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焼けていく、焼けていく…

ジャワジャワジャワジャワ……
シャワシャワシャワシャワ……

キャー!!!
ざっぱーん!!!

キャハハハハ!!!
ザザザー!!

《《本日は、○○レジャープールへお越しいただき、誠にありがとうございます!迷子さんのお知らせです、四歳ぐらいのツインテールの、マリちゃんとおっしゃるお子さんを…》》

目に耳に騒がしい、真夏の大型レジャープール

………久しぶりに、この場所を、訪れた

何年ぶりだろう、ここに来るのは
毎年訪れていた時代が…懐かしい

あの頃は子供達も、まだずいぶん小さかった
一緒に浅いプールに入って、水遊びを延々と楽しんだものだ

しみじみと昔を思い出している私の横で、タコ焼きに焼きそば、カレーにスイカ、その他もろもろを食べている、息子たち
どうやら思い出よりも食い気らしい

あんまり食べすぎると、腹がせり出すけどいいのだろうか
あんまり散財すると、晩御飯がそうめん続きになるけど、いいのだろうか

遠慮を知らぬ若者どもは、親の心配など微塵も気にせず…本気ではしゃいでいる
さっさと食べるものを喰らいつくして、行列の出来ているスライダーの方へと駆けていく

それを見送る私は、真夏の日差しを浴びに浴びて…ややグロッキー気味
サンサンと輝く太陽は、私の肌を…焼いている

じりじりと…焦げてゆく、私の身体

ああ……今、私は、日に焼けている
無防備な皮膚が、紫外線をノーガードで受け止めている

昨日ドラッグストアで買った、強力な日焼け止めを持ってくるのを忘れてしまった、私
己のうかつさに…涙が出てくる

やけに太陽の日差しを受ける事を意識した、見晴らしの良い…レジャープール
風が通り抜ける、広々とした開放感あふれるデザインが…目に染みる

……こんな事に、なるなんて

昔は持ち込みOKだった日傘が、持ち込み禁止になっていた
昔は誰も使っていなかったパラソル席が、すべて予約で埋まっていた
昔はプールサイドを覆っていた屋根が、全て取り払われてアドベンチャーコーナーになっていた

……こんな事に、なろうとは

ああ、せっかくの日常の日焼け止め対策が…今日一日で、すべてパアだ
ああ、アレほどまでに日光を避けてきた日々が、今日一日で台無しになる

……悔やんでも、どうしようもあるまい

私は今日、この場所に来てしまったのだ
私は今日、この場所で日差しを受ける事を決めたのだ

………昔は、はりきって肌を焼いた時代もあったことを、思い出す

たまにはこんがりと焼いてみるのもいいかもね
たまには肌に子供の頃を思い出させてもいいかもね
たまには太陽の力を身体にチャージしてもいいかもね

真夏の太陽に照らされて、水に濡れた肌が乾いてゆく
真夏の日差しが、買ったばかりのかき氷を溶かしてゆく
真夏の陽気なオーラが、凝り固まった私の心をほぐしていく

そうだね、思いっきり楽しまないと
そうだね、思いっきりはしゃがないと
そうだね、思いっきり羽目をはずさないと

私は空っぽになったカキ氷のカップをゴミ箱に投げ入れ……

大きな浮き輪を持って、流れるプールへと向かった

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