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『対話型組織開発』を斜め読み:序文 対話型ODー過去、現在、そして未来

本書の序文はエドガー・H・シャインの手になるものであり、必読の箇所と言えるでしょう。ポイントを見ていきましょう。

(1)学び方を学ぶ支援のあり方としてのプロセス・コンサルテーション
(2)保留を重視する対話のプロセス
(3)VUCA時代こそ対話型組織開発のアプローチが有効

(1)学び方を学ぶ支援のあり方としてのプロセス・コンサルテーション

自戒を込めて言いますと、事業会社は外部のコンサルタントに解を求めすぎです。仮に、ベンチマーキングやソリューション提供によってある時点における最適解が提示されたとしても、VUCA時代においては「合理的な正解の賞味期限」はどれくらいなのでしょうか。

シャインは、本書でもプロセス・コンサルテーションを再提示しています。つまり、コンサルタントにとって最も大事な仕事はクライアントが学び方を学ぶことができるように支援することと端的に述べています。こうしたあり様は、対話型組織開発の萌芽であったと考えてよいのでしょう。

(2)保留を重視する対話のプロセス

ではどのような対話が求められるのでしょうか。デイヴィッド・ボームの流れを汲むウィリアム・アイザックをシャインは引きながら保留という関わり方の重要性を提示します。

保留とは、「誰かが意見に反対した場合、反論してもよいし、あるいは黙ったままでいて、なぜ自分は反論するのか、このことから自分自身の何がわかるのかを、自問してもよい。」(Kindle No.425)という状況です。つまり、評価・判断を下すことを留めて、自分自身がそれをどのように受け止めるのかを内観するということでしょう。

相互に観察と内観をやりとりすることで、他者の意見に意識を集中しやすくなり、また自分自身の内なる声も聞こえやすくなるというようにシャインは指摘しているのです。

(3)VUCA時代こそ対話型組織開発のアプローチが有効

VUCAという言葉が日本でも流行ってから数年が経ちました。年を経るに連れてVUCAの度合いが高まり、個人と個人、組織と組織、個人と組織との関係性も複雑になります。こうした状況下では、文化や集団の歴史に基づいた語り(ナラティブ)を通じてお互いの相違を理解して組み合わせることで、適応的な学習を進めることが求められます。

対話を通じて生成的に意味を紡ぎ出し、組織として共有・更新しながら現実に適応させていく対話型組織開発のアプローチは、現代においてその有効性が増してきていると考えられます。


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