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性格特性は研修での学びに影響する!?

実務的な観点から研修転移に興味を抱いて立教に入ったものの、授業や課題に追われてついつい後回しになっていました。不思議なもので、後回しにしていると、実務でその領域の課題に直面します。今週、ありがたいことに、ある大先輩にご相談させていただく機会をいただき、貴重な示唆をいただきました(感謝感謝!)。

その準備もあったので、頭を研修転移のモードにしようと、再び先行研究論文を読み進め始めました。今回扱う論文の主題は、性格特性が研修での学びにどう関連するのか、についてです。小難しく書くと、Big Five尺度(性格特性論の代表的な一つで、情緒安定性、外向性、開放性、調和性、誠実性の五つの尺度で性格を測るもの)が研修転移にどのように影響するのか、ということです。以下の論文を基にまとめてみます。

Rowold, Jens (2007). "The Impact of Personality on Training-Related Aspects of Motivation: Test of a Longitudinal Model". Human Resource Development Quarterly 18(1)

(1)性格特性は学習意欲や研修転移に影響を与える

以下の図をご覧ください。ポイントは二つです。

第一に、研修に対する態度は、学習意欲を媒介して研修転移に影響すると共に、直接的に研修転移にも影響する、としています。研修に対して前向きな態度を取る参加者は、学習意欲も高く、事後の研修転移にもポジティヴに影響するということですね。

第二に、性格特性が学習意欲や研修転移に影響を与えることを、この図は示しています。こちらが本論文の趣旨でもあるわけです。

(2)Big Fiveの何が影響を与えるかは追加の研究が必要

では学習意欲は研修転移に影響を与えるのでしょうか。本論文では、先行研究と異なる主張を取っています。

While prior research highlighted the importance of conscientiousness (Colquitt et al., 2000) and openness to experience (Lievens et al., 2003), the present study underlined the importance of the other three Big Five (extraversion, agreeableness, and emotional stability) personality
characteristics.

先行研究では、開放性や誠実性が研修転移と関連するとしていたのですが、本論文では外向性、調和性、情緒安定性の三つこそが重要であるとしているのです。

ここまで先行研究と真逆の主張をされると悩ましいものです。しかしながら、性格特性と研修転移と関連を示すということは留意することが重要なのでしょう。

(3)研修前に参加者の意欲を高めることも重要

(2)で述べた理論的含意からどのような実践的含意が導き出されるのでしょうか。以下が参考になりそうです。

Thus, attempts to foster trainees’ motivation are imperative not only for participation in the training itself but also for the subsequent transfer of training (Gaudine & Saks, 2004).

参加者の意欲を高めることは、研修自体だけではなく事後の研修転移にも有効だと言えそうです。したがって、効果が高いことが予期される参加者の意欲向上というポイントに、研修の企画担当者は十分に留意することが重要なのではないでしょうか。

どうしても研修の企画担当者は研修自体のデザインや詳細設計に注意が向きがちです。しかしながら、研修に目を向けるのではなく、参加者に目を向けて事前に意欲を高めることに力点を置くことが必要なのかもしれませんね。

【今週の一冊】
中原淳・島村公俊・鈴木英智佳・関根雅泰『研修開発入門 「研修転移」の理論と実践』(2018年、ダイヤモンド社)

英語論文も必要に応じて読みますが、和文があればそれに越したことはないわけです(笑)。研修転移を日本語で体系的にまとめている(おそらく唯一の)以下の書籍は何度となく読んでますが、問題意識がある時に読むとまた新たな発見があって良いものです。

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