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立教LDCでの学びログ_2020.04.26

大学の授業のため、最近は、オンラインのリアルタイム研修のことを考えています。では、リアルタイムのオンライン学習と企業研修は何が異なるのか。数日前、その相違を実践的に理解する機会が訪れました。

弊社にて、2月に受けた研修の続編をオンラインで受講しました。前回の研修と今回のオンライン学習を比較すると、講師も、事務局も、受講者も全て同じ、というまさに条件が統制されたうってつけの状況です。2月の時点で、講師は素晴らしく、事務局のサポートも丁寧、周りの受講者も優秀、ということはわかっていたので、私にとってはオンラインとオフラインの差を比較する最適な実験の場でした。

通常のオフラインでの企業研修と比較して、今回、気づいたオンラインでのリアルタイム学習における留意点は以下の三つです。

(1)こまめにアクティビティを変える必要あり。
(2)全体共有の時間のファシリテーションに要注意。
(3)学びの個別化は学びの共同体を阻害するリスクあり。

(1)こまめにアクティビティを変える必要あり。

通常の企業研修では、ファシリテーターの目の前に受講者がいます。反応を見れば、説明の長さを変えたり、例示を工夫したり、あるワークを箸折ったり臨機応変に対応できます。しかし、オンラインでは観察が充分にできません。通常の研修のように行うと、受講者の集中が切れているままワークを持続させてしまうリスクが高まります。そのため、ワークを頻繁に変えて多数の受講者を飽きさせないことが有効と思われます。

こまめにアクティビティを変える際には、中原先生のブログ(http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/11523)にもあるように15分をめどに学習単位を設けることが良さそうです。この時間設定は、通常の企業研修よりも短いのではないでしょうか。(以下は上記ブログからの抜粋)

(2)全体共有の時間のファシリテーションに要注意。

企業研修では最初のセッションで自己紹介やチェックインといった全体に対して自身の現状をシェアする時間があります。安心・安全な場を作って、本音でコミュニケーションを行うために大切な時間です。

しかし、オンラインで同じように行うとダレるリスクがあります。受講者の中には話すことが得意な方もいれば、そうでない方もいます。通常の研修では、話すことが苦手な方は、周囲の話す内容を見て真似したり講師のアイコンタクトによって調整しながら話せますが、オンラインではそれが機能しづらいようです。その結果、冗長に話す方は冗長に話し続けてしまい、話す時間が研修時よりも長い印象がありました。

このリスクは、自己紹介だけに止まらず、全体共有や発表の場面でも同様に見られます。ファシリテーターは、通常の研修よりも時間管理を厳しめにすることが、受講者全体の学びのために必要なのではないでしょうか。

(3)学びの個別化は学びの共同体を阻害するリスクあり。

私は、今回の研修を受けるまで、オンラインのリアルタイム学習の最大のメリットの一つとして学びの個別化があると考えていました。つまり、学習者個人が、自身が学びたいことに学習内容を引きつけて捉えることができ、質問も随時できるという個人のニーズにあった学びの場にできると考えていたのです。

この仮説は正しかったように感じます。しかしながら、学びの個別化は、集合研修のメリットである学びの共同体を阻害してしまうリスクもあると今回実感しました。主張度合いが高い受講者が、自身の学びに合わせて質問を繰り返すと時間はかかります。その結果、他の受講者にとっては無意味とも捉えられる時間が延びていきます。引いては、学習者同士が学び合う面の学びの時間が減り、一部の受講者と講師との線の学びの時間になってしまいかねません。

この点についての解決策は軽々には思いつきません。ポイントとしては、受講者同士が学び合えるように相互理解を深めるアクティビティを早い段階でセットしたり、学習者の学習目的やレベル感を合わせて選定するなどの工夫が必要と言えそうです。

集合研修とリアルタイムのオンライン学習との違いを理解することは、リアルタイムのオンライン学習をデザインする上で必要不可欠なことなのではないでしょうか。

【今週の一冊】※立教LDCとは必ずしも関連しません。
田中研之輔『プロティアン』(日経BP、2019年)

修論ではキャリア意識を扱いましたので、本書の骨子を為しているプロティアン・キャリアという考え方やそれを提唱したD・ホールの名前は知っています。ただ当時は、原文を読み飛ばしで眺めた程度です。本書は実践的なビジネス書であり、ホールの考え方を噛み砕いて現代に活かせるように簡潔に書かれています。詳細は原文をお読みいただいた方が良いですが、変化の時代におけるキャリア論をかいつまんで理解するのに適した入門書と言えそうです。


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