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サンゴの幼生は、音を頼りに定着する礁を探す

こんにちは、イノカの今中です。

イノカチームでは様々な海洋生物についての研究調査を行なっています。
本日はその中からサンゴに関わる研究について紹介します。

内容は、「サンゴの幼生は住み着くサンゴ礁を探すために音を頼りにしている」というものです。

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Credit : Amy Apprill, Woods Hole Oceanographic Institution

サンゴの幼生の旅

皆さんご存知かもしれませんが、サンゴは幼生の時に旅を行なっています。
卵から孵化した直後から海を自由に漂い、その後の人生のほとんどの時間を過ごすための礁を探すのです。

今回は、この旅に関する研究の中で、「定着する礁をどう見つけるか」についての研究を紹介したいと思います。

研究者たちは、多くの海洋生物がコミュニケーションや探索の際に用いる”音”に着目して、音がサンゴのすみかの選び方に影響を与えるのではないかと考え、調査を行いました。

サンゴ礁によって変化する音

健康なサンゴ礁には様々な生物が暮らしています。そのため、テッポウエビがハサミをカチカチとかち合わせる音や、魚のうなり声、イルカやクジラなどの鳴き声といった様々な音で満ち溢れていると考えられます。

研究者達は実際に水中で音を測定できる”ハイドロフォン”という特殊マイクを用いて、

1. サンゴ礁がないただの砂地の区画
2. 死滅しかけているサンゴ礁
3. 繁栄している健康なサンゴ礁

における音を記録しました。

上リンクの音をトリミングして動画にしてみました。ぜひ聞いてみてください。

最初の音は、1. サンゴ礁がないただの砂地の区画の音です。

バチバチとベーコンが焼ける音に似たものは、テッポウエビがハサミをかち合わせる音です。水

中でかなり響くため、彼らが至近距離にいなくともこのように聞こえてしまうようです。今回録音された3種類のデータともにこの音は聞こえています。

次の音は、2. 死滅しかけているサンゴ礁の音です。
これも先ほどと同様にテッポウエビがハサミをかち合わせる音のみが聞こえてくると思います。

最後のリンクの音は、3. 繁栄している健康なサンゴ礁の音です。

1番目と2番目に聞いた音との違いが顕著に聞き取れると思います。3番目からは魚のうなり声のようなものがよく聞こえてくるはずです。3番目からは魚のうなり声のようなものがよく聞こえてくるはずです。

このように健康的なサンゴ礁とそうでないサンゴ礁ではそこに流れている音がかなり違うということが分かりました。

音とサンゴの幼生の住み着きやすさの関係

研究者たちは、礁を模したセラミックが入った容器の中に、産まれたばかりのサンゴの幼生を入れ、先ほど述べた”ハイドロフォン”と同じ場所に設置し、サンゴの幼生のうちどれくらいが擬似”礁”に定着するのか観察しました。

すると、3. 繁栄している健康なサンゴ礁に設置した擬似”礁”の方が、1. サンゴ礁がないただの砂地の区画、2. 死滅しかけているサンゴ礁にそれぞれ設置したものの2倍もサンゴの幼生が定着しやすい、という結果が得られたのです。

この調査結果により、サンゴ礁付近でのボート・船・低空飛行機などの騒音公害を減らす呼びかけや、死滅しかけているサンゴ礁の近くで、健康的なサンゴ礁の音を鳴らすことにより礁を再活性化させるなど、新たなサンゴ礁保全の方法を考えることができます。

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Credit : Amy Apprill, Woods Hole Oceanographic Institution

このように、サンゴの生態を知ることで我々はサンゴの保全活動のアイディアを出すことが出来ます。同様に、様々な生物の保護活動のアイディアはその生物の生態を知ることで得られてきたのではないでしょうか。

しかし、生物の生態から保護活動のアイディアを出す人は沢山いても、肝心の生物の生態を知ることができる人手が圧倒的に足りていないと我々イノカチームは考えています。

この課題を解決すべく、アクアリストの方々と研究者の方々を結びつけ、研究を加速できるようなプラットフォームを作るというヴィジョンを抱きながら、今日もイノカチーム活動しています。

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