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くっころ神に任命された俺は、今日も高飛車女子を恥ずかし…めるわけないじゃん!!怖いじゃん!!みんな仲良くすれば、いいじゃん!!!【第三話】

「そーれ、くっころくっころ!」

「くっころ神のお札はこちらで販売中だよー!」
「次のくっころ祭りは満月の夜だよー!」
「くっころダンジョンはこちら!」
「神さまの牛特製のMP回復もあるよ!」

今日も世界´はおおむね平和だ。

町にはくっころ神を慕う人々がボチボチおり、やけに牛マスコットを持つものが目立つ。…なんで俺よりもよだれその他もろもろ垂れ流しのリアル牛の方が人気あるのかわかんないけど!

なんだ、ええと…その。

俺はだな、やけにフレンドリーな神としてだな。
人々に、認識されるようになっていたりするのだ。

ここは、くっころ教総本山。

降臨中の俺が基本的に滞在している場所。
俺にまつわるものが色々とある場所。

俺が作ったローグ式のダンジョンを中心に、宿屋/道具屋/武器屋/くっころ教本部/くっころ温泉/ぽっくり病院/くっころミュージアムにくっころ劇場あと…学校もあったかな?

元は何もない荒野だったんだけど、随分…様変わりしたもんだ。
…これからも、変わっていくのかね。

「あ!神さま、こんにちは!」
「ういっす!どお、何か困ってない?」
「こまってなーい!あ、お金あんまりなーい!」
「じゃ、働け!乙!」

「あ、神様降臨中だ、拝んどこ!」
「今日も無事降臨されとる…最近はきれいなお姿ばかりで…ようございます。」

俺は今、日課の総本山ウォーキングの真っ最中。一般市民が声をかけることもあれば…遠くで手を合わせる人を見ることもある。
つかず離れずの、いい関係が、築けている…と、俺は思ってる。

だが、ここに来るまでは…結構、迷走したんだ。

荒んだ世界´を穏やかな世界にするために、原因となる奴らをどんどん消していかないといけなくてさ。

「なに、では貴殿は命を自由にすることができるというのか。」
「うん、だからさあ、悪い奴らとっとと殺していこうと思うんだけど、いい悪い奴ら知らない?」
「いい?!言葉の選択がおかしいではないか!悪者はすべからく悪者であり、粛清されるべき存在であって、いいなどという表現は実に…!」

やけに真面目な姉ちゃん…イタチちゃんはだな、実に怒りっぽくて相当怖くて大変ではあったものの、かなり優秀な助手として活躍してくれたんだな。

手配されてるような悪人どもを片っ端から殺していったんだけど、割とこう、問題に直面することが多くてさ。そういう時のサポート力がハンパないのなんのって。

知名度のあるイタチちゃんがいたからこそ色んな情報が入ってきたし、行動に移せたんだ。うっかり溺れた時も、爪一枚になっちゃった時も、おばけ扱いされて放火された時も…いつも助けてくれたし。

世界´ってのは、けっこう何とかなるもんらしくてさ。わりとひどいことやってる奴らを派手に壊滅させてもなんとかなったんだな。
もともと、どっかの誰かが気楽に生み出した世界なんだ、この世界´は。
そんなに気構えてかかんなくても、なんとかなるに決まってたんだな、多分。

俺、ちょっと真面目に考えすぎてたみたいだってね。
もっと気楽に、神様やっときゃよかったんだってね。

おかしなことを言う奴はその場でぽっくり、それで何とかなっていった。

「あの農場のやつらを惨殺したいのだが。」
「はいアウト―、ぽっくりぽっくり!!」

「敵国を消滅させたい。」
「はいアウト―、ぽっくりぽっくり。」

「神!お前を殺して俺が神になる!」
「はいアウト―、ぽっくりぽっくり。」

「あいつがうらやましくて仕方がない、殺してほしい。」
「はいアウト―、ぽっくりぽっくり。」

「人を殺したいのだが。」
「はいアウト―、ぽっくりぽっくり。」

「少々気楽にぽっくりし過ぎなのではないか?!」
「ええー、難しい事ぬかす頭の固いジジイどもはぽっくりでいいじゃん…。」
「貴殿には敬うという感覚が存在せぬのか!大体だな…!…聞かんか!」
「…ちょ、耳、ちぎれるから!引っ張りすぎ、ダメ絶対!」

けっこう、かなり、随分、相当、イタチちゃんにド叱られながら、少しづつ、世界を変えていったのさ。

「も~、イタチちゃんはちょっと真面目すぎるんだよ、もっとさあ、肩ひじ張らずに、ゆるーく、行こ?ね!!」

「おぬしは緩すぎるのじゃ!その緩すぎる下半身を…何とかせい!…だから尾っぽを振り回すなと、言うておろうが!アアア!く、唇に飛んできた!!ペッ、ペッ!」

あれは…イタチちゃんが二人目の娘を産んだあたりだったかな?俺の肉体がさ、不注意で腐敗しちゃってさ、病原の媒体になるってんで、燃やすことになっちゃったんだな。

……ずいぶんぶりに、天界に帰る事にしたんだ。

帰ったら、また「くっ、殺せっ」のセリフが吐かれない限り、また地上に降臨することはできない。ずいぶん悪者の減った世界´で、「くっ、殺せっ」が、発生する確率はかなり、低いと、思われた。

「では…聖炎で…送り、ます。神よ…今まで、ありがとうござ…ううっ…!!!」

「イタチちゃん、今まで、ありがとう。」
「…っ。」

俯き、涙をこらえる、イタチちゃんの、姿。
わりと腐りきっててキモかったのに、俺を抱き締めてくれてさ。

……その横で、牛がいつも通りに…ばっしゃばっしゃと!!!
なんという空気を読まない、絶好調な消化っぷりなのかとあきれ返っていたのだが。

「くっ…、殺せ…。わしは、貴殿のおらぬ、世界…などっ…!!!」

きゅ、きゅい…

こ の お と は !

きゅ、きゅいいいいいいいいいいいいいいん!!!

「はへ?!」

久しく聞いていなかった、あの音が!

聞こえた、瞬間!

薪の上に立っていた、俺の空間がねじれて…!

グゥええ!気持ち、悪いぃイ!

…ってね。

俺は、新しい肉体を、手に入れたんだな。
ピッカピカのつやつやの、新しい肉体。

腐りきったのは、渦に巻き込まれて消えてくれてさ、薪も無駄に燃やさずにすんでさ。

「ど、どうなっておるのだ!わしの、儂の涙、返さんかい!」
「おお、ごめんごめん、まあまあ、これからもよろしくね?」

新品の体がだな、早々に絞殺されそうになって、焦ったのなんのって。

どうやら「くっ、ころせ」このキーワードで、俺は召喚される仕組みになってるらしい。

そこで俺は考えたわけだ。
これ、うまく使ったら、いい感じに悪い奴ら、抹殺できねえかなってさ。

神を呼び出してさ、悪い事企む奴っているはずだと思ったんだな。
神を誑かせると思ってる、悪い奴っているはずだと踏んだんだな。

くっころ教を作って、「くっころせ」を、開放したんだ。

山を削ってくっころ総本山を作り、そこで祭りを開催し。
くっころ教本部で、適当な経典を作って。
俺を呼び出すキーワードを配布した。

「くっころせ!」
「オッスオラ神様、なんかよう?」
「悪魔どもが気に入らないから、滅亡させたい。」
「うーん、無理、あの人たちも意外といい人で…。」
「貴様など、神ではない、死ね!」

「うーん、アウトだね、ぽっくりぽっくり。」

「くっころせ…。」
「オッスオラ神様、なんかよう?」
「人間などすべて滅べばいい…我が血肉を捧げる、全人類を…」

「うーん、アウトだね、ぽっくりぽっくり。」

「くっころせー!」
「オッスオラ神様、なんかよう?」
「ぎゃあああああ!ほんとに出た!お金ちょうだい、ハーレム欲しい、アレも欲しいこれも欲しい!」
「うーん、自分で何とかしなよ!」
「なんだよ!できねえのに神かよ!死ねよ!」

「うーん、アウトだね、ぽっくりぽっくり。」


愚かなにおいがしたやつは、サックサックと殺していってさ。
わりと順調に粛清が進んで行ったんだな。

週間ぽっくりニュースの影響もあって、人々の認識がずいぶん変わったんだ。

みんな仲良く、適当にってさ。
みんな平等、争うのは危険だってさ。
みんな生きてる、命は大切にしようね、自分のも、他人のもってさ。

誰かを恨んで神様呼び出して、殺してほしいと願ったところで殺される。
誰かを恨んで神様呼び出して、殺せたところでどこから飛び火してくるかわからない。

巡り巡って自分が殺されるパターンがあるって学んだんだな、人々は。

―――くっころくっころくっころせ!!神さま―こっちきてー!!!

おお、呼び出しが来たぞ!

もうずいぶん召喚慣れしてしまった俺は、気持ち悪くなることもないのさ。
実に華麗に、俺を願う誰かの元に現れることができるのだ!

ぼよん!

「呼ばれて飛び出てウヒヒのひ!オッスオラ神様、なんかよう?」
「あたし美味しいものつくったの!初めて作ったの、一緒に食べて!」

おお!実にうまそうなハンバーグが!よーし、肉体の味覚繋いで賞味させていただこうか、ぐふふ、腹いっぱい食うぞー!

「わーい、美味しいものだ!僕も食べる!」

召喚されると牛も自動的についてくるんだよなあ、地味に邪魔だ…俺の食う分が減ってしまう。
……つか、いいかげん牛のくせに肉食うのやめたらどうなんだ。

「え…牛さん、食べるの…?」

ドンビキする少女の横で、牛が!

びっしゃ!びっしゃ!

「きゃあ!!!」

「ちょ!おま!ここ玄関ド真ん前!市街地の中心部!ちょっとは自重しろよ!またイタチちゃんに怒鳴られるぞ!」
「だって出るもんは仕方ないでしょ!も~、細かいこと言わないでよ…。」

気のせいか、最近呼び出し回数がさあ、減ってる気がするんだよね。
もしかして、牛の絶好腸が関係してるんじゃないかって、薄々、気が付いていたり、しないでも、ない…。

「ちょ!しっぽ振り回すなよ!は、ハンバーグに入るだろ!」

「あはは!神さままたなんかやってる!」
「牛さんに草あげていいですか!」
「おーい、神様の牛のお恵みあったから、砂持ってきてー!」
「神様、帰りこっちでパン食べてってー!」
「神様―、これイタチ婆さんに返す聖本、渡しといてもらっていい?」
「ごめん、ゴキブリ退治してもらっていいかな…?」

…うん、俺、人気、あるよね?

…この世界で、うまく、やってるよね?

俺は、ちょっと塩の効き過ぎた、生焼けのハンバーグをいただきながら。

今日も、くっころ神を…満喫、している。

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