インターネットの世界は「デジタル」ではなく「フィジカル」だ
なんとなく勢いでタイトルを付けてしまいました。
僕は昨年1月からとある眼鏡屋さんでコラムを書いているのですが、きっかけとなったのが僕の書いたブログでした。
眼鏡を新調しようとしていたところ、友人に薦められたのがこちらの眼鏡屋さんだったのですが、お店の雰囲気、眼鏡のセレクション、そして何より店主の人柄に惚れ込んでしまったんです。
それで、あまりにテンションが上がってしまって眼鏡を買った当日にブログを書きました。
ご存知の方も多いと思いますが、眼鏡は買った当日には手に入りません。自分の視力に合わせたレンズを作り、フレームに入れて完成します。なので買った日から1週間から2週間くらい経って自分のものになります。
買った日から2週間後、つまりはブログをアップしてから2週間後に、完成した眼鏡を取りに改めて眼鏡屋さんに行きました。
「ブログ読んだよ」そう店主に眼鏡を渡されながら言われました。
嬉しさよりも断りもなく勝手に書いたことに後ろめたさもあって、「あぁ、すいません」と応えていました。
すると店主は「いやいや、すごく良くてさ。僕を取材したどのメディアよりも魅力が伝わってたよ」と言ってくれました。
それから意気投合してよく飲みにいく仲になりました。その間も僕の書いたブログを読んでは会う度に「あれは良いねぇ」と褒めてくれたり、彼の知人のシャツ屋さんやカバン屋さんや靴屋さんにも「この人のブログ読んでよ!」と紹介してくれたりもしました。
で、何回目かの飲みの席で「コラム書かない?」となったわけです。眼鏡屋だから眼鏡のことを書くのか?そうであれば申し訳ないけれど役に立てそうにない、そう伝えると「眼鏡のことは書かなくていいよ。君が書きたいことを自由に書けばいいから」と笑って応えました。
「え。それでいいんですか?」と訝る僕に、続けて彼はこう言いました。
「僕は君の文章が好きなわけだからサイトに載せるわけ。僕の好きなものを見てからお店に来る人はこの店と相性が良いということでしょう?」
「ピラミッド型」から「同心円状」のカスタマージャーニーを
カスタマージャーニーというマーケティングの考え方があります。
これはザックリ言ってしまえばターゲットとなりうる人になるべく多く広告(もしくはコンテンツ)を投下して、反応してくれた人に対してその後いろんな手間を惜しんで(コンテンツやらキャンペーンやらを貼って)好きになってもらうことを主眼に置いています。 LTVなんて言葉もあります。
この流れは、多くの人に知ってもらってからトーナメント方式にユーザーを絞っていくので「ピラミッド型」(もしくはロート型)と言えるかと思います。
webであればユーザーは追いかけることができますから(細かいことはここでは触れません)より効率が良い。だからマーケッターは方程式のようにこれになぞらえてマーケティングを考えます。
もちろん有効な手法です。マス商品であればなおさらこの手法に則ることが正解なのでしょう(今のところ)。
でも先述した眼鏡屋さんの取り組みは明らかにこれとは真逆の手法です。
多くの人、ではなく、自分のやりたいことに共鳴しうるごくごく少ない人(ここでは以後味方としましょう)とまず手をつなぐこと、その手をつないだ味方がさらに味方を連れてくる。まるで主人公である眼鏡屋さんが真ん中にいて、そこから同心円状に味方を増やしていく、という手法です。
なんだかまどろっこしいやり方です。気が遠くなる気もしますし、なによりシミュレーションが効かないですよね。だから企業では採用されづらい。3ヶ月先にどういう結果を出すかを問われる現場では受け入れられなくて当然です。
しかしながら、実際に僕のひとつのブログが眼鏡屋さんと強く結びつけ、そこから僕の周りの人に拡がっているのは事実としてあるわけです。それはインターネットのあたたかい側面でもあります。
このあたたかさを知ってしまうと同心円状のマーケティングの可能性に肩入れしたくなりますし(悪い癖です)、今インターネットを通じたサービスで盛り上がりを見せているプレイヤーたちの多くは同心円状を辿っているようにも思うんです。
クリックの0.1%をはかりにかけてPDCAを回すデジタル思考から、ひとりの味方とつながり拡げるフィジカル思考へ。そんなインターネットなら、webマーケティングも楽しくなりそうじゃないですか?
「フィジカル思考」でうまくいったよ、という方の話を今とても聞きたいです。教えてください。
ありがとうございます。 サポートって言葉、良いですね。応援でもあって救済でもある。いただいたサポートは、誰かを引き立てたたり護ったりすることにつながるモノ・コトに費やしていきます。そしてまたnoteでそのことについて書いていければと。