【論文レビュー】組織社会化をプロセスで捉えた研究群の先行研究:小川(2006)
査読論文を読むのも好きではありますが、学位論文の方がもっと自由な感じで書き手の気持ちも伝わってくるような気がするので好んで読むことがあります。組織社会化について改めてインプットしたく、とある場で紹介された小川憲彦先生の博論を読んでみました。組織社会化の先行研究は、①過程理論と②内容理論の二つに分けられるとしています。今回は、①過程理論についての先行研究部分から印象に残った点を抜き書きしてみます。
段階モデル
まず、組織社会化を段階で捉えてプロセスを明らかにしてきた研究群がレビューされています。当たり前と言えば当たり前なのですが、諸研究者の捉え方が微妙に異なるのですこぶる分かりづらいのですが、尾形先生は以下のように比較してくださっています。それぞれの相違を理解する上でありがたい整理です。
ただし、段階モデルを総括して著者は、「社会化の進捗は一般にいくつかの段階から説明される」(35頁)という緩やかな枠組みだけが共通して提示されているに過ぎず、メカニズムの説明にはなっていないという批判がなされているとしています。
シンボリック相互作用論的アプローチ
段階モデルは「受動的な立場から能動的な立場へと人間が成長・発達していく、その変化に注目した人間像」(39頁)であったのに対して、個人が環境との相互作用によるプロセスから組織社会化を捉える視点があります。これがシンボリック相互作用論的アプローチです。
このシンボリック相互作用論的アプローチの研究群として挙げられているものとして、「初期経験とこれに対する対処行動(コーピング)という相互作用のプロセス」(40頁)として組織社会化のプロセスを捉えたLoius(1980)があります。個人が職場に入って感じる変化・対比・驚きから意味形成へとつながっていくプロセスを以下のようにモデル化しています。
組織社会化をプロセスで捉えるということは、個人が能動的でも受動的でも、いわば順番のように出来事を捉えることになります。しかし、現実において、個人が新しい環境に入った後の出来事が順番通りに来るということはありません。そのため、プロセス型の組織社会化モデルの実証は難しく、この課題を受けて何を学ぶのかという内容に着目して組織社会化を捉える内容理論が存在します。そちらは日を改めてまとめるつもりです。