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地域ミュージアム・トークセッションvol.2(4)

地域でまわる「ヒト」「コト」「モノ」「カネ」の仕組みづくり
-小さなエコシステムをつくる〝仕掛け〟のお話し
Chapter-4 これからのキーワード

ゲスト
小松 俊昭 氏(合同会社家守公室 代表)
市村 次夫 氏(一般財団法人北斎館 理事長)

ナビゲーター
藤原 洋 (全国地域ミュージアム活性化協議会 事務局長理事)

きっかけづくりが大事

藤原:
今、コロナ禍の中ですけども、小松先生に、今後の地域づくりということに対してどう考えていけばいいか、こんなことを考えていけばいいという示唆があればお願いします。

小松:
ヤモリカフェから生まれたワイナリー、セイズファームです(参考:SAYS FARM)。このワイナリーが何で生まれたかと言うと、カフェである講演会をやりました。講演者は畠山重篤さん。牡蠣の養殖をしながら、「森は海の恋人」を提唱した素晴らしい方です。(参考:森は海の恋人 東北農政局)要するに、牡蠣の養殖業者が山の植林活動をして、山をきれいにする。山がきれいになることによって海がきれいになる。海がきれいになることによっていい牡蠣が獲れる。フランスのワイナリーワインの土壌改良に牡蠣殻が使われていることをコメントしました。講演会の参加者のひとりで氷見の最大手仲卸し業者の釣誠二さん(故人)がその話にピンとこられて、氷見でワインをつくろうということになりました。市の仲介で耕作放棄地を借り、ゼロから始めたので大変な苦労をされたのですが、今ではヨーロッパで賞を取る「奇跡のワイン」を生産するワイナリーになりました。私が申し上げたいのは、物事にはきっかけづくりが必要だということです。きっかけづくりには、ハタと気づくかどうかで、気づかない人もいる。気づく人をどうやって促すか、後ろから応援するか。このあたりの仕組みづくりが上手にできると、野球で言うと打率が高くなる。勘所が分かってきます。勘所というのは、イベントなどきかっけづくりがあって、そこで気づいた人に手を差し伸べるプロセスです。こうすれば地域づくりを楽しく有効にできる気がします。それを長和町などで挑戦していきます。

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試みから見つけ、考える

藤原:
市村さんお願いします。

市村:
北斎館という美術館もやってますので、そのミュージアムショップのイメージを広げようということをやり始めています。ミュージアムショップと言うと、美術館の中なんですけど、これをもう少し外に出していけるんじゃないかということを、ささやかながらやっています。あとは、中国から流行って、このコロナで東京でも流行っているウーバーイーツですよね、あの田舎版をどうやってやればいいのかな、と考えたりはしています。具体的に何か着手したということはないんですけども、小手調べとして、3月から北斎館の中にシェアオフィス(ミュージアムオフィス)をやったりしてます。小布施町は小さな町なんですけど、シェアオフィスは2か所目なんですね。面白いことに、利用する人は両方利用するんです。もう一つの場所は、シェアオフィスであると同時に、喫茶店ではないんですが利用する人たちがワイワイガヤガヤ話せる場所があるんです。それを東京や大阪から来た人も重宝したのですが、一方で北斎館のシェアオフィスはお話しできる場所がなくブースだけです。すると、「明日は静かに仕事しよう」という人が今度は北斎館のシェアオフィスを借りる。借りる人たちがシェアオフィスの特徴を使い分けているのを見て、びっくりしましたね。これからコロナが収まってきて観光客が増えれば、観光客が一時的に利用するという使い方もあるでしょうし。一口にシェアオフィスといってもいろんなニーズがあるな、と実感していますね。今は、そういうネタ集めで、どういう再構築ができるかな、と具体的には考えています。概念的なことはこれからですね。
ところで、小松先生、このヤギ、利口そうなヤギでびっくりしますね。

小松:
余談ですが、ヒツジとヤギを比べると、ヤギは群れないで孤高を保てるんです。僕自身は未年ですが、ヒツジは群れを成します。ヤギ型とヒツジ型とどちらがこれからの地域創生でいいか?と考えています。

市村:
益子で馬場さんという方が、自分のところで焼いた陶器を売ったり雑貨を売ったり喫茶をやったり、人気のお店をやっていたんです。自分の喫茶店から向かいの山に登った所にホールなんかあって、そこにヤギを飼っていて、そのヤギがとても利口そうだったんです。その彼もそう思ったんでしょう、このヤギの鳴き声をCDにして売り出したんです。CDになるほどのいい声なんだけど、今のヤギと同じような顔をしてるんです。私は有名ヤギとは知らずにその辺うろうろしていて、利口そうなヤギだな、と思ったのが非常に印象に残ってて…。このヤギの顔はそれに匹敵するな、と思ったところです。(笑)

これからのキーワード

小松:
ちょっとしたインパクト、アクセントで印象って変わりますよね。この鶏の姿もそうです。
最後に、私の方で一言お話しします。かつてのバブル期に大都市ではマンションやビルが立ち並んだ一方で、地方では過疎が加速して空き家が増えました。需要と供給を考えた時に、「どこかおかしいよね?」と思えるかどうか。ビジネス的には新しいものを作った方がお金がたくさん動いて一見すると良さそうですが、地球環境などトータルに考えたとき、「極力あるものを使うのが良い」と思います。また、「独占しないで分かち合う」というのもこれからのキーワードだと思います。言葉としては「シェアリングエコノミー」です。分かち合った方が楽しいと思える。車ではカーシェアリング、家ではシェアハウス。この辺りからどの程度価値観の転換が進むのかな、というのがアフターコロナに向けて私が非常に関心を持っているところです。

藤原:
私は過疎という問題にずっと取り組んできました。そうした中で、皆さんが産業をつくったり、組織をつくったりということを活発にやった時期があったわけです。今、産業の事業承継を同じように、地域の中で試みをどうつないでいくか、活かしていくかという地域の事業承継が非常に課題になっているわけです。企業だけでなく、地域での事業承継も大事になってくる。特に、人口減少や少子高齢化が進む中で、地域の事業承継も非常に難しくなってくる。そういう中で、もっと広い地域に働きかけて考えをつくっていくとどうかということで、関係人口としてつながりをつくることで新しい展開を試みていく。そういう中で、自分のスキルを活かしたり一緒に参加したりして、地域を再生する、地域の事業承継を考えていく、ということができるのではないか。新しいものを作るのではなく、再生して活性化できるものであれば、知恵や経験を活かして次の時代にいけばいければいいと思います。

市村:
シェアというと、従業員をシェアすることもありまして、本業は農業なんだけれども、非常に営業スキルに長けていて、週1回、打合せに来るだけという人がいます。毎日、うちの仕事をやるかというと、そうではない、これ、頼むよ、と言ったことだけをやっている。従来ですと、1回来たら日当いくらということなんだけど、全然そうではない。例えば、年間これぐらいでどうかな?、という一種の委託契約みたいな形でやっていることもあります。それよりもアルバイトに近い形で、主婦でネットに長けてる人がうちのHPをつくるところから始まって、普段のネットのお守をやっている人がいます。社員でもアルバイトでもなくて、打合せに来るだけで、仕事は家でやっている。こういう雇用形態も出てきたし、今後は、わが社と違う会社と3つぐらいの掛け持ちするという社員も出てくると思うんですね。そうすると、今まで以上にやりがいとか、むしろ企業としてのアイデンティティがより、テレワークが発達すればするほど強く必要とされるんじゃないかと思います。テレワークというけれど、たまにしか会社に行かなくて、どうやってその会社の忠誠心と言ったら上から目線ですけれど、その会社でのやりがいをどうやって見出していくかということは、それこそ、今現在から問題になって来る。今、人間をシェアする時代に入ってるんだな、と思うんです。

藤原:
ありがとうございます。今日は、総合的な話も具体的なお話もありました。より深めていくことに意味があると思います。このトークセッションを続けていって、さらに深めていきたいと思います。今日は、ご出演ありがとうございました。皆様もご参加いただき、ありがとうございました。

(このトークセッションは、2021年4月2日にオンラインにより実施されました。)

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