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【論文レビュー】リアリティ・ショックと組織適応とキャリアの関係性:津木・城戸 (2022)

新入社員は、どのようなプロセスを経て、リアリティ・ショックを経験し、それを乗り越えようと職務行動をとり、どのようなキャリア意識や行動を経ることで組織適応へと至るのでしょうか。時系列で追うことは難しいイシューについて、インタビュー調査を用いて著者たちは明らかにしています。

津木裕子, & 城戸康彰. (2022). 新規学卒者の入社 7 年目までの組織適応に関する研究-入社 6~ 9 年目の社会人を対象としたインタビュー調査と考察. 産業能率大学紀要= Sanno University bulletin/産業能率大学紀要審査委員会 編, 42(2), 1-17.

本論文のポイント

本論文では、新規学卒者の入社前の行動から入社後数年にわたる組織適応プロセスをインタビューから明らかにしている質的研究です。インタビュイーは合計10名で、いずれも新卒入社後6-9年目の方々で、入社前のプロセスから回顧的にヒアリングをしているというリサーチデザインとなります。

入社前の予期的社会化から、入社後数年における組織社会化のプロセス全体について、インタビュー結果を基に考察したものが以下の図表にまとまっています。

p.14

組織適応の測定

組織適応については、尾形先生の『若年就業者の組織適応』を参照し、知識的側面と感情的側面の二つの側面からオリジナルで尺度を作成したとしています。

著者たちが使った質問項目は↓だそうです。

p.7

キャリア意識の影響!?

本調査で興味深いのは、適応度調査票のスコアを基に、リアリティ・ショックに遭遇した後に①組織適応できたグループと、②十分に組織適応できなかったグループとに分けて、何が両者の差を分けたのかについて考察している点です。

その上で著者たちは、キャリア・ビジョンを持っているかどうか、が違いを生み出すと結論づけています。

 インタビュー調査の結果、組織適応には、個人が考える「キャリア・ビジョン」が必要であることが示された。「キャリア・ビジョン」を達成するため、目の前のキャリア目標に対して、入社後の対抗行動や主体的な行動をとることで組織適応がなされる。その結果、組織や職務への理解が深まり、仕事の成果や評価を得るコツを掴んでいく。成果を出すことができると、やりがいや意欲が高まり、組織に対して役立っていると貢献感を持つことになる。つまり、これが組織社会化の成果である。

p.12

キャリア・ビジョンを持っていることが組織適応を直接的に促すことにはなりません。その間には、リアリティ・ショックに対抗する行動や自らの主体的な行動が介在し、その結果として組織適応が促されるという関係性があることが示唆されています。

最後まで目を通していただき、ありがとうございました!

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