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思考×サッカー〜岩政大樹著『FOOTBALL INTELLIGENCE』を読んで〜

サッカーにおける組織論を考えることは、企業における組織論を考える思考訓練になるのではないでしょうか。本書は、サッカーを理解するための素晴らしいテクストであるとともに、企業組織を考える上でのインスピレーションも得られたような気がします。

サッカーファンの多くは、組織のあるべき姿を語りたがるし、組織論の流行り廃りがあります。アリゴ・サッキのゾーンプレスを真似してみたり、アンチェロッティの4-3-1-2が流行れば多くのチームが導入します。

組織に関心が向くのはいいのですが、固定的な「自分たちのサッカー」に固執していないでしょうか。ゲームにおいて、相手を見ることなく事前に想定していた「自分たちのサッカー」に気を取られ、相手チームの組織や個人の動きが視界から消えてしまっては意味がありません。

 言葉が独り歩きを始めると、何かのスタイルが「善」となり、いつからかそのスタイルを追求することがチームの目的と化す場合があります。そのとき、相手が見えているでしょうか。(108頁)

本書では、代表的なシステムの急所を踏まえたうえで、相手(正確には相手のベクトル)を見ることを提唱します。そのうえで、相手チームをどのように崩せるかを選手間でイメージしたうえで自組織の再構成を重視します。つまり、システムにおける強み・弱みがあることを理解した上で、あくまでゲームの中で見極めるのは相手なのです。

 システムの急所を把握して試合に入ったら、少しずつ相手を見ていきます。相手を見ながら、見つけていくのはスペースです。そして、「空いたスペース」も相手が知らせてくれます。
 正確には、”相手のベクトル”を見ながらプレーすることが重要です。(200頁)

こうした考え方は、企業組織にもアナロジーがあるのではないでしょうか。

企業においても、経営に関するトレンドがあります。最近の日本企業で言えばタレント・マネジメントでしょう。しかしながら、概念が一人歩きすると、その概念が生じた文脈が取り除かれ、マニュアル化されたステップを踏むことが目的になりがちです。タレント・マネジメントも、自組織にとって都合の良い将来像を見出して、逆演算方式で組織と人をアサインし、静的に粛々とこなすことを求めていないでしょうか。

しかし、VUCAという言葉が当たり前のものとして定着しつつある現代のビジネスにおいて、静的なアプローチはどこまで有効なのでしょうか。周囲(社会、顧客、市場、競合、ステイクホルダー)の動きを踏まえたうえで、自組織のもつ強みとなるリソースを検討する。当たり前かもしれませんが、ある時点での正解は一か月後には不正解となるので随時更新することが求められます。動的なアプローチの起点は、常に周囲にあるのではないでしょうか。


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日系メーカーの人事部門勤務。横浜出身、東京在住。履歴:1981年生まれ。2003年慶應SFC卒。人材開発コンサル、ITベンチャー、医療機器、外資製薬を経て現職。勤務の傍ら2009年に慶應SFC院(修士)修了。家族:妻。趣味:読書、マラソン、山登り、温泉、日本酒、美術館巡り。
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