いだろうから、もとより売上の半減が半年(6ヶ月)続けば、どんどん倒産してしまう。

ロックダウンともなれば、資金繰りが急速に悪化する結果として、1~3ヶ月で倒産する計算だ。

また、47都道府県でロックダウンを行ったとしても、残念ながらコロナウイルスの蔓延が早期に完全収束する保証は無い。

人の流れを一時的に止めたとしても、事態が短期で収束しない可能性があり(終わったと思って解除したら、また再開する可能性もあり)、ジリジリとロックダウン期間だけが伸びていくことも考えられる。

米ウォール・ストリート・ジャーナルのGDP予測

この期間の急速な売上減を助けようとするのが、「持続化給付金」ということだろう。

しかし、この最大200万円の景気刺激策は、店舗ビジネスをやっている零細企業にとっておそらく「十分ではない」。

この推定は、今後の経済の回復ペースにかかっているのだが、この回復ペースが、想像よりも遅れる可能性が高いと僕はみている。

昨日の米ウォール・ストリート・ジャーナルでも、『経済学 vs 疫学 数字で見るコロナ対策』と題した記事の中で、「ロックダウンは大勢の命を救っているとみられるものの、エコノミスト(経済学者)はGDPについて向こう3年間はパンデミック以前のベースラインを下回るとみている」と報じている。そのカーブは以下(左側の図)の通りだ。

WSJチャート

あと18ヶ月間、日本経済は元には戻らない!?

アメリカと日本では事情が異なるし(一方で、国をあげてロックダウンをしているという事実は変わらない)、またGDPの回復ペースと個別企業の売上回復ペースが必ずしも同じということではないのだが、参考になるカーブではある(粗い推定でも、無いよりはマシだ)。

これをベースにすると、外食や小売などの産業では、例えば、来年2021年の9月くらいまで待たないと、2019年レベルの売上は戻ってこないという計算になる。

それまで、去年より少ない月商に苦しみながら、何とか生きていかなければならない計算だ。収支トントンで運営していた中小企業を想定すると、月商の減少分がそのまま損失となり、2021年9月までどんどん累積損失が積み重なっていく。

結論:持続化給付金で中小企業は救えない

こうした数値を(先ほどのカーブに沿って)図表にすると、以下のようになる(土曜日に僕が作った)。

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つまり、月商25万円(年商300万円)程度の零細企業を除いては、持続化給付金の最大200万円給付では、損を取り戻すことは「非常に難しい」という計算になる。

ここで、実際の外食店舗、小売店舗の売上というものが、月商25万円(年商300万円)程度であるケースは非常に少ないだろう。

零細企業とは言っても、従業員を1、2名ほど雇っている店舗の場合、この従業員に給与を配っていることになるのだから、最低でも月商が50~75万円(年商600~900万円)程度はあるとみるべきだ。

この零細企業のボリュームゾーンが、結構苦しい状況に陥るというのが、計算から見て取れる。

足りないお金をどこから引っ張るか?

200万円の持続化給付金をもらったとしても、雇用を維持しようとすればするほど、月商50万円の店舗では230万円(=430-200万円)を、月商75万円の店舗で445万円(=645-200万円)を、向こう1年半の間に、どこかから「用立て」ないといけないということになる。

月商100万円の事業者に至っては、660万円を「用立て」ないといけない。これを金融機関からの「借り入れ(借金)」に頼ってくださいというのは酷(こく)な話だ。

たとえば「無借金でやってきた月商50万円の零細企業」にとって、30万円のクレジットカードを限度額いっぱいに使いながら、さらに追加で同じクレジットカードを7枚分借金しなければ、生きていくことすらできない状況ということになる。

大半の中小企業は、借金しなければ事業存続が難しい

予想だにしなかった未曾有のウイルス被害で、街の人波(ひとなみ)は強制的にストップされ、中小零細企業は借金を背負わされる。

米ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューに答えた優秀なエコノミスト(経済学者)の見通しが正しければ、消費はそんなに簡単には戻ってこない。

しかし一方で、中央ないし地方政府が、全てのGDPの消失分を肩代わりできるわけではない。今回の計算が正しければ、「持続化給付金」を受け取ったとしても、月商50万円(年商600万円)の事業者は9月頃に、月商75万円(年商900万円)の事業者は7月頃には「借金」をしないと、呼吸が止まってしまう。

今年の夏から秋にかけ、ギブアップする企業が続出しても、全く不思議ではない。

今こそ工夫のとき。ベンチャーかくなるものかな

さて・・・ここまでは僕が土曜日の午前中に行った現実的な経済予想、経済分析だ。

しかし、こうやって書いてきて、当事者の僕はどう思っているかというと、むしろこの「マクロ経済の行方の悲壮感」とは真逆な気持ちになっている。

今もなお、自分のカフェを楽しくしたり、大きくしたりするアイデアが溢れ出して止まらない。

これは性格としか言いようがないのだが、難しいこと、困難が根本的に好きなのだと思う。

自分の人生、政府が助けてくれるわけではないし、元々そこに期待していない。

渋谷二丁目の「メンローパーク・コーヒー」は、コーヒーをこよなく愛し、また女性活躍を心から願う、僕の夢だ。

マクロ経済の動きと、ベンチャー企業の成長は、必ずしも同じではない(つまりカフェだって僕にとってはベンチャー企業なのであり、そのベンチャー企業はどんな経済状況下でも工夫次第で大きく成長する可能性がある)。

コロナが終わったら、もう一度、腕一本でカフェを繁盛させたいと思った。

(記事終わり)

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