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『対話型組織開発』を斜め読み:第1章 対話型ODのマインドセット

対話型組織開発と診断型組織開発は対比的に捉えられますが、必ずしも全く異なるものというわけではありません。同じ「組織開発」なのですから当たり前といえば当たり前ですね。では、何が同じで何が異なるのでしょうか。

(1)診断型組織開発と対話型組織開発の類似点
(2)対話型組織開発で求められるマインドセット

(1)診断型組織開発と対話型組織開発の類似点

まず診断型組織開発と対話型組織開発の類似点から見ていきましょう。

まず組織開発は、診断型であれ対話型であれ、人間尊重の価値観民主的な価値観に基づく実践により、人々をエンパワーするものであり、組織における人々の協働を推進するためのものです。その活動の中では、組織に内在する価値観・働き方・協働のあり方といったシステムについての気づきを高めることを目指します。

こうしたシステムへの注目を目指すために、何を行うかというコンテントではなく、その関与における一連のプロセスをコンサルタントは重視するという特徴があります。したがって、人や組織といった要因自体ではなくシステム全体の有する能力の向上と開発・発達を促進するわけです。

ここまでは診断型組織開発を対話型組織開発が受け継いできた共通項を見てきました。ここからは、対話型組織開発の特徴が端的に現れるマインドセットの主要な前提を見ていきましょう。

(2)対話型組織開発で求められるマインドセット

(2−1)依拠する考え方:社会構成主義

診断型組織開発では実証主義に基づいて客観的なデータに基づいて現実を捉えようとします。端的にいえば、サーベイの結果そのものが現実を表していると考えるわけです。それに対して、対話型組織開発では社会構成主義に基づき、現実は社会的に構成されると捉えます。つまり、真実は、客観的に正しいものが一つ存在するのではなく複数のものが存在するという考え方です。

(2ー2)言葉を重視:ナラティブ・アプローチ

組織の構成員が捉える現実のあり方が人によって異なるのであれば、それぞれの人物がどのような言葉を用いるかを丁寧に見ていく必要があります。つまり、客観的に観察可能な行動や結果というよりも、どのような言葉を使い、どのような物語を紡ぎだそうとしているかに着目することになります。一人ひとりの語りに注目するこのようなアプローチをナラティブ・アプローチと言います。

(2−3)日常における自己組織化と転換期における創発的変革

一人ひとりが語りをぶつけ合い、対話を行うことで組織の現実が生成されていきます。メンバー間の対話は日常的に行われるわけですから、組織は固定的なものではなく、日常的に自己組織化される動態的な組織と捉えられます。転換期においても、変革のプロセスは計画的なものというよりも創発的なものとなります。組織が静態的にあるのではなく、メンバー間の対話によって生成的になされると考えれば創発的変革ということはイメージしやすいでしょう。

(2ー4)コンサルタントはプロセスの一部

こうした自己組織化と創発的変革におけるコンサルタントの位置付けは、組織外部から客観的な評価を下す存在ではなく、組織内部のプロセスの一部として位置付けられます。コンサルタントというとやや引いた目線から指摘する存在と思われることも多いと思いますが、対話型組織開発が提示する位置付けは、コンサルタントに対しても組織のメンバーに対しても覚悟を問う重たいものと言えそうです。


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