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マラソン日記・番外編 #4.1 大迫傑『走って、悩んで、見つけたこと。』を読んで。

先日の東京マラソン、すごかったですね。その中でも、自身の持つ日本人最高記録を更新した大迫傑選手の走りに感動をおぼえた方も多いのではないでしょうか。かくいう私もその一人です。

本書では、昨年のMGCの前の時点における大迫選手の想いが記されています。彼の言動からは、感覚的にものをいうのではなく、考えて考え抜いたものを表出している様が見て取れます。日常的に考えているからこそ、その言葉には力が込められるのでしょう。

本書を読み進めると、やっぱりマラソンっていいなぁと思ってしまいます。特に感銘を受けたのは以下の三つの考え方です。

(1)マラソンでは自分と向き合う過程が大事。
(2)前を見るのではなく自分の足元を見よ。

(3)言い訳をしない=自分にフォーカスすること。

(1)マラソンでは自分と向き合う過程が大事。

マラソンはレースで得るものよりもトレーニング期間で少しずつ気づいていくものが多い気がします。それは一瞬一瞬、ひとつひとつのピースを大事にしていくこと。(中略)目の前の自分と向き合う大事さはマラソンを始めてから知ったことです。(33頁)

常に結果を出してきたように思える大迫選手でも、結果ではなくプロセスが大事であるとしているところがすごいですよね。ただ、そのプロセスの中では自分自身と向き合うことが求められると言っていることに留意が必要でしょう。これは、非常に厳しいことです。妥協することなく、自分自身を律するということが、プロセスと真摯に向き合うということなのでしょう。

(2)前を見るのではなく自分の足元を見よ。

辛いときこそ前を見るのではなく、下を見て一歩一歩進んでいけば、そんなに苦しむことはないと思います。不安や焦りは他と比べたり、他人からの評価について反応してしまうからであって、自分の足元だけを見ていれば、その瞬間瞬間に価値があるということが分かるはずです。(122頁)

走ることは気持ち良いことですが、マラソンともなると辛いときは当然あります。負荷をかけて走るプロのランナーであれば、なおさらでしょう。

マラソンに限らず、他の事象においても逆境は訪れるものです。そうした時に、前を見るのではなく下を見ること。足元を見つめて、自分の足跡を振り返ることで、大事にしている価値を見いだすことできるのかもしれません。

(3)言い訳をしない=自分にフォーカスすること。

大迫選手は、誤解を招くことも覚悟して述べていると思うのですが、私は以下の大迫選手の言葉にいたく共感します。

1日24時間という制約がある中で、競技においては、いかに必要のないものを取り除いて、必要なものだけで自分の身を固めていくか、無駄を省いていく作業がすごく大事になってきます。そう考えると他人と協調したり、他人に合わせ、寄り添って練習をするというのは、僕にとってはなんのメリットもない、無駄な作業に思えてしまうのです。協調性がないと言われればそれまでですが、目的を達成するためには、他人のことに関わっている場合ではない。結局、100%自分のことを考えられる人は自分しかいないんです。(83〜84頁)

言い訳をしないためには、自分自身がベストを尽くすことに焦点を当てることが第一になるという発想もあるのかなと。ただ、何も大迫選手は他の選手と協働しないということでは全くなく、むしろ本書でも「ライバルをリスペクトすること」という節を設けていることでもおわかりいただけるでしょう。

2020年の東京マラソン前にケニアで行なっていた合宿中に、同じく同地を練習の拠点としていた神野大地選手とのYouTubeなどは微笑ましいものがあります。

高みを目指す志向性を自分自身が持つことは、同じようなライバルをリスペクトすることに繋がります。このように捉えれば、高みを目指そうとする者同士でお互いに高め合うことは自然なことなのかもしれませんね。


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