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シビル・ウォー アメリカ最後の日

中国やロシアなどの特殊な政権運営の国、独裁国家などを除けばほとんどの主要国で国民が二分されているのが現在の世界情勢だと思う。

日本は何故か選挙になると自民党の圧勝となり滅多に政権交代は起きないため、特殊な政権運営の国や独裁国家とほとんど変わらないが、ネット上の声やマスコミ各社の報道スタンスを見ればシェアに差はあるものの二分されていると言っていいと思う。

本作は強権的な大統領のもと連邦政府派と反対派に分断され内戦(シビル・ウォー)状態となった近未来の米国を描いた作品だ。

近未来を舞台としているということはジャンルわけすればSF映画ということになるのだろうが、画面(えづら)的にはSFっぽい要素はほとんどない。テロやデモを題材にした社会派ドラマに近い。そして、A24作品ということもあり、不快指数も高い。見た目はちょっと金のかかった政治的メッセージを込めた映画といったところだろうか。

そして、本作は分断した二派の戦いを描いた作品でもないし、大統領の悪役っぷりをこれでもかと見せつけるものでもない。ストーリーは内戦を取材するジャーナリストたちを中心に展開していく。

性別も年齢もキャリアも所属も人種も異なるジャーナリストたちが、非常事態なのに長期にわたって取材を受け付けない大統領からコメントを引き出すためにホワイトハウスを目指す道中を描いたロードムービーのようなものだ。

クレジット的には3番手の若い女性カメラマンの成長ストーリーがおそらくメインの話なんだと思う。そして、クレジット1番手の女性戦場カメラマンが彼女の師匠的存在になる。
この師匠は弟子が危機に瀕した時に命がけの行動を取るが、その際の弟子のリアクションはこれぞ、マスコミがマスゴミと呼ばれる要因と言ってもいいものだった。そして、それと同時に素人に毛が生えた程度だった彼女が一流のジャーナリストとして成長した瞬間でもあった。

こういう場面が描かれるということは、やはり、世界的にマスコミ関係者はマスゴミと思われているということなんだろうと思う。ジャーナリスト一行が道中で出会った市民にしろ兵士にしろ愛国主義者にしろ、好意的に接している人はほとんどいなかったしね。

そして思った。結局、世界各国の分断状態ってマスコミが作ってしまったものなのではないかと。

ほとんどの報道機関は公正中立をうたいながらも、実際は特定の勢力の広報機関となっているか、あるいはアンチになっているのが現状だ。報道機関だけではない。ネットの声だってそうだ。

複数のメディアを読み比べる人なんてそんなにいない。だから、よく接するメディアの論調に洗脳されてしまう。右派メディアの記事しか読んでいなければネトウヨになるし、左派メディアの記事しか読んでいなければパヨクになる。

そう考えると、国家を二分させているのはマスコミやネットなのではないかという気がしてくる。

つまり、本作の悪役は強権的な政権運営をする大統領でもなければ、白人至上主義やアメリカ第一主義的な思想で非白人や外国人をいためつける愛国主義者でもない。強権的な大統領を追放するためなら手段を問わない、金になるネタのためなら何でもやる、そうしたマスコミが悪役なのではないかという気がして仕方ない。

強権的な大統領という設定だけ見れば、おそらく、多くの人がドナルド・トランプ前大統領を思い浮かべるはずだ。でも、本作におけるトランプ的な大統領は本当に強権的なのだろうかと思うほど弱々しい一面も見せている。ラストなんて、マスコミや反対派にあっけなく粛正されてしまっている。

もしかすると、本作はトランプ批判の映画でも共和党批判の映画でもないのでは?

逆に民主党や同党支持が多い米マスコミを批判する作品にも見えてくる。

でも、そうやってどちらかが善でどちらかが悪って決め付けること自体が間違いなんだよね。

近年、世界中でゼロか100みたいな考え方が蔓延している。
共和党を全く支持しないか、全面支持するのが普通で、共和党のこの政策は支持できないが、あの政策は支持できるみたいな考え方は許されない雰囲気がある。

日本で言えば、自民党政権を批判する者なら改憲にも原発にも反対しなくてはいけないみたいな考え方だ。別に野党支持者が改憲派だっていいのにね。

でも、野党勢力からは改憲派というだけでネトウヨ扱いされてしまう。自民党政権を批判しているのにね。

そういうおかしな世の中だから、政治には関わりたくないという人も増えているのだろう。

本作のジャーナリスト一行の家族や一行が出会った地方都市の店員が、内戦なんて勃発していないと思い込み普通の生活を送ろうとしているのは、そういうゼロか100の世界に嫌気がさしているからなんだと思う。

こうした描写を考えると、本作は民主党的なポリコレを押し付ける映画にも愛国主義を訴える映画にも見えないんだよね。

やっぱり、マスコミやネットがクソって話なんじゃないかなと思えてしまう…。

※画像は公式HPより


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