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【プロジェクト計画書】リーダーシップ開発プログラムの研修転移に関心のある人財開発担当のみなさまへのお願い

以下は、2020年1月に立教大学大学院 経営学研究科 リーダーシップ開発コース(前期博士課程)に提出したプロジェクト計画書です。強調したい部分はハイライトしておりますが、それ以外はそのまま引用しています。字数制限(1600字)があり、かつ学術テーストなので少々(というかだいぶ)固い内容となっておりますがご容赦ください。以下の内容や、関連しそうなテーマにご関心がある人事・人財開発・研究機関のみなさまはぜひお声がけくださいませ。

【タイトル】
選抜型リーダーシップ開発プログラム参加による事後の行動変容および社会関係資本の拡大効果について

1. 背景

事業会社の本社人事およびビジネスパートナー人事として、筆者は複数の企業でリーダーシップ開発プログラムの企画・実施に携わってきた。経営者や上司層といったビジネスに関連する利害関係者と連携しながら計画・実行し、プログラム参加者やステイクホルダーの満足度という点では評価を得てきた。しかし、Center for Creative Leadershipの調査によれば、リーダーシップ開発プログラムがその受講者に与える効果は、経験やフィードバックがもたらすものと比べて少ない(Rabin, 2014)。また、プログラムの効果を測定する対象は、カークパトリックの四段階における満足度・理解度までに限定されることが多く、筆者が携わった事例でも同様である。

2. 問題意識

受講者を企業が選抜するリーダーシップ開発プログラムにおいては、ピグマリオン効果が働くために、参加するだけで参加者の成長が促進される傾向があると考えられる。しかし、プログラムが終了した後に、その経験を活かして変化に繋げている参加者もいれば、キャリア・プラトー状態になる参加者も生じるのが実情である。選抜型のリーダーシップ開発プログラムは、参加者自身に留まらず、その部下やメンバー、組織にとっても波及効果の大きいプログラムである。プログラム受講中の成長感や満足感を測定するだけではなく、受講後の中長期的な行動変容や結果を射程範囲と捉えることが重要なのではないだろうか。

3. リサーチクエスチョン

上記の問題意識に照らし合わせ、探求するべき事象として、参加者個人と他者との関係性とを取り上げる。具体的には、参加者個人の認識変容・行動変容と、参加者個人が新たに見出す社会関係資本の二点を想定する。

(1)参加者個人
 (1-1)プログラム受講がどのような認識の変容を生み出しているか。
 (1-2)プログラム受講が経験獲得行動にどのような影響を与えているか。
(2)社会関係資本
 (2-1)プログラム受講前後で業務上でやり取りする関係者はどのように変化したか。
 (2-2)プログラム受講前後で業務外でやり取りする関係者はどのように変化したか。

調査の対象としては、参加者個人による自己評価と共に、その上司や部下・メンバーといった他者からの評価に対する調査を行う。

4. 研究計画

(1)調査方法
リサーチクエスチョンを基に質問項目を設定し、自由回答ができる部分も設け、半構造化インタビューをプログラム参加者・上司・人事担当者を対象にして実施する。調査分析時には修正版グラウンデッドセオリーアプローチを用いることで鍵概念を見出し、概念間の関係性を見出すことを狙う。

(2)調査期間
プログラム受講期間中、プログラム終了直後、終了後四半期ごとによる定点観測を行うことで、変容の状況をフォローする。

(3)フィールド
選抜型のリーダーシップ開発プログラムを行っている事業会社の人事部門に対して協力依頼を行う。プレ調査を行うことでリサーチクエスチョンおよび質問項目を修正し、本調査に活用する。

5. 想定される成果

研修評価研究において研修受講直後の満足度・理解度から事後の行動変容やビジネス成果への関係性の低さが課題となってきた。また、行動変容へと繋げる要素として、受講者個人およびその個人への個としての対応が挙げられてきた。満足度・理解度から行動変容への関係性を、個人レベルおよび社会関係資本レベルで明らかにすることで理論的貢献を図りたい。そのうえで、企業組織におけるリーダーシップ開発プログラムの射程を、プログラムのコンテンツだけではなく事後のフォローアップと一体化してデザインできるよう、実践的含意を見出したい。

6. 参考文献

Rabin Ron, 2014, Blended Learning for Leadership, Center for Creative Leadership WHITE PAPER


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