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51枚目 REBECCA「REBECCA IV」(1985年)/80年代J-Rockのヒットの先陣を切った、捨て曲なしの名盤

#jrock #80s #REBECCA #NOKKO

レベッカの再結成ライヴ観てきました。全盛期のライヴは映像でしか見たことないんですけど、いい意味でも悪い意味でも昔のまま。ほんとに変わらない。
NOKKOはすでに50歳を超え、昔みたいな激しい踊りこそしないものの全盛期のハイトーン・ヴォイスは健在で、声はかなり出ていた。さすがに80年代と同じようなアドリブはしなかったけど、まだまだなんの問題もない。すげー。やっぱりレベッカで歌うとソロとは違う風格があるんですね。ほかのメンバーも現役感があってよかったんだけど、少し可哀想だったのが高橋教之b。最近ではミュージシャンはほぼ廃業状態でトラックの運ちゃんをやってるなんて話もあったので、ちょっと存在感が薄かったかな。明らかにベースの音量を下げられていたし、映像で抜かれることも極端に少なかった。これは本人からの要望かもしれないですけど。
個人的には「76th Star」のEDMアレンジがよかったな。まさか、企画もの的な再結成ライヴでこんな新機軸をみせてくれるとは思ってなかったし、アレンジそのものの出来も凄くよかった。Twitterにシングル切れば売れる!なんて書きましたが、これ、レベッカのEDMアルバムとして発売されるんですね。
それにしても、この圧倒的な存在感。もはや演奏の良し悪しとかじゃないんだよね。この感覚、どこかストーンズと似てるところがあるなぁと思ったり。

というわけで、この【名盤選】でレベッカを採り上げるのは2回目。言わずと知れた「REBECCA IV」です。まさに名実ともにレベッカをビッグネームに押し上げた作品で、ほんとにハズレ曲がない、名盤の名に恥じない作品でしょう。これまでの3枚のアルバムはいずれもミニアルバムだったため、フルアルバムとしてはこれが初でした(これは所属していたFitzbeatというレーベルが、ミニアルバム専門だったため。つまり、「REBECCA IV」のリリースで、レーベルのコンセプトは崩壊した形となりました。ちなみに、Fitzbeatを立ち上げたのは後藤次利)。

初期メンバーだった木暮”シャケ”武彦gと小沼”コンマ”達也dsが1stアルバムの「Voice Print」と2ndの「Nothing To Lose」を残して脱退。それに伴い、小田原豊ds(元ボーイズ・クラブ)と古賀森男g(自身のバンド、ファビアンとの掛け持ち)が加入。この新体制で制作されたのが3rdアルバムの「Wild & Honey」(CDの初版とカセットはシングルB面曲などが追加されており、フルアルバムと同じ10曲入りだった)。ここから音楽性が少し変化して、これまでのヨーロッパ的な哀愁を感じさせるニューウェーブなポップ路線から、アメリカの現在進行性のポップス、もっと言えば、マドンナを標榜したと思しきスタイルに変わっていくのですが、これがNOKKOのキャラにはまったのでしょう。これがオリコン6位と、初のヒットとなりました。それを受けて制作されたのが「REBECCA IV」でした。

レベッカの存在をお茶の間レベルに知らしめたのは、「REBECCA IV」に1ヶ月先駆けてリリースされたシングル「フレンズ/ガールズ・ブラボー」でした。ドラマ「ハーフポテトな俺たち」の主題歌として、「ガールズ・ブラボー」がオープニングテーマ、「フレンズ」がエンディングテーマ、さらに、「REBECCA IV」の最後を飾った名バラード「Maybe Tomorrow」が挿入歌。ドラマ自体は打ち切りのような形で終了したものの、主題歌だけが一人歩きするような形で、当時のロックバンドのシングルとしては異例の大ヒットとなりました。

弾けるようなポップさとキャッチーな楽曲、それでいてポップスにはならないシンプルな構造とロックなビート。正直、出来過ぎです。「Poison」のエントリー(https://note.mu/takashi_ikegami/n/n2a510567515d)でも書きましたが、レベッカのサウンドがユニークなのは、普通ならここはメジャー7thとか使うよねというようなところでも、お構い無しにベーシックな3和音のトライアドをぶち込んでくるところです。これによってロックらしいサウンドの図太さとシンプルさ、メジャー感、わかりやすさなどを一気に獲得しているわけです。もちろん、必要なところでは9thやテンションっぽいブロックコードなども使っていますが、違和感ギリギリのところで押し通すセンスなど、簡単に真似できるものではありません。小田原豊のスンドコドラムスのサウンドとの相性も大きいでしょう。音数をできる限り少なくした、引きの音作りもポイントです。ポップなサウンドでは様々なテクニックを使うことでより高度な音楽性を打ち出すことができますが、レベッカの強引なまでにシンプルさを目指す過激さは、もはやパンク的とすら言えます。

「プライベイト・ヒロイン」「76th Star」といったアッパーな名曲。まるでプログレなギミックを使った「Cotton Time」。壮大なバラードの名曲「Maybe Tomorrow」などなど、各楽曲について書いていくときりがないので止めましょう(笑)NOKKOの歌詞も、「ラブ・イズ・CASH」から始まった、女の子の野望とコンプレックスの両面を描いた路線が板についてきました。「プライベイト・ヒロイン」「76th Star」「ボトムライン」「ガールズブラボー」などはその路線ですね。この「Poison」に収録された「OLIVE」でしょう。

ところで、「フレンズ」のおかしなアレンジについて触れておきたいと思います。この曲はNOKKOとシャケの関係を歌っていると言われている曲なのですが、曲調も初期に戻ったような湿ったノスタルジーを宿していて、アルバムの中では異色な楽曲だといえます。曲の作りからすると、例えばBOOWYの「B.BLUE」のような(当時はまだ誕生していない曲ですが)、イケイケの8ビートにしてしまうのが常套手段でしょう。しかし、ドラムスはウラにアクセントを置いたバックビート感の強いもの、ベースに至ってはグルーヴ感を消したシンセベースなのです。これについてはどこかで僕の推測を書いたことがありましたが、知人から重要な指摘を受けました。このドラムはポリスのスチュワート・コープランドを意識しているのではないかというのです。ハッとしました。しかし、何を狙ってこのキャッチーな曲にそんなチョイスをするのか。しかもシングル曲です。その辺の理由はまだまだ謎。いつか本人に直撃してみたいところですが・・・。

あと、いっこダメ出しをしておくと、それは「London Boy」の歌詞です。作詞は前作の「ラブ・イズ・CASH」で作詞家デビューしたばかりの沢ちひろさん。歌詞の中には<古びた鐘が響けば>(ビッグベンをイメージしているのでしょう)などロンドンっぽいモチーフを使っているのはいいのですが、サビのところで<「抱きしめたい」とあの口笛で>とか<せつない「イエスタデイ」忘れはしない>など、ビートルズを連想させるフレーズが出てきます。ビートルズはロンドンではなくリバプールなんですよね・・・。超初歩的ミスなんですが、このメロディにこの歌詞がバッチリはまっていて、これはこれでまぁいいかと(笑)名曲です。

ところで、お茶の間にロックを広めたのはBOOWYだと思ってる人も多いと思いますが、ヒットということでいえばレベッカの方が先。僕自身、当時「月刊歌謡曲」という雑誌になんで「フレンズ」が載らないのかなぁと思っていたのですが(結局、ヒットが落ち着いた頃に載った)、この頃のロックは別世界だったのかもしれませんね。

【収録曲】

A1. Hot Spice
A2. プライベイト・ヒロイン
A3. Cotton Time
A4. 76th Star
A5. 光と影の誘惑
B1. ボトムライン
B2. ガールズ,ブラボー!
B3. フレンズ
B4. London Boy
B5. Maybe Tomorrow


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