ヘッド_縦位置ー

ギターデザインブック(1980?)③

引き続き、中3〜高1くらいのときに書いたギターデザインのノートを眺めながら。当初はピックアップとか回路とか、電気的なアイデアが中心だったのが、次第にギターの形そのものにフォーカスするようになってくる。

↑ シリアル0024、「Art-Wave」。たしか、フェルナンデスで同じ名前のギターがあった気がして調べたら、やはりあった。初期P-MODELで平沢さんが使ってた。
この、表紙のギター

相変わらずB.C.Richの影響は強いけど、曲線の処理が上手くなってきた。実際に木材でこれを作ったら、下のツノは折れますね。モッキンバードの尖った部分も折れることがあるらしいし。

↑シリアル0025「cycle」 
ヘッドはイマイチだけど、ボディの曲線と最小限のパーツの配置はいい。

↑シリアル0032「ベースはストラト」。それぞれのP.U.のon-off-phaseができるいわゆるジェフ・ベックタイプの回路。ジャックにはブースターがついてるのかな。フロイドローズはまだ、エディで世間に知られたばかりの頃じゃないだろうか。

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実はこの数年後に、これに近い仕様のギターを実際に自作したことがある。ESPのボディ、トーカイのネック、ディマジオのP.U.、自作のピックガード(微妙にムスタングっぽいのがポイント)とジャック(ブースターはなし)。

↑右は友達から借りてたジョーディー(国産)のストラト改。後にノコギリでボディとヘッドを切ってしまった。詳しくはこちらから→ https://note.com/takano_hiroshi/n/nb3ab6aab5f8b?magazine_key=m13b4b38b0cfc
*これが最終型。

1987年にThe Beatniksのツアーメンバーに参加することになった時、自分が持っているギターの中で一番まともなのが、自作した上の写真・左のギターだった。ただ、一番マトモだったそいつも、今思えばチューニングも不安定だったしサスティンも抜けも悪くて酷い音だった。

ツアーのリードギタリスト、故・大村憲司さんがその自作ギターを楽屋で少しだけ弾いたあと(しばし間があって)一言「もう少しいいギターを買ったほうがいいんじゃない?」と苦笑気味に話していた時の表情が忘れられない。その時、楽器で一番大事なのはルックスや回路ではなくて「鳴り」という生命力なんだ、ということを、教えてもらった。

何度か書いているけど、憲司さんのプレイを間近で聴いたことで、僕のエレキギター観は完全に塗り替えられた。

ギターの音を最終的に決めるのは楽器ではなく、弾き手だ。エフェクターや楽器の仕掛けに頼らないシンプルなセッティングでも、いい音でいいプレイができるのが一流のプロ、ということを真横で体験できた衝撃。それは、同じステージに参加しなければ分からない奥義だった。

憲司さんとの共演はギターを弾く上での最初の大きな転換点の一つだったし、結局、ミュージシャンはそんなふうにピンポイントで受けた影響を積み重ねることで、自分で自分のやり方を見つける仕事なんだと、今になってみればそのことがよく分かる。

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